軽井沢の狭い山道に入りこんでも鼻先が軽く向きを変えてくれますから、サイズと左ハンドルにさえ慣れてしまえば、意外と軽く走らせることができるのが印象的。
重量を見てみると、ライバルよりも長めの全長、そしてAWDを採用しているのにも関わらず車両重量は1770kgに収まっています。これは、BMW5シリーズで直列4気筒を積む「528i M Sport」の1770kgと同値で、しかもFRであることを考えると、AWDであるキャデラックCTSプレミアムの軽量ぶりが伝わってきます。
キャデラックCTSプレミアムには、マグネシウム、アルミなどの軽量化素材が積極的に使われていて、構造用接着剤の採用などにもあってボディ剛性は先代CTSよりも40%も向上。
2.0Lターボエンジンは、最高出力276ps/5500rpm、最大トルク400Nm/3000-4500rpmという数値で、先述のBMW528iの245ps/5000rpm、350Nm/1250-4800rpmと比べるとパワーもトルクも上回っているとおり、高速域のパンチ力も十分です。
最大トルクの発生回転数はやや高めではあるものの、中・低速域のトルク感も十分に感じられますし、シフトレバー下にあるスイッチでドライブモードを通常の「ツーリング」から「スポーツ」にすると、ステアリングの手応えが増し、よりダイナミックな走りが可能に。
トルク感も若干増しますし、エンジン回転数も音も高まります。しかし、「スポーツ」モードでも乗り心地は快適なままで、この手の「スポーツ」は快適、騒音面からあまり使いたくない車種も多いですが、これなら実用になります。
さらに、ややゆったりしたパワステのフィーリングである「ツーリング」よりもとくにワインディングでは楽しく走行できるのも朗報。
今回は、雪道での走行はごくわずかでしたが、後輪のどちらかが空転するのを察知すると、瞬時に前輪にトルクが配分されるオンデマンド型のAWDはあくまで安定志向という印象。トラクションコントロールの介入も自然で、「スノー」はもちろん、「ツーリング」時でも安心して走行できます。
また、世界最速でキャデラックが採用したという「マグネティック・ライドコントロール」は、ダンパー内にマグネシウムの磁性体を含んだオイルを封入し、減衰力を調整するもので、ほかにもブレンボ製フロントブレーキなどを採用しています。
オンロードでの制動力は十分で、雪道の走行は限定的でしたが、急激に制動力が立ち上がり、コントロールが難しいようなブレーキではありませんから、誰でも安心して操作できるはず。
これだけスポーティになりそうな技術的要素を取り込みながらも、全体としてはアメリカン・セダンらしいおおらかさも感じられるキャデラックCTSプレミアム。
欧州製Eセグメントでは飽き足らない層にアピールする独得の世界観を備えているのは間違いありません。
(塚田勝弘)