あなたの「常識」が間違っていることに気付くかも知れません

まだまだマニュアル者が主流でオートマはごくわずか、いい若いモンがオートマに乗ってどうするんだ?と言われることさえあった時代に自動車雑誌を貪るように読んだ世代としては、オートマの原理とも言えるトルクコンバーターの「ヌルッ」とした感覚がどうにも気持ちいいとは言えなかったものです。

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よく、自動車雑誌にはその原理を「向かい合わせた2台の扇風機」に例えて、「片方のスイッチを入れるとスイッチを入れていないもう片方の扇風機の羽も回ります。このようにしてエンジントルクを伝えるのです」と、一番最初に書いたそのエラい人が誰なのかわかりませんが、まことしやかにそういう例えを、さも自分が考えたように雑誌に書いたことのあるライター、編集者は日本に数十名はいるはずです(私もそのひとりです!)。

でも、今になってみると、原理の説明はそれで正しいんでしょうが、それではいかにもトルクの伝達効率はいいはずなく、回してるほうの扇風機の風はだだ漏れでとても効率が悪い変速機のイメージも植え付けられたものです。

まあ、実際にカタログからも経験からも燃費が悪かったのでそういう意味でも例えとして当時は間違っていなかったのでしょう。

ところが、ロックアップ機構が導入され出し、ロックアップが効いた一定の速度で走るとギヤ比によってはオートマのほうが燃費が良くなることも見られ、そんなものなんだ、とやや考えを改めたものの、伝達効率の悪いイメージは拭い去れませんでした。

ところがところが、今回マツダ・ビアンテに載ったSKYACTIV-DRIVEと呼ばれるトランスミッションはトルコン6速ATの説明を受け、ある意味自分の持っていた常識が間違っているように感じました。

自分の思っていたトルコンATのイメージでは発進時にエンジン回転が上がって車両がゆっくりと走り出し、エンジン回転があまり変わらず車速が上がり、ある程度変速ギヤが上がっていくとロッックアップが働いて直結の状態になる、という感じでした。

ところがSKYACTIV-DRIVEでは、「発進時にしかトルコンを使わない」イメージだそうです。

走り出しのほんの数秒、例えば一般的な信号からの発進で、これまでの5ATだと約12秒ほどトルコンでトルクを伝えてたのが、今度のSKYACTIV-DRIVEでは約4秒したら直結状態になるんだそうです。

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そのために、トルクコンバータの中身を徹底的に見直したんだそうです。具体的には、例の扇風機に例えられる羽の数、形状、クリアランスなどを吟味。ロックアップクラッチスプリングの強化。ロックアップクラッチの多板化。そうした改善で作り上げたのが今度のSKYACTIV-DRIVEのトルコンATです。(写真は右がSKYACTIV-DRIVEです)

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 見せていただいたJC08モードの走りでも、従来5ATに比べSKYACTIV-DRIVEの6ATでは格段にロックアップ走行範囲(ピンク色部分)が広いのがわかります。

これがホントだとすると、自分が持っていた常識とは違ったATになっているということです。これは楽しみ!

ちなみにATFを交換するのはゴミの混入などを考えるとやらないほうがいいそうです。それほど劣化はしないんだそうです。これも常識と違ってました。

というわけで、次回は新型ビアンテに乗って、そのATの具合をお伝えします。

(小林和久) 

 

この記事の著者

小林和久 近影

小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務めた。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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