33年前の「ソアラのすべて」創刊から、更に遡ること9年。第一次オイルショック直前の1972年に、単一車種を特集した「モーターファン・日本の傑作車シリーズ」が出版されました。まさしく「すべて本」の前身ともいえる「傑作本」には、ハコスカやシビック、サバンナ、セリカ、ベレット等の懐かしいクルマが名を連ねています。
今では極めて入手困難な本ですが、今回14集全巻が電子本で復刻しました。 しかも第1集のハコスカでは、なんと開発責任者の櫻井真一郎氏ご自身が、開発にかける想いを寄稿しているのですから素晴らしい。そこでここでは、第1集のハコスカについて紹介したいと思います。
■ハコスカはこんなにもバリエーション豊富!
ハコスカといえば、ロングノーズの4ドアセダンや2ドアGT-Rが頭に浮かびますが、画像のとおり、標準ボディやワゴンなど6種のボディバリエーションが存在していました。またエンジンも、直4ではG15とG18型、直6ではL20とS20型の合計4種を搭載していましたから、本当にバラエティに富んでいたのですね。車種自体が少ない時代ですから、一車種で様々なニーズに応えようとしていたことが伺えます。
■ミスタースカイラインこと櫻井真一郎氏からのメッセージ(引用)
★「自動車に設計者の血と肉と体温をあたえる」ことこそエンジニアの愛情であり、また、ユーザーにとっても捨てがたい味となるのではないかと思っている。
★設計者として気をつけなければならないことは、技術的満足のために自己陶酔した商品を作ってはならない。各設計者の意欲を盛り立てながら、この辺のバランスを取っていくことが企画陣の頭脳であり、秘訣でもあると考えている。
★旧プリンス系のスカイラインに対し、日産自動車が会社総がかりで、ニッサンスカイラインとして育て上げようとする意気込みと、力の入れかたが強烈に感じられた。このことなくしては今日のスカイラインはなかったのではないかと、しみじみ感じ入っている。
★充実した車を作り上げるためには、リーダーたるものは計画に着手する前に、自己の心の中を分析し、そのバランスを傾かないものに仕上げることこそ、何よりも重要なことではあるまいか。
ハコスカは、日産によるプリンス合併をまたいで開発されました。合併後は、開発手法や部品共有化、量産対応等で苦難も多かったことが文中から伺えます。古い言い方ですが、苦難を肥やしにして更に大きく飛躍しようと努める姿に、スケールの大きい魂と燃え盛る情熱、そして果てしないクルマ愛を実感した次第です。
「日本の傑作車シリーズ」は本当に貴重で、当時のデザインイラストや技術資料も盛り沢山です。70年代国産車フリークの皆さん、超・必見ですゾ〜。
■電子本 http://3a.as-books.jp/books/info.php?no=PKG19731030
(拓波幸としひろ)