いまセダン、ツーリング、クーペ、カブリオレという定番商品だけなく、BMWの場合はグランツーリスモ、グランクーペという変わり種も増えている。メルセデスベンツ、アウディ、ジャガー、ポルシェという老舗のプレミアムブランドからも自社のラインナップの隙間を埋めるようにモデルを増やしている。
プレミアムカーメーカーがこういったマーケティング戦略を選ぶのは二つの要素があるのではないか。
ひとつは生産台数の増加を狙ったものだ。
これまでプレミアムブランドとしての生産台数はそう多くなかったから、ラインナップされる車種も少なくて済んだ。しかし拡大路線を走ることになったとしたら、一車種の販売台数を多くしたらプレミアム度が薄れてしまう。
だとしたら多品種少量生産でトータルとしての生産台数を増やすという作戦がある。プラットフォームを共通化してボディを被せ直しという手法なら、かなり違うものでも開発行程を少なく生み出すことができるはずだ。
もうひとつは永年買い替え続けているお客さんに飽きられないようにするためだ。プレミアムブランドだから伝統を受け継いで来ているから、同じ形なら大きな進化をしないと満足してもらえないからだ。
そこで目先が変わったモデルの登場は古いお客さんも満足できるというわけだ。それに年齢を重ねることでライフスタイルも変わっていくが、それにジャストフィットしたクルマに巡り会えるかもしれない。
その中から将来のメイン車種が入れ替わる可能性もある。急激な舵取りでなく方向転換できるからクルマを創る方も有り難いはずだ。
そうなるとお客さんもメーカーもハッピーということになり、多品種化は成功となるのである。いまのところは、各社うまく行っているようだ。
(菰田 潔)