日本は安全技術で世界をリードできるのか? ITS世界会議東京2013で実験車に試乗

ITS世界会議東京2013が開催されています。

ITSとは、その会議のWebサイトによると、

ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)とは、人と道路と自動車の間で情報の受発信を行い、道路交通が抱える事故や渋滞、環境対策など、様々な課題を解決するためのシステムの総称です。 常に最先端の情報通信や制御技術を活用して、道路交通の最適化を図ると同時に、事故や渋滞の解消、省エネや環境との共存を図り、移動にやさしい豊かなモビリティ社会を実現する役割を担っています。

要するにクルマの交通を進化させて円滑にして事故を減らし、省エネに貢献しようと言うものですね。

具体的なものではETCやカーナビの渋滞情報表示(VICS)などがその一例です。

電子技術を多用するため、日本が得意でありリードすべき分野だと思われます。

その世界会議に先立ち、現在実施に向けて研究中の技術の一部を同乗してデモンストレーションしていただきました。

●次世代DSSS ~路車間通信による安全運転支援システムの体験~

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路車間とは、道路などのインフラと車両を繋ぐことで、すでにVICSのビーコンやETCなどもこうしたもののひとつです。

将来的に考えられているのは、歩行者が横断歩道を横断しそうだ、脇道から車両が出てくるかもしれない、右折時に対向車の影に隠れたバイクがいそうだ、この先に止まれの標識があるといったことを知らせてくれたり、信号機がつながるところでは、次の信号をそのまま青で通過するのに最適な走行速度域や赤信号で止まっている時間のカウントダウンなどを教えてくれます。

かなり普及してきているETC用アンテナと共用できるDSRC対応ETC&カーナビなどで実現可能です。これは道路を管理する警察も大きく関与しており、「事故件数の多い交差点から」という具合にサービスが開始されそうです。

 

 

●通信利用型先進安全自動車

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こちらは道路などのインフラではなく、車車間通信によって危険を回避しようとする先進安全自動車(ASV)のデモです。ASVのフェイズは現在「5」です。かつてはABSやエアバッグといった現在では当たり前の技術を研究していた頃もあり、自動車メーカーと国土交通省が主体となって進めていくのが特徴です。

交差点を横切る時、左右から車両が近付いてくることを知らせたり、救急車や消防車といった緊急車両、工事車両の存在や近付きを知らせてくれたり、歩行者にもなんらかの端末(例えば携帯電話)からの位置情報で車両にその存在を知らせる、などが想定されています。

緊急車両の情報などはすぐにでも実現しそう(覆面パトカーや白バイなどならさらに歓迎!?)ですが、その他の警報、警告はお互いの車両が立体交差を走っていてぶつからないはずなのに、警告を出すかもしれない、といった問題なども考えられます。こちらもインフラとの協調が必要でしょう。

 

 

●高速道路サグ部の交通円滑化サービス

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「サグ部」とは道路の下って上っている部分、すり鉢状のそこに向かって上に登るようなシーンの場所です。

このような場面では、下りの時にスピードが上がりブレーキで減速し、上りになるとアクセルを踏むのですが、どうしても前のクルマがある程度加速しているのを確認してからアクセルを踏むのがフツウの運転となります。でもこれでは前者との車間距離が空いてしまい渋滞につながると言われています。

これを、現在かなり多くなってきた追従型クルーズコントロール(ACC)にプラスして、車車間で車両の情報を伝え合いながら素早く加速する、といったことなどが考えられています。

これはACCの進化として規格を制定していただき、実現してもらいたいですね。写真のタブレットからわかるように、車車間通信で仲間とのドライブも楽しくなりそうです。

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このように、かなり現実的なものからそこまでやるの?といったものまで研究、実験されております。こうした技術は車両だけでなくインフラ整備も大きく影響するのですぐにできるできないではなく、積み重ねが重要だと思います。

日本がリードすべき分野であるべきなのは間違いないのですが、つまりこれを海外へ展開しないと経済的にも成り立たないのも明白です。先進国はもちろん、交通網に対して発展途上の国がこの技術を必要とするか、も個々の技術を育てるか否かの大きなキーポイントになるのではないかと感じました。

(小林和久)

この記事の著者

小林和久 近影

小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務めた。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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