富士重工業の技術開発者5名が平成24年度科学技術分野の文部科学大臣表彰において「ぶつからない車を目指した先進運転支援システムの開発」で科学技術賞を受賞しました。
アイサイトは2つのステレオカメラを使ってクルマの前方をコンピューターが監視、走行中のクルマだけでなく歩行者や自転車までも検知し、衝突の危険を感知した場合に自動ブレーキを作動させ、衝突の軽減を図るほか、時速30キロ以下であれば衝突の回避も可能。
他にも前走車に追従走行する全車速追従機能付クルーズコントロールやAT誤発進制御、車間距離警報、車線逸脱警報、ふらつき警報など。衝突回避だけでなく予防安全や運転負荷軽減機能も搭載されています。
これでベース車+10万円という低コストを実現した背景には、スバルが以前より熟成を続けてきたステレオカメラの技術があるからです。
ステレオカメラシステムは3代目レガシィランカスターの99年モデルに装備され、レガシィランカスターADA(ActiveDrivingAssist)として受注生産にて発売を開始。
この発売までに開発開始から10年の年月を要していたそうです。
ランカスターADAに搭載されていたステレオカメラの制御は、車間距離制御クルーズコントロール(50km/h~100km/h)、カーブ警報/シフトダウン制御、車線逸脱警報、車間距離警報の4つ。
同時にランナップされていた装備充実で同一エンジンを搭載するランカスターSより50万円近く高額で、当時新開発の水平対向6気筒エンジンを搭載する上位モデルのランカスター6よりも30万円高額でした。
その後改良と熟成を重ねつつ、フルモデルチェンジを果たした4代目レガシィツーリングワゴンの6気筒モデル3.0Rに3.0R・ADAを設定しました。
この3.0R・ADAには従来のステレオカメラに加えミリ波レーダーも追加し、悪天候でもドライバーをアシストできるように進化。
しかし価格はベースの3.0Rに約70万上乗せと言う超高額な仕様になってしまい、ユーザーにとっては手の出にくいクルマになってしましました。
ADA搭載の最終モデルの価格は2005年モデルの3.0R・ADAで、なんと392万7千円。
ここでスバルはコストを下げる方向へ全力を注ぐようにし、2008年のマイナーチェンジでじは、アイサイトの名称がはじめて登場し、全車速追従クルーズコントロールやプリクラッシュブレーキなど、現行レガシィに搭載されるアイサイトVer2の原型となる装備が搭載されました。
搭載車は2.0Lのターボを搭載する2.0GTアイサイトを設定した他、6気筒モデルの3.0Rには標準装備となった。
ちなみにこの時点でベースとなる2.0GTと2.0GTアイサイトの価格差は21万円。
30km/h以下での完全停止機能は装備されないものの、現行アイサイトとほぼ同機能でした。
2010年に現行型レガシィに搭載されたアイサイト(Ver2)では遂に、30km/hでの自動ブレーキによる完全停止を実現。
ここに「ぶつからないクルマ」が完成しました。
ローマは1日にして鳴らずアイサイトも1日にして成らずですね。
エンジニアたちの並々ならぬ努力の結果が、素晴らしい製品となり、評価された結果が今回の受賞に繋がったと思います。
(井元 貴幸)