自動車の運転による死傷件数は減少傾向にあるものの,飲酒運転や無免許運転などの悪質な運転による死傷事故が後を絶たない状況。
現状では「危険運転致死傷罪」の適用が自動車運転中のみの危険行為に限定されており、運転者の適性や義務に関する事柄、及び事故後の運転者の資質や責務(通報・救護義務違反)については目が向けられていませんでした。
そうした背景から同法の指す「危険運転」と、国民が認識する「危険運転行為」には大きな隔たりがあり、立法効果が十分に機能していないとして、2012年8月に全国交通事故遺族の会から法務大臣宛に法律の見直し要望が出されていました。
<要望書で指摘された危険運転行為>
・無免許運転
・病気不申告者の運転(てんかん等)
・自賠責保険未加入者
・暴走行為
・ひき逃げ
・飲酒運転
・違法薬物の使用
・異常な速度違反
・重過労での運転
毎日新聞によると、こうした背景から政府は「危険運転致死傷罪」の適用対象を拡大し、酒や薬物などの影響で事故を起こした際の罰則を強化した新法「自動車運転死傷行為処罰法」(2013年11月成立)について、5月20日から施行することを4月18日の閣議で決定したそうです。
おりしも4月18日は栃木県鹿沼市で児童6人が犠牲となったクレーン車暴走事故から、ちょうど丸3年に当たり、当時の事故が運転手の持病の発作が原因とされたことが新法成立のきっかけになったと言います。
新法では悪質で重大な交通事故に適用される危険運転致死傷罪(最高刑 懲役20年)の対象に、高速道路の逆走や歩行者天国での暴走など「通行禁止道路での危険な走行事故」を追加。
また無免許運転で死傷事故を起こした場合の刑罰がより重くなっています。(最高刑 懲役20年)
酒や薬物、特定の病気の影響で「正常な運転に支障が出る恐れのある状態」で運転し、人を死亡させた場合に懲役15年以下、負傷させた場合に同12年以下とする規定が盛り込まれており、政令で「道路」や「病気」の範囲も明記。
なお「病気」については患者団体の要望なども踏まえ、安全運転に必要な認知、予測、判断などの能力を欠く恐れがある症状を呈する統合失調症や躁鬱病、発作で意識障害や運動障害をもたらす恐れのあるてんかん等としています。
最近でも車両がいきなり人垣に突っ込む等の暴走事件や過労運転による観光バスの高速道路逆走事故などが発生しており、こうした法整備が急がれる要因となっているようです。
■法務省 Webサイト
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律
http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00081.html
■全国交通事故遺族の会要望書 (PDFファイル)
http://www.moj.go.jp/content/000104750.pdf
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