ハンドルが左右両方に付いたクルマに乗った!

では、右のハンドルは? そうです。後ろのタイヤを左右に動かすためのものなのです。

こちらのクルマの「助手席」で「試乗」させていただきました。

スラローム走行ではドライバーから「ヘイ・ユー! オレと同じ回転方向にハンドルを切ってごらんヨ」というようなことを外国語で言われ、指示通りに切ってみます。

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パイロンの間をBMWで駆けぬける歓びを助手席でも十分に味わうことができます。ひと回り小さなクルマが動いているように機敏に走ります。3シリーズか、もしかしたら1シリーズか?

ちょっとした峠のようなサーキットのようなコーナーを曲がるときも同様です。いわゆる回頭性がすごくいい感じです。

もう一度スラローム走行へ。ドライバー氏が「今度はオレと同じタイミングで逆方向に回してごらんヨ」みたいに言われ、素直に逆に切ります。

というものの、クルマの向かいたい方向と逆にハンドルを切るのって、かなりの違和感です。ドリフト走行だって見た目には向かう方向と逆に切ってるように見えますが、運転してるほうは向かいたい方向に切ってるものです。

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なんとか普段の感覚を捨てて、頭を切り替え機械的に逆方向に切ってみます。

するとどうでしょう。まるで違うクルマになったように気持ちよく曲がってくれません。気持ちよくないというか、このクルマどっかヘンじゃない? という感じ。7シリーズだってもっとよく曲がるはずです。

ところが、これが少し高めのスピードでの車線変更などにはスムーズになり、直進安定性がよく感じられます。

クルマのことをよくご存知だったらもうお分かりでしょう。

この左右ハンドルのクルマは、後輪操舵の有用性をデモンストレーションするためのものだったんです。

この記事の著者

小林和久 近影

小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務めた。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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