これまで次期NSXのSH-4WDは、次期レジェンド用に開発システムを、前後反転してミッドに搭載するとアナウンスされてきました。当然メインユニットは、NA横置きエンジンがベースになるかと思いきやさにあらず。公開された次期NSXは、なんとエンジンを直噴ツインターボで武装し、縦置きのミッドシップレイアウトを採用。初代NSXとは、全く異なる大進化を遂げていました。そこには伊東社長の強力なリーダーシップとアメリカ現地主義の徹底、そして初代NSXの熱いDNAが注がれていたのです。
■ホンダ伊東社長とNSXの深い縁・NSXの過去現在未来とは!?
ホンダの伊東社長は、NSXとは非常に深い縁で結ばれています。最初の縁は、32歳で係長の時。初代NSXでオールアルミのボディ開発を任され、見事世界初の大仕事を成し遂げました。次の縁は、リーマンショックで事業整理を任された時。販売が決定していたNSX後継車(V10・5L超のFR)の廃盤を決めたというのですから凄まじい。そして社長に就任した今回は、斬新な3モーター式のHVミッドシップとして次期NSXの開発を推進。開発においては「モーターを活用して、燃費だけではなくクルマを更に面白くする」というコンセプトに加え、「NSXはメイン市場のアメリカで開発・生産する」というホンダの原点ともいえる現地主義を、強力に推し進めてきたのです。
■開発責任者はアメリカ人、されどホンダスピリッツに国境なし!
ホンダのグローバルモデルで、アメリカ人が開発責任者に就任したのは初めてのコト。次期NSXの開発を任されたテッド・クラウスLPL(ラージプロジェクトリーダー)は、基本コンセプトに「初代NSXと同様に、スポーツカーの新しい価値を提案する」を設定。そして、SH-4WDの3モーターは「スポーツカーとして大切な”遅れのない軽快感”を安心して楽しめる手段として使う」と熱くコメントしています。本格スーパースポーツカーで、軽快なハンドリングを実現するというのですから素晴らしい。正直言って「アメリカでの開発」と聞いて心配していましたが、大変失礼しました。「ホンダスピリッツに国境なし!」を強く実感した次第です。
■SH-4WDシステムの心臓部は、縦置きV6直噴3.5L級ツインターボ!
「ニュルを6分台で走りたい」とはホンダ関係者から漏れ伝わる話ですが、公開されたメカニズムを見ると現実味を帯びてきます。NSXといえば横置きながら切れ味鋭いNAエンジンを思い浮かべますが、次期型では縦置きに改め、更にV6直噴3.5L級ツインターボで武装(予想パワー480ps)。SH-4WDを支えるモーターを見ると、7速DCTに内蔵されるリアモーター90kwがパワーと燃費をアシスト。それに前輪左右でトルク差をつけるフロントモーター15kwが左右に付き、異次元のハンドリングを実現するでしょう。つまり次期NSXの正体とは、「総システム出力600馬力のHVコーナーリングマシン」ということになる訳です。とんでもないですゾ、これは。
ホンダではこれから発売までの約1年間、SH-4WDシステムが時速300キロ超に耐えられるように鍛錬していくとのこと。また一方で、日常ユースもNSXの大切なアイデンティティですから、快適性やエコ性能もしっかり磨き上げてくるでしょう。「文武両道」を極めるべく開発を進める次期NSXに、ますます期待が高まります。
(拓波幸としひろ)