かつてボルボ車は「空飛ぶレンガ」と呼ばれていました。そう揶揄されるほどに、衝突時に乗員を守る車体の強度と構造においては、ボルボが独走していた時代がありました。
時代は変わり、自動車の衝突安全は、電子デバイスによる「ぶつからない」テクノロジーへとシフトしています。
現在のボルボのラインナップで、SUVの頂点に位置するのが「XC90」。2014年にはフルモデルチェンジを控えているというこのXC90のスクープ情報が漏れ伝わってきました。
その内容の一部は、事前の衝突回避デバイスを採用する、というもの。ボルボもついに「ぶつからないクルマ」の仲間入りです。
XC90は、大人7人をゆったりとおさめる、全長4810mmのボディサイズを持つ。全幅は2mにも迫る1935mm。車両重量も2tオーバー、重量級SUV。車両価格も650万円を超える、堂々としたもの。
重いボディは、衝突エネルギーも甚大ですが、クラッシュで負ってしまう金銭的ダメージも相当です。
新たに採用される予定なのは「ペデストリアン・ディテクション・イン・ダークネス」と呼ばれる新技術。車載カメラを使って障害物を感知し衝突を回避するのは他メーカーと同様ですが、優れているのは、暗い場所に対応している点。
“イン・ダークネス”の名のとおり、カメラの高精度化により、暗闇でもその効果が発揮できるのです。“ペデストリアン”=「横断する」歩行者を感知してドライバーに警告、それでも衝突が避けられない場合には、自動でブレーキをかけてくれます。
さらにボルボらしいと思うのは、画像認識技術を高めることにより、人間だけでなく、動物にも対応している点。飛び出してくる鹿などの動物にも反応する「アニマル・ディテション」は、ボルボの故郷、自然に囲まれたスウェーデンならではのテクノロジーといえます。昔なら、大きな金属製のバンパーガードがクルマを守ってくれましたが、いまは電子の目がそれに代わるのです。
長い歴史で培った強固なボディ構造に、衝突を事前に感知するハイテクが加わることで、“ぶつからないレンガ”──ボルボにまた新しいセールスポイントが生まれるようです。
※写真は現行ボルボXC90
(畑澤清志)