ロードスターのデザインは薄着勝負!? RFの狙いはどこに?

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──マツダの新世代ラインナップはシグネチャーウイングやボディのキャラクターラインなど、コンセプトカー「SHINARI」のモチーフを採用していますが、ロードスターだけにはその要素が見当たりません

「遠目でSHINARIを見ると本質的なスタイルのよさが浮かんできますが、そこを採り入れたと。全長3.9mのコンパクトなボディで、しかもドライバーが外から見えるという特殊な条件では、できるだけ要素を省く必要があったのです。つまり、ロードスターだからこそのデザインアプローチなんです」

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──では、受賞の話を。あのジャガーを抑えての快勝となったわけですが、今回、世界のジャーナリストからはどのような評価の声が届いていますか?

「やはりプロポーションのよさですね。中でもフロントオーバーハングの短さ、キャビンの小ささへ賞賛をいただいています。このミニマムなボディは、いわば設計部門の全面的協力があってこそです。つまり、単にカタチの評価だけではないことがダブル受賞の価値だと思っています」

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──ただ、プロポーションのよさはどのメーカーも意識しているかと思いますが、マツダデザインとの違いはどこにあるのでしょう?

「条件、つまり機構等によるデザインの制約はどこも一緒なんです。デザイナーの仕事というのは言ってみればその制約をいかにクリアするかで、最初からあきらめてしまうか否かの違いでしょう。各国のデザイナーによるプロ視点では、よくぞそこを突破したネという評価だと思います」

──受賞会場のニューヨーク・ショーではファストバックスタイルのRFを発表しました。ルーフ全体が格納できなかったことからの逆転の発想と聞きますが、この提案も世界に影響を与えそうですね

「はい。一見タルガトップに見えつつリアガラスが開く、つまりエンジン音がオープンと同様に聞こえるというのはまったく新しい価値です。また、実は屋根は開かなくていいからクーペを作って欲しいという声が多いのですが、その回答のひとつになるかもしれませんね」

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──では最後に今後について。発表間もない新型としては、次のモデルチェンジまでの長い間、いかに魅力的な成長をするのかが重要です。その点、何か具体的な計画はありますか?

「たとえば黄色のボディが出たら絶対買う!など、スポーツカーの購入動機は実用車とちょっと違う。今回のRFもそうですが、そうした特別な嗜好に応えるような展開が必要です。もちろん色も重要な要素ですね。いずれにしても、ロードスターは明快な理由をもってデザインしたクルマですから、そこをひっくり返すようなことは絶対にしませんので安心してください(笑)」

──本日はありがとうございました。

(聞き手:すぎもとたかよし)

この記事の著者

すぎもと たかよし 近影

すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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