現代のドリフト競技のいちばんの見どころは追走です。2台が先行/後追いに分かれてコースインし、先行がドリフトしつつ全力で逃げようとするところを、後追いがインを差して、きれいにドリフトを合わせてみせたら勝ち、というものです。格闘技的要素が強い競技内容が魅力ですね。
でも、クルマがジャンプして体当たりするなんていう走りかたは誰も想定していません。
いったい何が起こったんだー!
これは7月9日に奈良県の名阪スポーツランドで行われたD1西日本シリーズの準決勝での一幕です。
日本のドリフトの最高峰はD1GPですが、その下部カテゴリーとしてD1SL(ストリートリーガル)があり、さらにその下に、東日本/西日本に分かれてシリーズ戦を行うD1東日本シリーズ/西日本シリーズがあるんですが、そのD1西日本シリーズ2016年第2戦です。
準決勝ふたつめの対戦は、古賀誠進選手vs野々英喜選手。
どちらも九州のベテランで旧知の仲です。雨が上がって、路面がどんどん乾き、濡れているところと乾いているところが混在するむずかしい状況でした。お互いにミスをしたりして、なかなか決着はつかず、勝負は再々戦にまでもつれこみます。
その2本目、1コーナーに飛び込んだ先行の野々選手に、後追いの古賀選手が猛チャージをしかけます。みるみる距離を詰めていったのですが、減速しきれず接触……その瞬間、古賀選手のマシンがポンッと宙に浮き上がったのです。
そう。最初の写真だけ見ると、ジャンピング体当たりのように見えますが、本当は「体当たりしてジャンプ」という順番でした。
おそらくタイヤ同士が当たって、跳ね上がってしまったのだと思います。じっさいは当たりかたもそれほど激しいものではありませんでした。
フォーミュラではよくありますが、ハコ車のレースではそれほど多くないですよね。ドリフトの場合、大きくカウンターステアを当てた状態で接近するので、レースよりはこういうことが起こる頻度が高いと思います。
ただ、これまではフロントのタイヤ同士が当たって、後追いの車両がウイリーしてしまうというケースばかりでした。こんなふうにきれいに4輪ジャンプしたのはみたことがない。もしかしたら、前後輪ともタイミングよく当たってしまったのかもしれません。
当てられたほうの野々選手は、振り向いた瞬間自分の真横にタイヤが見えたのでビビッたそうですが、それでも動じずに行ってしまいました。当てた古賀選手は着地してそのままストップ。とはいえ、なんとか自力でピットに帰っていきました。
野々選手は決勝に勝ち上がりましたが、その際軽い接触でスピン。もしかしたらなにかしら足まわりにダメージを受けていたのかもしれません。
ちなみにこの大会で審判員をやっていた昨年度のD1GPチャンピオン川畑真人選手は、この大技に嫉妬。「九州まで教わりにいく!」とまでいっていました。
大まじめにやっていても起こる珍プレー、こんなのもモータースポーツの醍醐味ですね。
写真協力:サンプロス
(まめ蔵)