「いま、マニュアルに乗る」というキャッチコピーのとおり、試乗車は5速MT。
レバーの長さはフツ―ですが、手首のスナップでギヤチェンジをこなせるほどストロークは短くなっています。また、操作に対する手応えも強く、例えば1速→2速への単純な縦移動でも各過程で操っている充実感を得られるチューニングが施されています。
信号待ちなどで左手が寂しくなるとついつい弄ってしまいたくなるほど好感触。ちなみに、5速ASGのシフトがあった位置はスマホを置くのに便利な収納になっています。
さっそく1速に入れて発進!! 徐々にアクセルに力を込めていくと、とてもスムーズにエンジンがレッドゾーンの7000rpmまで回ります。そのまま2速、3速へシフトアップ。670kgと軽い車重は、みるみる速度を上げていきます。
そしてアクセルレスポンスが素晴らしい。「打てば響く」のコトバどおり、コーナーでの脱出時や、シフトダウン時に一瞬エンジンを吹かせて回転を合わせるブリッピングでも応答遅れがありません。同社の「スイフトスポーツ」よりも明らかに鋭い印象。
骨格部を滑らかな形状とした新開発プラットフォームに加えて、ボディシェルにはスポット溶接の増し打ちが行なわれた結果、走行安定性も高くなっています。
コーナリングではアウト側のフロントサスペンションもグッと粘り、レカロシートが肩・腰・ふくらはぎを支えてくれているため、外側に投げ出されるような不安感をドライバーに抱かせません。
この軽量ボディと高剛性が実現した瞬発力を活かせば、たとえハイパワースポーツカーが相手でも、その牙をむく前に仕留められそうです。
アツい走りに血が騒いでしまいましたが、その一方で街乗りでも扱いやすいです。
クラッチは踏み込みに応じて自然につながっていくし、ギヤの選択を外していても車体の軽さと低中速でのトルクの太さのおかげで上り坂でも再加速が可能。
ただ、5速60km/hでの回転数は約2500rpm。80km/hでは約3000rpmとエンジン回転数は高めで、100km/hとなると車内は騒然となり、引き締められたサスペンションが路面の凹凸をガツガツと伝わります。
家族から不満が出そうですが「軽自動車だから仕方ない」と誤魔化してしまえばいいかもしれませんね。それくらいは可愛いウソで済むのでは?
それにタイヤサイズは前後とも(165/55R15)なので、良いタイヤをコッソリ履かせても一般的なスポーツカーほど値が張りません。
実用性や維持費という条件を満たしながら、走って楽しい「アルトワークス」はスポーツカー好きの世帯主の救世主に違いありません。もちろん、独身の方にもオススメです。
(今 総一郎)