トヨタアクアは、登場前にクルマ雑誌でスクープ記事の花を咲かせていましたね。
「名前はプリウスC、先代プリウス(プリウスEX)をベースにしたコンパクトハッチで、軽量化効果で燃費はJ08モードで40km/Lの大台を達成」と度々取りあげられていました。
これほど当たりつつも、微妙に芯の外れたスクープも実に珍しい!
そこでその中身を順に確認したいと思います。
まずスクープされた車名の「プリウスC」は、海外名称でした。トヨタのハイブリッド車の「産みの親」で「育ての親」たるアクア開発責任者の小木曽さんは、次のとおりコメントしています。
このクルマは確かに海外では“プリウスC”という商品名で出す予定です。ただ、それはハイブリッド自体の認知度が海外ではまだ低く、プリウスという車名がトヨタというブランド名より浸透している地域も多い……というマーケティング的な理由によるもの。つくり手の意識では、日本の“アクア”という車名のほうがしっくり来るんです。けっしてプリウスの縮小版をつくったつもりはありませんから。
次に「先代プリウスをベースにした」点も、パワーユニットは先代プリウスと同形式ながら、小型化と効率向上のために7割方新設計しているそうです。
またボディも先代プリウスではなく、ヴィッツをベースにして開発されました。
ただ「軽量化」を達成したものの、バッテリー容量も3割減。モーター利用の制約と空力に不利なハッチバック形状だから、燃費の改善はただ事ではなかったとのこと。
小木曽さんの次のコメントからも、多くのハードルが伺えます。
Bセグメントでは長めで低いスタイリッシュなパッケージでも、バッテリーをシート下に置くことができれば、大人4人がしっかり座れて、トランク容量の障壁もなくなります。ただ、実際に成立させるための課題はたくさんありました。バッテリーを想定どおりに小型化できるか、バッテリーを小型化(=セルを減ら)しても燃費でプリウスに勝てるのか、システムの冷却がうまくいくのか……。
これらを克服した結果、アクアはプリウスよりも安い価格で10/15モードながら40km/Lを達成したのですから、立派だと思います。
今回のアクアで大きく変わった点は、「パッケージング」でしょう。バッテリー容量減と小型化のおかげで、バッテリーユニットを従来の後席背面から座面下へ移設することが可能となり、「荷室の拡大」と「重量バランス&低重心化による走行性能の向上」が実現できたのだそうです。そしてこの低重心パッケージこそが、開発陣のこだわりだったとのこと。
ひょっとするとアクアは先代プリウスの小型版どころか、トヨタの新たな「ハイブリッドパッケージ」の先駆けかもしれませんね。
(拓波幸としひろ)