さて、スズキ・イグニスのサイズを見ると、全長3700×全幅1660×全高1595mmで、クルマが肥大化し続けている時代なのに、全長と全幅はわずかに小さくなっています。1550mm超えをした全高もスプラッシュと同じですが、駐車場事情から全高だけで購入を見送る人もいるでしょう。
最低地上高を180mmと高くして全高も高くするクロスオーバースタイルは、初代SX4の175mmよりも5mm高く、たかが5mmでも雪国などでは効果のある数値なのかもしれません。
高い全高は、高めのヒップポイントによる良好な乗降性、高めのアイポイントによる前方視界の良さ、そしてアップライトに座らせる設計により、頭上だけでなく足元の広さ感にも貢献してくれます。
こうしたパッケージングは、イグニスに限らず、Aセグメントで居住性を確保する王道といえる手段で、フィアットがFIAT500をベースにパンダを仕立てているのも好例といえるもので、イグニスの広さ感は、新プラットフォームによるエンジンルームの最小化などもあって、わずか全長3.7mとは思えない仕上がり。
元々のお家芸であるクロスオーバースタイル、そして現在のSUV人気にもあやかろうとしているのかもしれませんが、時代がスズキに追いついたともいえます。
スプラッシュの販売実績がスズキの満足できるものだったか分かりませんが、日産ジュークがアーバンセレクションで、ホンダが軽自動車のN-ONEで「1550mm」に対応する低全高グレードを追加したように、イグニスも低全高モデルも追加すれば、ニッチから主役になれるかもしれません。
そんな秘めた魅力が伺えるのもイグニスの実力だと感じました。
(文/写真・塚田勝弘)