新型フィット開発責任者の小西LPLからは、社内外問わず辛口御免のトークが炸裂しますが、特に自分の開発チームに対しては「そんなのできて当たり前! やれるものならやってみろ!」の「虎の穴」状態だったようです。そんな小西LPLのコメントと新型フィットのカタログを対比してみると、【THE JAPAN PRIDE FIT3】という熱いCMコピーに込めた信念が浮かび上がってきました。
■体感すればわかる。世界基準で磨いた走り。/ハイブリッド車トップの低燃費。
日本のコンパクトカー市場について、「日本で日本のクルマを相手にしていては、到底世界で勝てないという思いがありました。」「日本で売られているコンパクトカーの大半が、内装の質感からエクステリアデザインまで、コストダウンが丸見えでしょう。」「そうした中で、フィットは頑張っているほうだと思いますが、それでも走りについてはまだまだ・・・と思いました。」と語る小西LPL。新型フィットは、ドイツ・コンパクトカーの雄・VWポロをベンチマークにして、開発が進められました。ちなみに燃費に関しては「そんなことは、やって当然ですから」と自らをバッサリと一刀両断、凄すぎます。
■人のための空間を、もっともっと広く。
ホンダ独創のセンタータンクは、実を言えば重いしコスト高。それでも小西LPLは「世界のコンパクトカーがパーソナル志向になっているのは認識していますが、フィットが日本中心の商品であることは今も変わりません。それに世界にこういう(センタータンクによる室内空間とユーティリティに秀でた)クルマが一台くらいあってもいい。フィットが世界で勝つには、逆に他車には似ていないところが重要だと考えています。」という信念を貫きました。
■世界中が振り向く魅力を込めました。
「フィットは初代、二代目と、あくまで日本ターゲットで開発して世界でも売れた車でした。ですから、フィット最大の欠点は日本以外での売価が高いこと・・・。新型フィットでは世界レベルで売価を適正化して、しかも適正な利益が出るものにすることが大きな使命でした。」とのこと。つまり新型フィットは、日本発の魅力を思い切り詰め込み、メキシコ工場で生産してアメリカ大陸に供給する世界戦略車なのです。
■日本のコンパクトカーで、世界を驚かせよう。
「家電のように壊れたから買う、というお客様だけになってしまうと、自動車産業はたちゆきません。その一方で、ハードウエアがすごく良くならないと、お客様が本当に買いたくなる動機にはなりません。ですから新型フィットも、デザイン・質感・走りが、あえて買う動機になるくらい進化したイイモノにならないと難しい・・・という思いは常にありました。」という小西LPLのコメントに、思わず深く頷いてしましました。80年代ワンダーシビックやリトラクタブルアコードが宿していたホンダ魂が蘇ったようで、本当に嬉しく思いました。
小西LPLの歯に衣着せないコメントと「THE JAPAN PRIDE FIT3」のCMコピーには、日本を代表するコンパクトカーを造るという気概と、困難な命題に真っ向から挑戦して成し遂げたという自信に溢れています。しかも新型フィットに留まらず、今後はフィットの兄弟車も新型をベースにフルモデルチェンジしてくる訳ですから、大いに期待したいと思います。
(拓波幸としひろ)