ここでいまさらNISMO(ニスモ)の説明は不要でしょう。スーパーGTなどで暴れまくる日産のモータースポーツ部門は世界的な知名度を得ています。市販車へのフィードバックという意味でもGT-RやフェアレディZをはじめとしたスポーツカーから、マーチなどのコンパクトカーまでを網羅したコンプリートカー、そしてミニバンを含むあらゆる車種をカバーするパーツを含めると、じつに身近な存在です。
でも、不思議なのがコンプリートカーでもパーツでもなく、日産のカタログモデルとしてその名がなかったこと。2011年の東京モーターショーでニスモのブランド戦略「高性能プレミアムスポーツバージョン」が発表されていましたが、ジュークNISMOはその第一弾。2月末にリリースされたジュークNISMOにようやく試乗できましたので、ご報告したいと思います。
ベースは「16GT FOUR Type V」で、まずは専用フロントグリルやリヤバンパー、オーバーフェンダー、LEDのハイパーデイライト、レッドにペイントされた電動格納式リモコンドアミラーなど、外観からしてただ者ではない雰囲気が濃厚で、遠くからでもインパクトは大ですから望まなくても高速道路で先を譲られることは度々でした。
フロントバンパーやサイドシルプロテクターもど派手ですが、前者はダウンフォースの向上、後者はリフト低減を実現しているわけですから、ニスモらしく立派な機能パーツ。
インテリアは思ったよりも控えめですが、それでも日産車では初となる本革・アルカンターラ巻の専用ステアリングや専用タコメーターなどに加えて、随所に赤いステッチや赤いエンジンプッシュスターターを採用するなど、ニスモのブランドカラーが採り入れられています。
エンジンはターボの過給圧をチューニングすることで10ps/10Nm向上し、CVTも7速をクロスレシオ化することでダイレクト感を追求しています。実際には圧倒的にパワフルになったわけではありませんが、ベース車よりもアクセル開度を抑えていてもスムーズな加速を得られるようになっているのは確かで、スポーツ走行をしなくてもより走りやすくなったのは魅力といえるでしょう。
引き締まった乗り心地を示すサスペンションももちろん専用アイテムで、車高はノーマルと同じですが、重心高の低さを感じさせる走りは首都高速のようなコーナーで真価を発揮します。逆に、引き締められた足まわりと225/45R18というワイドなタイヤなので、路面の凹凸を正直にボディに伝えます。
それでも、スエード調の専用シートがサイドサポート性も高められていることもあり、シート自体の減衰力も利いて乗り心地の面では毎日の足として許容範囲に収まっています。ファミリーユースに耐えるかどうかは微妙で、個人によって違うでしょう。
今回のジュークNISMOは、日本とアメリカ向けの第一弾で、第二弾は欧州向けのフェアレディZ(370Z)、第三弾は2014年に発売されるGT-R NISMO。
メルセデスのAMGやBMWのM、アウディのSラインのような存在にニスモがなれるかどうかは今後の熟成次第でしょうが、ジュークNISMOはとくに外装と走りの面ではやんちゃな面が目立つ仕上がりですから、車種によっては大人のスポーツという色気も期待したいところです。
(塚田勝弘)