EV、PHVの充電は「ワイヤレス」「自動給電」が主流に?

普段、何気なく使用している交流電流を発明したのは「ニコラ・テスラ」。 米EVメーカーの「テスラ・モーターズ」の社名もこの偉大な発明家の功績にちなんだもの。 

ニコラ・テスラは1880年に電磁誘導(磁束が変動する環境下に存在する導体に電圧が生じる現象)の原理を発見。1882年には「交流電流」の普及を提唱します。

遠距離への送電性に優れていたことから、エジソンが提唱した「直流電流」に代わって現在の送電方式の原型となっており、「交流発電機」や「交流式モーター」の発明と併せて世界中に広く普及しています。 

TOYOTA_Wireless_Charging

また「テスラコイル」(高周波・高電圧を発生させる共振変圧器)の発明は蛍光灯や液晶のバックライト用変圧器、自動車部品ではHIDヘッドランプの点灯回路(イグナイター)に応用されるなど、重要な基礎技術になりました。 

こうした数々の発明が無ければEVもHVもHIDも誕生しなかったかもしれません。 

そしてニコラ・テスラは1900年代に入ると電磁波を用いて電気を飛ばす「ワイヤレス送電システム」を提唱。この技術は正に現在、EV・PHV用の「非接触充電」に利用されようとしています。 

「非接触充電」には2006年に米ベンチャー企業「WiTricity(ワイトリシティ)社」が開発した「磁界共鳴方式」と日本の「ビー・アンド・プラス社」が開発した「電磁誘導方式」が存在。  TOYOTA_Wireless_Charging

「磁界共鳴方式」は地面に埋め込んだ定置式充電器(送電側)と車載機器(受電側)にコイルとコンデンサを設け、磁界共鳴させて電力を伝送するもので、「電磁誘導方式」に比べて送電側コイルと受側コイルの位置ずれが大きくても、比較的高い効率で充電可能なのが特徴。 

また電力の伝送距離が長く、3kWを超える電力を20cm離れても90%以上の効率で送電が可能と言います。 

トヨタ自動車や三菱自動車、TDK、IHIなどが2011年に「WiTricity社」と技術提携してこの方式を採用。 

トヨタの場合、送電側コイルを車両の乗り上げに耐えられる構造としており、カーナビの画面上で送電側コイルの位置を表示。 「IPA(インテリジェントパーキングアシスト)」機能と併せてコイル同士の位置合わせを容易にしています。 

TOYOTA_Wireless_ChargingTOYOTA_Wireless_Charging

一方の「電磁誘導方式」は日産やDENSOが採用。 

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(出展 日産自動車)

日産は送受電コイルの位置合わせをカーナビの「アラウンドビューモニター」技術を応用した「アドバンスドパーキングアシスト」との組み合わせで充電を自動化。 

DENSOは自動運転との組み合わせで自動充電する「スマートチャージングシステム」を採用しており、 「電磁誘導方式」の為、送受電コイルの位置合わせの精度を上げる必要性から、準天頂衛星を用いたGPS信号を使って高精度の測位を行っています。 

こうした動きを背景に使用時の安全性の観点からワイヤレス給電技術の国際標準化作業が進められており、国際電気標準会議(IEC)/国際標準化機構(ISO)の共同部会が国際標準を制定。

以上により、今後は充電の都度、重い充電ケーブルを車両の充電口へ挿し込む必要性が無くなり、充電作業自体も自動化される方向で動いているようです。 

■磁界共鳴方式送電について (TDK)
http://www.tdk.co.jp/techmag/knowledge/200912u/index2.htm 

■電磁誘導方式 非接触給電システム (日産)
http://www.nissan-global.com/JP/TECHNOLOGY/OVERVIEW/wcs.html 

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 (Avanti Yasunori) 

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この記事の著者

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Avanti Yasunori

大手自動車会社で人生長きに渡って自動車開発に携わった後、2011年5月から「clicccar」で新車に関する話題や速報を中心に執筆をスタート、現在に至る。幼少の頃から根っからの車好きで、免許取得後10台以上の車を乗り継ぐが、中でもソレックスキャブ搭載のヤマハ製2T‐Gエンジンを積むTA22型「セリカ 1600GTV」は、色々と手を入れていたこともあり、思い出深い一台となっている。
趣味は楽器演奏で、エレキギターやアンプ、エフェクター等の収集癖を持つ。
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