一見珍車のソアラエアロキャビンにもあった「ソアラの哲学」

オートジャンボリー2012」の会場で、懐かしいクルマを発見しました。トヨタ・ソアラの2代目Z20系ですが、コンバーチブルオープンのソアラ エアロキャビンです。

Z20系ソアラは1986〜1991年まで販売されていました。パーソナルラグジュアリークーペとして成功した初代Z10系のキープコンセプトながらボディデザインを洗練させて登場。バブル景気の時代だったこともあり、初代日産シーマとともに大ヒットとなりました。

そして1990年4月、500台限定で発売されたのがこのエアロキャビン。リヤガラスと屋根は電動で折りたたんで、Cピラーとトランクリッドの間にあるルーフ格納スペースに格納します。

ルーフ開閉時は、格納スペースのカバーが後ろに開く構造になっているので、車体後部のデザインはオープン時もクローズ時も一緒になるようになっていました。

全車3LDOHCターボの7M-G(240ps)を搭載し電子制御E-AT(4速)と組み合わせていました。また3L車には設定がなかった本皮シートを装備。オープン時の風の巻き込みを防止するボードも装備されていたようです。

ところで、ソアラエアロキャビンはオープン状態になっても左右のB、Cピラーがそのまま残るため、フルオープンとはならない独特なスタイルをしていますが、どうしてなんでしょうね?

この理由はノーマルのソアラのスタイリングに関する哲学に関係があるものと思われます。

初代と2代目ソアラは、サイドウインドウとリヤクォーターウインドウの下辺の長さの比率を6:4としています。さらにA、B、Cピラーを上に延長していくと一点に交わるように角度を決めているのです。実はこの黄金比がソアラのアイデンティティを決定づけていて、ボディ同色のピラーがこの黄金比が強調するデザインとなっていました。これがソアラの哲学というわけです。

エアロキャビンはルーフ格納スペースを設けた関係でリヤクォーターウインドウが小さくなってしまったため、6:4の比率関係は崩れてしまいました。しかしCピラーの傾斜角度を立てて、各ピラーの延長線が一点に交わるスタイルは維持していました。たぶんピラーが残るデザインとしたのは、このソアラが持つアイデンティティをキープしたかったのではないのかなと思います。

ただ、やはりソアラ本来のかっこよさはクーペに軍配があがりますが。

そんなソアラの黄金比ですが、全然形が違う3代目Z30系ソアラでも実は踏襲されていました。しかしBピラーをブラックアウトしてしまったため、やっぱりソアラらしさが消えた感が強かったですね。そして4代目に至ってはもはやソアラは名ばかりになっていました。

ちなみに、自分が免許取り立ての頃、一番憧れていたのはこの顔のソアラでした。もちろん買えませんでしたが、一番日本的なクーペだと感じたものです。というか今見ても古く感じない気がします。

それにしてもソアラ エアロキャビンって、500台のうちどれぐらい生き残っているのでしょうかね?

(ぬまっち)

この記事の著者

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ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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