軽自動車の中でもハイト系とスーパーハイト系は、ミリ単位の広さを求められます。ワゴンRとムーヴ、スペーシアとタントの激しいライバル争いでも争点といえるもの。
しかし、N BOXからスタートした「N」シリーズは、ホンダの軽自動車再生を託されただけあって、アプローチが異なります。数値上の広さだけでなく、N BOXであればフィット譲りの跳ね上げ可能な後席により、室内にA型ベビーカーをたたまずに積めたり、N BOX+なら二重フロアの下にちょうど台車が収まることで、マンションの高層階に住む人が荷物の搬入で部屋とクルマを何度も往復せずに済むなど、実際に使う時の使いやすさに注力しています。
N-WGNが属する軽ハイトワゴンは、「N-WGN試乗記01」でもレポートしたとおり、乗用車的な要素と積載性の両方が求められる万能型で、ワゴンRとムーヴが何代にもわたり熟成を極めてきました。
ワゴンRやムーヴとの違いは、ホンダの特許であるセンタータンクレイアウトによりフロアが他車よりも低く、フラットなフロアを作りやすい点と、後席のスライド量を追求するよりも積載スペースを確保している点。フロアが低いですから室内高もとりやすく、前後席ともに頭上の開放感も十分といえます。
前席はシート幅も厚みも不足はなく、背もたれの天地高も長めです。ホールド性はシート形状からしてもあまり追求されていませんが、センターアームレストを出せば普通に走る分には不足はないはず。
注目の後席は、最後端にすれば身長171cmの筆者が前後席に座ってもニースペースはこぶし3つ分ほどあり、N BOXほどではないですが、広さを実感できます。実際の数値でも前後席距離間のタンデムディスタンスは1100mmで、N BOXの1150mmには及びませんがまったく不足を感じさせません。
また、ワゴンRやムーヴよりもヒップポイントが低く、アップライトな姿勢にはなりませんから、よりセダンライクな座り心地といえます。
後席のシートスライド量は200mmと、240mmのムーヴには及びませんが、ワゴンRの160mmよりは動きます。N-WGNは、バックレストを立てた状態での荷室奥行きを重視した設計で、この状態なら荷室側からも拡大できます。
しかし、ワゴンRのように左右別々にスライドはできず、3人乗車しながら大きめの荷物などを積むといった使い方では、ワゴンRに軍配が上がります。
(塚田勝弘)