内燃機関の技術力を象徴するともいえる多気筒エンジン。排気量だけでなく、気筒数も減らすダウンサイジングがトレンドとなっていくなかで12気筒エンジンは今後増えることはないとも言われます。
その12気筒エンジンをセダンにラインナップしている数少ないメーカーのひとつがBMWです。そして7シリーズに搭載されるBWWのV型12気筒エンジンは今年が25周年なのだそうです。
歴代の7シリーズに搭載されてきたV型12気筒エンジンを、振り返ってみましょう。
もともと「シルキーシックス」と呼ばれるほど滑らかさがウリの直列6気筒エンジンを搭載してきたBMW。12気筒エンジンといえば、そのシルキーシックスをダブルで楽しめるという期待もあって、デビュー前からおおいに注目と集めました。
そして、1987年に誕生したのが E32型750i用のV12エンジン。総排気量は5.0リッター、最高出力300馬力、最大トルク450N.mとなっていました。じつは、このエンジンの開発がはじまったのは1972年だったといいます。最初の、6気筒エンジンを60度のバンク角でつないだようなV12エンジンは単体重量で315kgもあったといいますが、市販バージョンでは240kgまで軽量化が進んだということです。
つづいて1994年、E38型750iに搭載されたV12エンジンは、総排気量が5.4リッター、最高出力は326馬力へと引き上げられました。
2002年には、新しい7シリーズのトップグレードとなる760i用として6.0リッターのV12エンジンが登場します。最高出力は445馬力。このエンジンは、V型12気筒として世界初の直噴エンジンでもありました。
そして、現在の7シリーズに搭載されているV12エンジンが登場したのは2009年。総排気量は5.0リッターとなりましたが、ツインターボで過給することで最高出力544馬力(400kW)、最大トルク750N.mを発生しています。
アルミブロック、クローズドデッキ、バランスに優れた60度のバンク角などなどのこだわりが込められたBMWの12気筒エンジン。アイドリングや巡航時には、その存在を忘れてしまうほどスムース&サイレントで、それでいてアクセルを踏み込むと12気筒エンジンらしいサウンドと、なにより過激な加速フィールが味わえるといいます。
日本の正規仕様では、V12を積んだ760Liの希望小売価格は1958万円ですから、そのエンジンを手に入れることができるのは限られた存在ですが、25年目のいまこそBMW・V12を味わうベストタイミングなのかもしれません。
(山本晋也)