春の新生活を前に自転車を購入しようかな、と考えている人も多いと思います。「自転車産業振興協会」の資料によると、自転車が最も売れるのは3月、4月の順だそうです。購入時に重視するポイントは人によって違うでしょうが、用途に応じたタイプ、そして予算、デザインやブランドなどを基準に選ぶことが多いと想像できます。
しかし、意外に忘れがちなのが「安全」ではないでしょうか。クルマでは安全性を重視する人が増えているのに、自転車の安全性についてはあまり考えたことないという人も少なくないはず。
自転車には大けがになる単独事故はもちろん、加害者になってしまう可能性もあり、賠償金額は1億円近くになる判例もあります。
さて、私事ではありますが、私の子どもが通う保育園も例外ではなく、都市部などの保育園や幼稚園はクルマでの登園が禁止されているケースが多いですよね。遠くから登園する場合は子どもを乗せられる自転車が必需品なのです。
皆さん大切な子どもを守るためヘルメットを着用させていますが、でもその自転車は安全なのでしょうか? そもそも自転車の安全性って何だろう? といったギモンが浮かびます。そこで、「自転車の安全利用促進委員会」が開催した自転車検査の見学会に行ってきました。
同施設は、ベビーカーからクルマまでの総合的な試験、検査を行う機関で、数多くの自転車メーカーが同施設で試験や検査を受けています。
購入時にひと目で分かるように、安全性を保証するマークには、現在最も多い「BAAマーク」をはじめ、ヨーロッパの規格をベースにして、スポーツ系の自転車などに貼付される「SBAAマーク」、自転車を含む生活用品の安全性を認証する「SGマーク」、お馴染みの「JISマーク」、そして登録された自転車安全整備店で点検・整備を受けたことを示す「TSマーク」があります。
今回は、最も年間交付枚数が多い「BAAマーク」の検査の一部を見学しました。「BAAマーク」の検査内容は「フレームの強度試験」、「前ホーク耐久試験」、「ハンドル衝撃試験」、「ブレーキ制動試験」、「リフレクターの反射性能」、「駆動部の動的試験」と多岐にわたります。
見学した「フレームの強度試験」では、総荷重65kgをかけて上下振動を7万回も繰り返すそうです。また、フレームの強度試験の「繰り返し荷重疲労試験」では自転車の「立ちこぎ」を想定して、ひねりの力を加える試験を18時間40分にわたって続けられるとのこと。
自転車の安全性でとても大切なブレーキの制動試験は、ブレーキ性能試験機で行われますが、今回は分かりやすいように「整備済みの自転車」と「未整備自転車」のブレーキ比較体験も用意されていました。
約20°の下勾配からスタートして決められた地点からブレーキを掛けて、どれくらいで停止できるかを試験するもの。整備済みの自転車はスムーズに止まりますが、未整備(整備不良)自転車だとスーッと止まらずに想像以上に進んでしまいます。
実際には、人による試験だとバラツキが出ますので、ドライ(乾燥)時とウェット時の試験ともに先述したようにブレーキ性能試験機が使われます。
また、夜間の安全性で大切なのがライト点灯はもちろん、周囲のクルマやオートバイなどからきちんと視認されること。自転車の前後にはリフレクター(反射板)を装備しなくてはなりません。
じつは、リフレクターに検査が必要? と思っていたのですが、反射板ですから割れていたり、割れている場所から水が入っていたり、汚れや泥が付着していたりするとしっかり反射せず、視認性がガクンと落ちてしまうそうです。
写真では分かりにくいですが、4つの反射板のうち左上が正常で、後の3つは上記のように問題があるもの。検査では100フィート(約30m)後方から反射性能(反射光の強さ)が試験されます。
「BAAマーク」が貼付された自転車を選ぶのが、安全で安心なのがよく分かった見学会でした。これから自転車を買おうとしている人はもちろん、家族のために購入しようと考えているにも「BAAマーク」をオススメしてください。
■自転車の安全利用促進委員会
http://www.baa-bicycle.com/
(塚田勝弘)