BMW M135iはスポーティもジェントルも自在にこなす新世界戦略車

公開日 2012/09/27 20:08
更新日 2012/09/27 20:09
著者菰田潔

BMW M135i。これは年間世界生産台数を200万台に引き上げるBMWの戦略のひとつだろう。

これまでの通常のBMWモデルである「BMW Automobiles」とBMW Mモデルと呼ばれる「BMW M Automobiles」の中間に位置する「BMW M Performance Automobiles」を誕生させた。

通常のBMWモデルにも「スポーツライン」や車高を下げサスペンションを固めたよりスポーティな「M Sport」がカタログに載っているが、それよりスポーティなモデルを選ぼうとすると本格的なＭモデルまで飛ばなくてはならなかった。そこでマーケティング戦略としてその間を埋める役割を果たすのが「BMW M Performance Automobiles」なのだ。

BMW AG（BMW本社）とBMW M GmbH(BMW本社の100％子会社)のコラボレーションによって、BMWのラインナップに新しいカテゴリーが生まれた。

本国では「BMW M550d」,「BMW X6M50d」という超ハイパフォーマンスディーゼルエンジンも出るが「BMW M Performance Automobiles」としてすでに登場している。今回はそれに新たに加わった１シリーズハッチバックモデル「BMW M135i 3door Hatchback」に、BMW本社があるミュンヘン近郊の市街地、アウトバーンで試乗できたので試乗することができたので、そのインプレッションをお伝えしよう。日本に導入される最初の「BMW M Performance Automobiles」はこのM135iハッチバックになる。

１シリーズ３ドアハッチバックの発表にあわせて「BMW M Performance Automobiles」のM135iがデビューしたが、１シリーズハッチバックの最高グレードとしての位置だ。

クルマに乗り込んでいつものドライビングポジションに合わせる。サイドサポートがしっかりしたスポーツシートは、身体のホールド性が高く走り出す前からその気にさせてくれる。シートベルトをしてエンジンを掛けると排気音でスポーティなクルマだということを知らせてくれる。

ATのセレクターレバーは標準のBMWモデルと同じ電子シフトである。横の解除ボタンを親指で押しながら軽く手前に引くとＤレンジに入る。トランスミッションは最近BMWの標準になっているZF製の8速オートマチック。M135iにはハンドルの裏にパドルシフトが付くから、Dレンジのままでも必要に応じて、左手でシフトダウン、右手でシフトアップが可能。一定スピードでしばらく走ると自動的にDレンジに戻るのも通常のBMWと同じだ。Mモデルは一度パドルシフトでマニュルにするとセレクターレバーで戻さない限りマニュアルモードを持続する。

ちょっとグリップが太めのステアリングリムを持つハンドルは、切り初めからダイレクトなフィールがスポーティさを強調している。緊張感を強いられない程度のダイレクト感で、クルマを操りやすいと感じさせてくれるのが嬉しい。

アクセルペダルを踏み込むとモリモリと湧いてくるようなトルクで加速が始まる。アクセルペダルを踏み込むほどに加速力が高まり、スピードが高くなっても加速力がなかなか衰えない。

エンジンは3リッター直列6気筒ツインスクロールターボ。直噴、バルブトロニックを備え、最高出力235kW(320ps)/5800rpm、最大トルクは450Ｎm/1300−4500rpmを発揮する。

このエンジンは335iに搭載されているのと同じタイプであるが、335ｉの225kW（306ps）/5800−6000rpm、400Ｎm/1200−5000rpmと比べるとパワーもトルクも上げられているのが判る。車重は1515kgと331iより80kg軽いから0−100km/hは4.9秒と俊足を誇る。

市街地走行ではこのパワーを持て余すことは無い。それはアクセルペダルが過剰に敏感ではないからだ。ごく普通にジェントルに走ることが可能だ。車高が10mm下げられ、バネ、ダンパーも固められているが、乗り心地は硬すぎることなく揺すられる感じではない。ガツガツと硬い感じではなく、締まっているという印象だ。これなら奥さんを乗せてロングドライブしたとしても怒られることはないだろう。

アウトバーン上ではM135iのパフォーマンスの真価を発揮できる。200km/hを超えてからもアクセルペダルを床まで踏み込んでいればグイグイと加速していく。リミッターが作動してメーター上250km/hをオーバーしたところで加速が止まるが、そこまでは気持ちのいい音と共にいい加速感を味わえる。

200km/hを超えてからも安定感が良かった。エアロパーツによるダウンフォースがちゃんと働いていそうだ。このスピードからのブレーキングでもしっかりとした制動感を体感できる。ペダル剛性も高く安心感があった。ブレーキキャリパーはブルーにMマークが施され、フロントは4ピストンの対向だ。

ワインディングロードも走った。3シリーズより軽快な走りなのは、重量が軽いことが大きな要因だろう。コーナーのターンインではハンドル角に従ってノーズがきれいに向きを変えていく。フロントに直列6気筒＋ターボが搭載されているような重い感じは受けない。エンジンマウントも強化されていそうだ。タイヤのグリップに頼って曲がるのではなく、やはりBMWらしく前後の重量バランスがきちんと取れている。

タイヤはミシュランのパイロット・スーパースポーツ☆を履く。フロントは225/40Ｒ18 88Ｙ、リヤは245/35R18 92YXLで、ホイールはダブルスポークでM風に仕上げてある。