日本自動車工業会が7月24日、「乗用車におけるカタログモード燃費と実走行燃費の関係」と題した説明会を開催しました。
2009年以降、HV車やエンジンの小型化による低燃費車の登場でユーザーの燃費への関心が高まり、自動車メーカー間での燃費競争が過熱気味なのはご存知のとおり。
それを受けて2011年より、カタログ燃費の精度向上を目的にシャシーダイナモによる燃費計測方法が「10・15モード」パターンから「JC08モード」に改められ、エンジンが暖気されていない状態のコールドスタートを追加したり、試験の最高速度を70km/hから80km/h以上に引き上げるなど、より実走行に近づける努力がなされています。
しかしその一方で「カタログ燃費と実燃費の差」が改めて注目され始めているようです。
と言うのも海外では最近、実燃費がカタログ燃費と乖離しているとして消費者団体から訴訟が発生する騒動も発生しており、過度な宣伝が誤解を生むケースも。
日本でも「リッター30㎞ !」といった宣伝が目立つご時勢ですが、現実的には燃費計測専門のテストドライバーと同様の走行技術を持たない一般ユーザーが、気候や渋滞などの影響を受けつつ、カタログどおりの燃費値を出すのは至難の技。
というか、現実的には無理でしょう。そうした状況を踏まえ、カタログ燃費と実燃費に差が出るメカニズムについて自工会が改めて分析を始めたという訳です。
自工会の報告によると、モード燃費到達率(実燃費/カタログ燃費)が1990年代は約73%前後だったものが2000年頃から次第に下がり始め、2010年の段階では約70%まで下降。
しかも「カタログ燃費が良いモデルほどその燃費到達率が低くなっている」とのこと。その原因として「実燃費」に含まれる、エアコンやカーナビなどの電装系、補機類に使用されるJC08モード測定では想定していない消費エネルギーの増大傾向を挙げています。
とはいえ、昔から30%前後の乖離がある背景には、燃費に影響する「交通渋滞」や「クルマの使われ方」など、まだまだ膨大な原因が潜んでいるように思いますが…
ユーザー側も従来から「カタログ燃費なんてその程度のモノ」といった意識が染み付いているのも事実ですが、欧州では厳しい排ガス規制値を定めた事から、公称燃費の精度アップ対策にも真剣に取り組んでおり、日本でも今後もカタログ燃費を前面に押し出すのであれば、もっと現実に沿った燃費測定用走行パターンを早急に見出す必要が有るのかもしれません。
■国土交通省 燃費関連資料(平成24年度版)
http://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr10_000014.html
■日本自動車工業会(JAMA) 燃費基準資料
http://www.jama.or.jp/eco/fuel2015/pdf/fuel2015.pdf