BMW i3は500万円台、i8はBMWの最高価格の2000万円オーバーで2014年発売!【BMW i. BORN ELECTRIC TOUR.】

BMWは、サステイナブル(持続可能)な次世代のクルマのあるべき姿として「BMW i. BORN ELECTRIC TOUR.」と題し、ローマ、デュッセルドルフ、東京、ロンドン、ニューヨーク、パリ、上海の7都市を1年で巡る世界ツアーを行っています。

その中の一都市、東京でも先日、六本木ヒルズで行われました。

そこで発表されたのは、車両としてはBMW i3とBMW i8。また、ボディに使用されるCFRP(カーボン繊維強化樹脂)のキャビン、幸いにしてほとんど使用されずにその役目を終えるエアバッグ素材を使用したアパレル、バッグなども同時に展示されました。

i3は、「メガシティ・ビークル」と呼ぶEV(電気自動車)。世界の巨大都市における共通の問題点、排気ガスによる大気汚染、CO2排出、駐車場事情、渋滞などに対するBMWの答えです。

i3は、CFRPで作られたキャビンを、バッテリー/モーターなどのドライブユニットを組み込んだドライブモジュールの上に搭載した基本構造。現代のボディ/シャシーを一体としたモノコック構造と真逆の方向で、昔のクルマの作り方であるフレームとボディを別体としていた時代に戻ると言えなくもありません。しかし、人間が乗るキャビン部分は、強固で軽くて錆びないCFRPが最適で、時代とともに進化して、衝撃吸収の役目も果たすドライブモジュールは独立させた構造とするわけです。

リヤに搭載されるモーターは、最高出力125 kW〔170 ps〕、最大トルク250 Nmを発生。0-60 km/h加速は4.0秒以下、0-100 km/h加速は8.0秒以下と発表されています。

また、肝心の航続距離は160kmと、遠距離の都市間を結ぶものではありません。が、その距離は例えば六本木から小田原までに相当し、日常的な使用には十分な距離だというわけです。しかし、より長距離の移動も必要とする人のために、レンジ・エクステンダー(REx)がオプションで用意されています。これは小型のエンジンを発電機として搭載することで、航続距離を延ばすことが可能だと言うわけです。

 

i8は見てわかるようにスポーツカーですが、見た目からはわかりにくいかもしれませんが4シーターです。そのキャビン部分はi3同様にCFRPで作られ、ドライブモジュール上に載せられています。

i3との大きな違いはEVではなくプラグインハイブリッドであるということ。つまり、充電することで短距離ならばEVとして、長距離も安心してハイブリッドカーとしても使えるのです。

そのフロントには、i3と同じ電気モーターが小変更を施されて搭載され前輪を駆動し、リヤには最高出力164 kW〔220 ps〕、最大トルク300 Nmを発生するターボチャージャー付き1.5リッター3気筒ガソリン・エンジンを搭載し、後輪を駆動します。4輪を状況に合わせ効率的に制御、使用することで、路面状況に応じた駆動やエネルギー回生が可能となるわけです。結果、0-100 km/h加速が5.0秒を下回り、燃費はEUサイクルで100 kmあたり3リッター未満(33.3km/L以上)となっています。バッテリーだけでは35km走行可能です。

i3もi8もまだコンセプトですが、そのうちこういった方向のもの作りを目指してBMWはがんばっていきます、という意思表示ではありません。ほぼこういった製品をリリースするのです。そのために、すでにCFRP量産工場も建設されているとのこと。

具体的には、なんと2013年の秋には第1号のi3をリリースし、2014年の早い時期に世界で発売、i8も2014年中には発売されるそうです。

気になる価格は、プロジェクトBMW i ディレクターである丸山英樹さんによるとi3が3シリーズと5シリーズの間ということです。現在、3シリーズセダンは400万円台中盤から600万円程度、5シリーズセダンはハイパフォーマンスモデルを除くとおよそ600〜700万円くらい。ということは、ずばり500万円台と見るのが妥当なんではないでしょうか。

また、i8は現状のBMWラインアップ中でもっとも高価になることは間違いないだろうとのこと。現在もっとも高いのはM6 カブリオレの1760万円。これを明らかに超えるわけですから2000万円超は間違いないと見るべきでしょう。

「BMW i. BORN ELECTRIC TOUR.」で発表されたものは、個別の技術としてはまったく今までなかったものではありません。が、それを大量生産して世界で販売していくものとしては画期的です。こうしたことで世界の自動車メーカーの最先端を走っているというスタンスが、他のプレミアムカーを販売していくことにプラスになるというより必要不可欠な時代と言えます。

また、このサステイナブルな自動車社会を構築するにも必ず「駆けぬける歓び」を伴った上でのことだそうです。そういうポリシーを貫く姿勢が必要であるという表明が、BMWというアイデンティティを守り、ユーザーの中に刻まれていく、ということでしょう。高い技術力とブランディングの両方兼ね備えて初めて可能になることだと感じました。

(小林和久)

 

 

この記事の著者

編集長 小林和久 近影

編集長 小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務める。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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