ただし、AC工法用のプリプレグが、そのままPCM工法に使えるわけではありません。
従来のプリプレグでは、プレス成形時に樹脂が流れてしまうという問題がありました。
三菱レイヨンが開発、市販につなげたPCM工法に対応した「速硬化プリプレグ」は、樹脂が粘るイメージのプリプレグで、プレス成形に対応しているのがポイント。これにより、PCM工法は量産効果を実現できたといいます。
もちろん、すべての条件でPCM工法がコスト面で有利というわけではありません。金型が必要になるので、少量生産には向きません。今回のセミナーでは、月産200個以上になるとPCMの優位性が出てくるという説明がありました。
すでに、累計数万単位のパーツを、PCM工法で生産しているというチャレンヂからは、その間に金型を作り直す必要はなく、メンテナンスだけで問題なく生産できているという説明もありました。万単位での生産規模に対応した実績があるわけです。
ところで、FRPパーツの製法としてはSMC(シート・モールディング・コンパウンド)といって、短めにカットしたカーボン繊維と樹脂ペーストを混ぜたシートを使って、プレス成形するという手法があります。身近なところでは風呂桶(ガラス繊維)の製法として使われているSMCですが、もちろんカーボン繊維もSMCで生産することは可能です。
ただし、SMCの場合は繊維が短くなるので、成形性には優れていても、強度という面ではACやPCMで作った製品には劣るといいます。
こうした違いは、要求性能と適材適所で使い分けるものですが、PCM工法が確立したことで、新たな成形法も考えられています。
それが、三菱レイヨンで研究中という『PCM SMC ハイブリッド成形』です。
生産性と強度に優れるPCM工法ですが、形状には制限があるのがウィークポイント。ハイブリッド成形を用いれば、PCM用材料と、SMC用材料をいっしょにプレスすることで、複雑な形状と強度を高次元でバランスしたカーボンパーツの生産が可能になるといいます。
まだまだ、非常に高価な印象のあるカーボンパーツですが、こうした材料や生産技術の進化によるコストダウンや性能アップは日々進んでいることを実感するMFiテクニカル・セミナーだったのでした。
■関連記事
東京オートサロンで最新技術をお勉強。MFiテクニカルセミナーPresented by三菱ケミカルホールディングス
https://clicccar.com/2015/01/07/285597/
(山本晋也)