12月7日~10日にかけてシンガポールで開催されたTPP全体閣僚会合。
開催直前に体調不良で欠席することとなった甘利経済再生相(TPP担当)に代わって日本からは西村内閣府副大臣が出席。
現在までの交渉で米国は日本車にかけている輸出関税の撤廃時期について「最大限後ろ倒しされる」としただけで、具体時期に触れていないだけで無く、日本からの輸入が急増した場合に関税を一時的に引き上げる事が出来る輸入制限「セーフガード」の導入を交渉テーブルに持ち出しているようです。
新聞報道によると、セーフガードの発動条件として米国は「日本車の関税を無くしてから10年間は発動可能。適用期間は最大4年で何度でも適用出来る」と主張。
また自動車貿易で日本側に協定違反などが有れば現状2.5%の関税維持が可能になる「スナップバック条項」と称する紛争処理規定の導入を要求。
さらに税制面では「排気量別の税制度の見直し」、「エコカー減税の対象拡大」等も要求しており、政府はこうした米国の要求にも応える形で軽自動車の優遇税制見直しを含めた自動車税制改定に着手。 「2014年度 税制改正大綱」に織り込みました。
米国側のこうした数々の要求の背景には米ビッグ3(GM、フォード、クライスラー)で組織する米自動車貿易政策評議会のマット・ブラント会長が日本をTPP協定に参加させないよう、オバマ大統領に進言するなど早い段階から露骨な姿勢に出ていることがあるようです。
実際、北米新車市場では日本車が約4割もの大きなシェアを占めており、本年11月末までに累計約526万台を販売するなど、人気を博している現実が存在。
対するビッグ3の同期間に於ける北米での販売台数は3社合計で約647万台(シェア 約45%)に留まっており、相対的に日本車シェアの高さが目立つ状況。
米政府としては関税を撤廃すれば米に進出した日本車メーカーが生産拠点を日本国内に戻し始め、米人の雇用が大量に失われる事を懸念しているようで、自動車輸出関税撤廃時期について日本側の10年以内との憶測とは裏腹に実際には20年程度は撤廃しない腹積もりとか。
米自動車業界が日本のTPP参加を快く思っていない事や、日本車勢が既に米国現地生産に舵を切っていることから考えれば何も今さら輸出関税撤廃の恩恵が期待出来ない米国主導のTPP交渉に参加する必要は無かったということに。
しかし一方で日本は米国とのTPP交渉だけで無く、世界的に多国間・地域間の通商ルールを決めて行くという大きな潮流の中に有り、今後の少子化・超高齢化による国内人口減少に備えて海外の成長を積極的に取り込んで行くことが重要とされています。
こうしたことを踏まえ、日本政府は自動車本体だけで無く、年間輸出額で約8,000億円弱に上る自動車部品への早期関税撤廃を米国に求めて行く方針と言います。
米国はエンジン・シリンダー等の部品に2.5%の関税をかけており、関税撤廃が早期に実現すれば輸出拡大や米国生産の日本車の価格競争力向上が期待出来るとの考え。
年内決着に目処が立たず、来春まで長引く事が確実視されるTPP交渉ですが、日本政府の交渉力が問われる局面は今後もまだ当分続きそうです。
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