先代の日産シーマは、インフィニティでも発売したグローバルモデルでした。ただ残念ながら総販売台数が目標に至らず、次期モデルどころかブランドそのものが廃止となってしまったのです。今回「ブランド廃止から甦った新型シーマ」は、日本に特化したローカルモデルとして新たに企画開発されました。従来グローバル戦略とは逆の発想で、ブランド廃止から見事復活を遂げたのです。
開発責任者の笹岡さんは、シーマのブランド廃止に「男泣き」したという歴代シーマに関わってきた熱血漢。でもそういう開発者の想いはオーナーにも伝わるもので、歴代シーマのオーナーからは、復活要望が非常に強かったのだそうです。しかし日産お家芸のグローバル戦略で失敗しているから、同じ文法は使えません。しかも日本専売では市場規模が限定されるため、商売ベースに乗らず認められないのは目に見えています。
そこで企画・開発で「国内発のグローバルモデルを作る」という従来文法から、「グローバルモデルから、ローカルモデルを派生させる」企画に転換したのです。フーガをベースにすれば、フーガ一ファミリーとして台数が上積みできますから、グローバル戦略にも叶う訳です。しかも既存のグローバルモデルをベースにすれば、コストも価格も低く抑えることができるのですね。なるほど~!
ただこれが単に「スキンチェンジでシーマでござ~い!」で登場したらガッカリですが、今度の新型シーマは日本専用モデルとして、3つのこだわり仕様を織り込みました。
1つ目は、ホイールベースのロング化です。とにかく後席が広い。レクサスLSロングよりも広くしたあたりに、強烈なライバル心を感じます。
2つ目は、日本市場に向けた日本人のための作り込みです。塗装の表面は、匠の技によりまるで伝統工芸の漆のような仕上がりです。また超高速時の走行性能をあえて捨てるかわりに日本の速度域の乗り心地や快適性を向上させた割り切りも、天晴れ!と言わせて頂きたい。
3つ目は、FRハイブリッド専用化です。最高級車を日本のお家芸たるハイブリッド専用モデルに絞り込んだのは大正解だと思うし、従来型フーガハイブリットの進化ユニットを投入できたのも素晴らしい!技術と商品を循環させながら進化させていく手法も、日産の得意分野ですよね。
率直に言ってハード的には「フーガ・ロング」に見えます。でもその中身は、開発陣や生産部門が「俺ら日本人が、日本人のために造る!」という熱い想いを燃やして造ったのだと実感しました。目には見えないけど、開発陣のこういうハートは必ずオーナーに届くと確信しています。そしてだからこそ、クルマは面白いと思うのです!
(開発編@拓波幸としひろ)