ドイツ車と日本車の現在における違いとは?

●ハンドリング性能

5シリーズのホイールベースを短くしたのが6シリーズだったが、グランクーペは4ドアにするために5シリーズのホイールベースに戻った。それでも前後50:50の重量バランスやしっかりしたボディ剛性、しなやかに動くサスペンションによってハンドルにダイレクトな動きをするスポーティなハンドリング性能を持っている。

車高は6シリーズだから低く、その分ホイールベースは同じでも5シリーズよりスポーティな感覚で走れる。ボディは5mを越えるサイズで、車重もそこそこあるにも関わらず、これだけスポーティに走らせられるところがBMWらしさなのだ。

日本車の4ドアセダンのハンドリングも新しいレクサスGSになって良くなってきたが、全体的なレベルアップを望みたいところだ。

●8速AT

ZFのトルクコンバータ式の8速ATは、ギヤ比をワイドにできるので高速道路での燃費を稼ぐことができる。100km/h巡航でのエンジン回転数は1700rpmである。マニュアルシフトにすると7速では2100rpm、6速は2600rpm、5速3300rpm、4速4300rpm、3速5400rpmになる。

ギヤ間に段差がないからシフトもスムーズだし、そのシチュエーションでベストに近いギヤを選択できるというメリットがある。しかもこの8速ATは、これまでの6速ATと同じ重量、同じ容積でできているので、車両に搭載するときのデメリットはない。

セレクターレバーも電子シフトになっている。これはいまや1シリーズも含めてBMW全車がそうなっている。セレクターはコンピュータと電線でつながっているだけで、ゲーム機のコントローラーと同じだ。手首だけの動きで操作できる。ギヤが入っている状態でエンジンストップボタンを押せば、エンジンが止まり、ATは自動的にPレンジに入る。

日本車ではハイブリッドカーに関しては電子シフトもトランスミッションもかなり進んでいるが、普通のクルマは逆に遅れていると思う。もっと全体のレベルアップが欲しい。 

●ダウンサイジングターボエンジン

640iというネーミングだが、エンジンは3リッターだ。直列6気筒、直噴、バルブトロニック、ツインスクロールターボである。450Nm/1300-4500rpmという最大トルクを発揮する。これはV型8気筒4.5リッターエンジンの最大トルクに匹敵する力だ。しかもNAエンジンなら回転を上げないと最大トルクは発揮できないが、このエンジンではたった1300rpmでも出せるところが凄い。

8速ATとの組み合わせも、こういう低回転から力が出るトルク特性を持っているエンジンだからできる。アクセルペダルを踏み始めたところからすぐに反応して加速が始まる。いわゆるターボラグという反応遅れを感じることなく走ることができるのだ。

650iになると、V型8気筒、4.4リッター、直噴、ツインターボエンジンを搭載し、最大トルク600Nm/1750-4500rpmを発揮する。これは昔のV型12気筒6リッターエンジンの最大トルクと同じだ。

通常走行ではそんなに力を必要としないから、ターボはあまり働かず燃費も良くなる。でも必要なときにはアクセルペダルを踏むだけで強烈なトルクを発揮できるのだ。これこそエフィシェントダイナミクスなのだ。

そして滑らかに回るエンジンは気持ちがいい。排気音と吸気音のチューニングによって、アクセルペダルの踏み込みに対してこれからどんな力を出すかが想像できるところも、運転好きにとってはたまらない。

こんな高性能を持ちながら、マニアックな味も持っているエンジンを日本車でも乗ってみたい。

 (菰田 潔)