新世代BOXER登場前に存在した、5年間しか作られなかったロングストロークエンジンとは?

FBエンジン登場前にロングストローク化を達成していたEL15エンジン。

前回記事で紹介したスクエアストロークのボクサーディーゼルEE20と86・BRZ、レガシィ 2.0GT DITに搭載される新世代BOXER、FA20。そしてロングストロークとなり低燃費を実現したFB20,FB25が、これからのスバルの主力エンジンになっていくと思われますが、ロングストロークを持つ新世代BOXERエンジン登場前に、実はスバル初の水平対向ロングストロークエンジンがあったのをご存知ですか?

77.7mm×79.0mmというロングストロークを実現したのは、EL15。

初搭載されたのは2世代目インプレッサであるGD/GG型の最終型であるG型。

EL15はその名の通り、排気量は1500ccで、110PS/6400rpm、14.7kg・m/3200rpmという何とも地味なスペックでしたが、実はスバルの水平対向エンジンに革命を起こしたとも言われる隠れた名機なのです。

スペック上は前途の通り、前モデルとなるEJ15からは最高出力で5ps、最大トルクで0.2kg・mと、ほとんど変わらないように見えますが、機構上ではSOHCだったEJ15に対し、EL15はDOHCになったうえ、吸気側に可変バルブタイミング機構のAVCSを装備、排気に関しても等長エキゾーストを採用していました。

新世代BOXERになるかと思われたEL15ですが、ロングストローク化にも関わらず、燃費は10・15モードで15.2km/L(GGCGインプレッサスポーツワゴン1.5R 4AT/FF)と、旧世代BOXERのEJ15(GG2G インプレッサスポーツワゴン1.5i 4AT/FF)と0.2km/Lしか変わりませんでした。

低燃費を目指した割にはタコメーターのレッドゾーンは7000rpmと意外に高回転型でした。

スバル初のロングストローク水平対向エンジンはGD/GGインプレッサのG型から採用された

1.5Rというグレードで、このモデルがエンジン同様地味なグレードで、売れ筋であった1.5iと併売されていたためか、あまり目立たない存在でした。

3代目インプレッサの1.5Lモデルは全車EL15を搭載。

1.5Rは、当時インプレッサの屋台骨を支えるとまで言われた売れ筋の1.5i同様FFとAWDの設定がありましたが、トランスミッションは4ATのみで、EL15をMTで堪能できるようになったのは、3代目となるGH/GE型から。

     ボトムグレードも新世代BOXER FB16へ移行した現行型インプレッサ

ご存知のようにWRX STI以外のインプレッサは昨年末にフルモデルチェンジしたばかり。

GP/GJ型へフルモデルチェンジしたインプレッサは、ボトムグレードのエンジンもEL15から、新世代BOXER1.6LのFB16へ進化しました。 

EL15エンジンはGD/GG型のG型から数えて、5年しか生産されなかった不遇のエンジンとも言えます。

しかしながら、新世代BOXERであるFB.FAエンジンの基盤を作ったエンジンの一つと言えると思います。
ラインナップ的には地味な存在だったインプレッサの1.5Lモデルですが、販売台数やエンジンの進化の過程等で、実は無くてはならない存在だったようです。

現行型になり1.6Lへバトンタッチしたインプレッサ、ボトムグレードながら人気が高いゆえ、早くもアイサイト搭載車を望む声も多いようです。 

ターボモデルや6気筒モデルに目が行きがちですが、実は目立たないベーシックなモデルにこそ、水平対向エンジンの進化のヒミツが隠されていたのかもしれませんね。

(井元 貴幸)