マツダは「14.0」という世界一の「高圧縮ガソリン」エンジンと、同じく「14.0」という世界一の「低圧縮ディーゼル」エンジンを世に送り出し、世界中の自動車メーカーに衝撃を与えました。さらに、昨年末に開催されたプレス向けの技術説明会でマツダの人見光夫さんは「HCCI(予混合圧縮自己着火)」に挑戦していると明言。HCCIはメルセデスやトヨタ、日産など多くのメーカーがチャレンジしている話を時々聞きますが、不可能と思われるほどかなり難しい技術。
しかし、いきなりHCCIに行けなくてもエンジン開発はまだまだ不可欠で、近日にマイナーチェンジするトヨタ・パッソ(ダイハツ・ブーン)などに搭載する低燃費エンジンに注目が集まっています。
世界トップレベルのエンジン最大熱効率を達成しているのが見どころで、従来型比で10%以上(JC08モード)の燃費向上を実現。なお、熱効率とはエンジンなどのエネルギー効率を数値化したもの。
燃料を燃やすことで生じた熱エネルギーのうち、有効な仕事に変換された割合で、熱効率が高いほど燃料消費は少なくなるわけですが、各メーカーともにエンジンの熱効率はなかなか公表されず、20〜30%程度がいいところ、という話も聞きます。
今回の1.3Lガソリンエンジンでは、これまでハイブリッド専用エンジンに採用してきたアトキンソンサイクルを採用。「13.5」という高圧縮比化することで膨張比を上げて排熱を抑制しています。
また、シリンダー内に強いタンブル流(縦回転の混合気の流れ)を生成する新形状の吸気ポートにより燃焼効率を高め、さらにいまや欠かせないクールドEGR(排出ガス再循環システム)、電動連続可変バルブタイミング機構(VVT-iE)などにより燃焼改善と損失低減を追求することで、量産ガソリンエンジンとしては世界トップレベルの最大熱効率38%を達成。
1.3Lガソリンエンジン搭載車はアイドリングストップ機能などとあいまって、従来型に比べ約15%の燃費向上を実現したそうです。
また、ダイハツ工業と共同開発された1.0Lガソリンエンジンでは、タンブル流を生成する新形状の吸気ポート、クールドEGR、高圧縮比化などにより最大熱効率37%を達成。新エンジン搭載車はアイドリングストップ機能や、さまざまな低燃費技術とあいまって、従来型比で最大約30%の燃費向上を実現。
これらによりマイナーチェンジ後のパッソ/ブーンは、登録車の純ガソリン車で燃費ナンバー1になる見通しであるのもすでに一部新聞で報道されています。
(塚田勝弘)