以前、テスラ・モデルSに小林編集長と試乗した際、広報ご担当の方もお目付役で同乗していることもあり、内心思っていることを飲み込んだままでした。さらに、1台しか日本になかった試乗車、想定以上の速さと、いつもよりも冷静にクルマを検分できていなかったせいもあって口から出なかったのかもしれません。
それは、せっかくエンジンがなく、従来のエンジン付自動車とは一線を画したデザインができるはずなのに、日産リーフ同様にモデルSは見慣れたクルマのカタチをしていることでした。フロントノーズがあり、キャビンがあり、リヤのオーバーハングがあるというカタチ。クーペルックなセダンですから3BOXとはいわなくても、見たことのないフォルムではありません。
しかし、今回、米国家道路交通安全局(NHTSA)の試験において、すべてのカテゴリーで最高評価の5つ星を獲得。5つ星評価は全体の約1%に過ぎないそうです。
また、NHTSAが与える最高評価は5つ星までで、それを超える評価はメーカーに提供される「総合自動車安全得点(VSS)」に記録され、テスラ・モデルSは過去最高の5.4つ星を獲得。
ちょっと中途半端な星ですが、殿堂入りということでしょうか。具体的には、大型のSUVやミニバンを超える安全性得点で、前後左右だけでなく、横転事故によるケガの可能性まで考慮されるそうです。
さて、先述したようにフロントにエンジンがないことで、ボンネット下の空間が単なる荷室として機能しているだけでなく、クラッシャブルゾーンとして機能するように長い設計になっています。もちろん、ロングノーズによるスポーティな視覚効果もあるでしょう。
直径約30cmのモーターが収まるのはリヤアクスル近くで、ラゲッジの奥行きも十分に長いですからこちらも後突時のクラッシャブルゾーンとして機能。
同試験で最も難しいとされるのが、「サイドボール衝突試験」で、モデルSは上位1%の中で唯一「Good」を獲得。衝突後のドライバー周辺の空間はモデルSが63.5%で、同じくすべての項目で5つ星を得たボルボS60は7.8%ですから確かにかなりの優秀ぶりが伝わってきます。
これは、サイドレールにアルミ製の抽出成型部品を複数組み込むことで衝突エネルギーを吸収する手法によるもので、アポロ月着陸船に使われたのと似たアプローチだとか。
また、後席の後方にオプションでチャイルドシートを装着できるため、オーダーが入るとダブルバンパーを装着する入念な対策で、後突に備えています。
また、横転リスクもほかの優秀なモデルよりも約半分程度で、一般的なテストでは横転させることができなかったほど。フロア下に敷き詰められたバッテリーパックによる低重心が利いているため。
気になるのがリチウムイオン電池の安全性ですが、過酷な試験の間でも出火することはなく、モデルS、そして先に登場しているテスラ・ロードスターでも死亡事故はテスラでは認識していないとのことです。
■テスラ「モデルS」
http://www.teslamotors.com/jp/models
(塚田勝弘)