2007年、カリフォルニア州にEV普及で石油への世界的依存を減らす事を目的としたベンチャー支援企業「Better Place(ベタープレイス)」社が誕生しました。
創設者はイスラエル出身のシャイ・アガシCEO。
同社は交換式バッテリーを特徴としたEVを発案。使い果たしたリチウムイオンバッテリーパックをフル充電済みのパックと1分足らずで自動交換出来るドライブスルー方式の「バッテリー交換ステーション」を考案しました。
「Better Place」社はこれをビジネスモデルとして投資家から8億ドルの融資を集めます。
同社はルノーと提携して、3年の歳月と6億ドルをかけて「ルノー・フルエンス」をベースにバッテリー自動交換に対応したモデル「ルノー・フルエンスZ.E」を開発。
バッテリーパックをリース方式にして車両価格を抑制、2011年に発売。
これは「ユーザーがガソリン車を購入する場合に燃料を別に購入する必要が有るのと同じ」との考えがベースになっていると言います。
ちなみに「ルノー・フルエンスZ.E」の発売価格は€21,300。
フル充電時の航続距離は100マイル(≒160km)で最高速は135km/h。(バッテリーパックの寿命は約8年間で2000回充電可能)
ユーザーが負担する費用は0.04~0.05ドル/1マイルとガソリン車の1/3程度。
こうしたまるで家電製品のようなユニークなカセットタイプのバッテリー交換システムでEVの課題とされる充電時間や高くなりがちな車両価格を克服しようとした「Better Place」社でしたが、今回2013年5月26日に裁判所へ会社倒産手続きの申し立てを行なったそうです。
これは同社株式の過半数を握るイスラエル政府傘下の投資会社「Israel Corp.」が同社の新たな融資要請に応じなかった為とされています。
一時はイスラエルの「ベンチャー企業の星」としてもてはやされた同社でしたが、経営が行き詰った原因はやはりEV展開に付きまとう「インフラ整備」だったようです。
「バッテリー交換ステーション」はアイデアとしては悪くなかったものの、こうした独自方式は政府や関連企業の賛同・協力無しにはなかなか思うように普及が進まないのが実情。
ましてやユーザー目線で考えれば、都度バッテリー交換が必要なクルマを買った後、リーズナブルな筈の交換費用が後に企業の経営事情で吊り上げられた日にはたまりません。
バッテリー交換ステーションの少なさはEVにとって致命的。通常の充電コネクタも装備しているものの、これがまた独自仕様なのが痛いところ。
母体とも言えるイスラエル政府傘下のファンド会社までが見放したとも言える今回の顛末、その原因は同社が独自方式のEVの世界展開を甘く見ていた結果だったようです。
こうした傾向は同社に限らないようで、投資家の矛先から外れたEV絡みのベンチャー企業の倒産が世界的に相次いでいる模様。
しかしその一方で「テスラモーターズ」のように高級EVのジャンルで成功を収めているケースも存在しています。
その違いは何かと言えば、巧みな「経営力」に加えて、充電時間の短さや航続距離、美しいエクステリア・デザインなど、企業として最も重要な「顧客目線」に立って開発に取り組んでいるか? の部分ではないかと思われます。
「Better Place」社が追い込まれた状況は全てのEV開発メーカーにとって他人事では無いかもしれません。
■ベタープライス社 Webサイト
http://www.betterplace.com/
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