エクステリア編に続き、NV350キャラバンと200系ハイエースのインテリアを比較してみたいと思います。
インテリアも随所に日産らしさや、後出しの強みを生かしているNV350キャラバンですが、レイアウトやポケッテリアの基本配置はハイエースに酷似しています。
メーターパネルはバンSUPER GL、ワゴングランドキャビン、GLに自発光式のタコメーター付オプティトロンメーターを採用するハイエース、NV350キャラバンは、バンプレミアムGX、ワゴンGXにファインビジョンメーターを採用。
NV350キャラバンにはカラー情報ディスプレイが装備され、燃費関連情報他、燃料計や水温計もビルトインされ、ハイエースに比べすっきりとした印象です。
カラー情報ディスプレイはバンGXプレミアム、ワゴンGXに装備されますが、メーカーオプションのバックガイドモニターを選択すれば、他グレードでもカラー液晶に変更されます。
さらにはオプティトロンメーター装着車のみにタコメーターが装着されるハイエースに対し、NV350キャラバンは全車にタコメーターを装備します。
操作性ではバンGXプレミアムとワゴンGXにプッシュエンジンスターターやインテリジェントキーが採用され、日産では乗り込んでから発車するまでの時間を5秒短縮するとしています。
AT車のみですが、足踏み式パーキングブレーキの採用も特筆すべき装備と言えます。
ハイエースは全車ステッキ式となる為、操作の際に体を起こしての操作になる他、近代的なインパネにステッキ式のパーキングブレーキはギャップを感じます。
収納に関しても、ハイエースに用意されているトレイやポケットはNV350には同様に装備される上、運転席からの出し入れも考慮された斜めにカットされた助手席マルチシートバックポケットや、A4ファイルを置く事の出来るインストアッパートレイなどは、ビジネスユースには嬉しい装備です。
インテリアにおいてもハイエースに対し死角の無いように思えるNV350キャラバンですが、残念な点もあります。
最上級モデルのGXプレミアムでもマニュアルエアコンのNV350キャラバンに対し、ハイエースでは前回のマイナーチェンジでバン SUPER GL、ワゴンGL、グランドキャビン、コミューターGLにフロントオートエアコンを装備。
運転中に乗降の多い場所、移動の長い場所が別れるビジネスユースのクルマには装備される車種は少ないですが、意外と重宝する装備だったりします。
後席では、NV350キャラバンのウリの一つである分割可倒シートが装備されますが、コストの問題や、写真にあるようにパーテーションパイプの設置が必要な事から、なかなか貨物自動車には採用されませんでした。実用性を考えたら、3名乗車で現場を移動する建設関係での使用には大変重宝される機能だと思います。
荷室に関しては既報の通り、4ナンバークラストップの荷室長で、ハイエースに対して大きなアドバンテージとなっているようです。
次にパワーユニットですが、燃費性能をウリにしているNV350キャラバン。クリーンディーゼルの環境性能も特徴の一つです。
NV350キャラバンに搭載されるクリーンディーゼルエンジンは2.5L 直4 DOHC 直噴 ターボの YD25DDTi。ハイエースのディーゼルエンジンは3.0L 直4 DOHC 直噴ターボの1KD-FTV。
NV350キャラバン 2.5L ディーゼルエンジン:最高出力 95kw(129ps)/3200rpm 最大トルク 356N・m(36.3kgf・m)1400-2000rpm JC08モード燃費 12.2km/L ※バンDX(2WD・5AT)。ロングボディ 標準ルーフ 標準幅 低床 6人乗 5ドア。
ハイエース 3.0Lディーゼルエンジン:最高出力 106kw(144ps)/3400rpm 最大トルク 300N・m(30.6kgf・m)1200-3200rpm JC08モード燃費11.4km/L ※バンDX(2WD・4AT)。 ロングボディ標準ルーフ 標準幅 標準床 3/6人乗 5ドア。
NV350キャラバンのYD25エンジンはハイエースの1KDエンジンに最高出力で11kw(15ps)劣るものの、ビジネスユースのディーゼル車が重要なのはトルク。YD25エンジンは2.5Lでありながら、ハイエースの3.0L 1KDエンジンより56N・m(5.7kgf・m)程最大トルクが大きい上、燃費でも0.8km/L良好な数値です。
ガソリンエンジンは2.0L 直4 DOHCのQR20DEと2.5L 直4 DOHCのQR25DEの2種類。ハイエースは2.0L直4 DOHC VVT-iの1TR-FEと2.7L 直4 DOHC VVT-iの2TR-FEの2種類。
NV350 キャラバン2.0L ガソリンエンジン: QR20DE 最高出力 96kw(130ps)/5600rpm 最大トルク 178N・m(18.1kgf・m)/4400rpm JC08モード燃費 9.7km/L ※バン プレミアムGX(2WD・5AT) ロングボディ 標準ルーフ 標準幅 低床 5人乗 5ドア。
ハイエース:2.0L ガソリンエンジン:1TR-FE 最高出力98kw(133ps)/5600rpm 最大トルク182N/m(18.6kgf・m)/4000rpm JC08モード燃費 9.2km/L ※バン スーパーGL(2WD・4AT)ロングボディ標準ルーフ 標準幅 標準フロア2/5人乗り 5ドア。
ガソリンエンジンでは代表的な2.0Lモデルで、スペックは最高出力、最大トルク共に僅差でハイエースに軍配が上がりますが、燃費面では0.5km/L程、QRエンジンの方が良好な数値を示します。
エンジンの次に目が行くのはトランスミッションです。どちらもマニュアル車は5速ですが、AT車は4速ATのハイエースに対しNV350は5速ATを搭載。ワイド&ローレンジであらゆるシーンで燃費性能を有利にします。
ここまで比較して見て感じたのは、NV350キャラバンは燃費性能、使い勝手、見た目でハイエースの強敵になるのは間違い無さそうです。しかしながら、細かい所を見ると熟成のハイエースも、まだまだ優位に立っている部分もいくつかあります。
例えば、前途のオートエアコンの他、LEDダウンライト、車速検知式集中ドアロック等、NV350キャラバンには無い装備も備えています。
他にも現時点ではNV350 キャラバンではガソリンエンジン車で4WDが選択出来ないと言ったラインナップ上の問題もあり、熟成してきたフルラインナップ体制のハイエースの牙城は簡単には崩せそうに無さそうです。
NV350 キャラバンの代表的とも言えるグレード、 バン プレミアムGX(2WD・5AT) ロングボディ 標準ルーフ 標準幅 低床 5人乗 5ドアと真向ライバルである、ハイエース バン スーパーGL(2WD・4AT)ロングボディ標準ルーフ 標準幅 標準フロア2/5人乗り 5ドア。の価格差は1万4000円、NV350キャラバンの方が低価格となっています。
真向ガチンコ対決になるのは間違えないこの2台。
熟成のハイエースか、先進装備と積載性、あらゆる部分でハイエースの”ネガティブ”な部分を潰して登場したNV350キャラバンか。NV200バネットでミドルクラス商用車の勢力図を変えた日産、今度はLクラス商用車の勢力図を変える事が出来るのか、見守りたい所です。
そして、建設現場、配送センター、あらゆる「現場」で、「どうよ?今度のキャラバン?」と言った話題になるのは間違え無さそうですね。
(井元 貴幸)