2012年2月23日(木)~ 3月4日(日)の11日間、AXIS GALLERY 地下1階SYMPOSIA にてJRPA会員による写真展が開催されました。
2011年に開催されたモータースポーツシーンの中から、プロフェッショナル・フォトグラファーが最も印象に残った渾身の作品を通じて、モータースポーツの魅力を広く届けるために開催したとのことです。
会期中には、スーパーGTで活躍中の脇阪選手、伊藤選手、山本選手を迎えてのスペシャルトーショー、国内外の幅広い分野から、第一線で活躍するJRPA会員のベテランフォトグラファーたちによるトークショー、今シーズンもインディカー・シリーズに参戦する佐藤琢磨選手を迎えてのトークショーが開催されました。
そして最終日の4日(日)には、カメラ雑誌「カメラマン」坂本直樹編集長、「CAPA」石田立雄編集長、JRPA小林稔Cマン(あえてその表現を使いたい)、熱田護カメラマンとのトークショーが開催されました。
雑誌作りにおける編集者とフォトグラファーの関わり合いや、フィルムからデジタルへの変遷の苦労話、機材のセッティングや撮影秘術など、あの場でしか聞けない話しがたくさん飛び出しました。
「カメラマン」と「CAPA」と言えば、私がカメラ少年だったころにどちらかは毎月読んでいた雑誌です(実は私の媒体デビューは、高校一年生の時に「カメラマン」に投稿写真が採用されたときなんです)。その編集長と、いつもすてきな写真を届けてくれている名カメラマンのトークショーとあっては行くしかないと、鉛色の空模様にもかかわらず六本木へ出向きました。
会場に着くと、すでに椅子は満席。始まる頃には立ち見が出るほどの盛況でした。
小林Cマン(あえてそう呼びたい)は「CAPA」誌の流し撮りGPの審査員を長くつとめられているし、熱田カメラマンは「NUMBER」誌のF-1特集に使われていた写真に衝撃を受けた「カメラマン」誌編集長が是非会いたいと連絡したことがきっかけと、両氏ともカメラ雑誌とのつきあいは長いようです。
でも実は熱田カメラマンはいわゆる”鉄ちゃん”だったため、学生時代に「カメラマン」誌のコンテストに応募、入選して5000円の賞金を得たのが最初だったらしい。編集部には今も当時の記録が残っているそうです。
そんなエピソードが紹介された後、本題の一つであるフイルムからデジタルへの移行についての話になりました。
小林Cマンのデジタル化はキヤノンEOS DCS3でスタート。130万画素しかないのに200万円もしたそうです。ローンが終わらないうちに急速に性能が良くなっていったことが(泣)とのこと。初期のIT機器にありがちな話です。カメラマンは今はニコンを愛用されています。先日発売されたニコンD4はいたずらに高画素化をしていないところに好感が持て、それが絵作りにもいい方向に作用しているとのことでした。
熱田カメラマンの方はずっとキヤノンだそうです。
1983年から1995年までキヤノンはウイリアムズのスポンサーをしていたこともあり、その関係でF-1に近いカメラマンはキヤノン派が多いのかな?
そういえば、私も鈴鹿GPの時は、特設EOSスタンドに並んだり、貸し出しサービスで借りた超望遠を手にスタンドでワクワクしていたものです。
この頃のウイリアムズは、ナイジェル・マンセル、ネルソン・ピケ、リカルド・パトレーゼ、ティエリー・ブーツェンらの個性的なドライバーを擁していました。ライバルチームにはセナやプロストなどがいて、脇にはミケーレ・アルボレートや”壊し屋”チェザリスなんかもいたし、中嶋悟に続く日本人ドライバーたちにハラハラし、グッドイヤーユーザーとピレリユーザーの明暗がスパイスとなってレースを演出するという、F-1が一番おもしろかった時代にキヤノンはそこにいたのですね。
デビューしてから知ったことですが、当時少年だった佐藤琢磨選手がスタンドで「F-1ドライバーになる」と胸をときめかせていたのもちょうどこの頃でした。
すばらしい作品を一点一点じっと見ながらそのときのことを思い出していたら、ふと、TRUTHと古舘伊知郎のわけがわからないけど楽しかった数々のフレーズが頭の中を流れ始めました。今年は衛生に移るテレビ中継のテーマソングはTRUTHが復活するのだとか。
ついでに楽しさも戻ってこないものでしょうか。
デジタルになって劇的に変わったことは、やはりその場で画像を確認できること。フイルム時代は、たとえばル・マンの写真を撮る場合、昼→夕→夜→朝と状況が変わるなか、経験と勘で撮影。日本に帰って作品を確認、反省し、それを生かせるのが翌年というサイクルだったのが、デジタルになって即確認できるため、失敗をすぐにカバーできようになり、ある意味非常に楽になったとのこと。
両師から流し撮りのプチアドバイスもいただきました。
アマチュアは、メトロノームのようにカメラを振りがちだけど、そうではなく一脚をねじるように振るのがコツだそうです。カメラを振るのではなく、一脚を芯に自分が回るイメージで。
レンズは、広角より望遠の方がカメラの振り角が小さくなるため被写体を止めやすいとのこと。シャッタースピードが500分の1秒より速いとすべてが止まって”置きの写真”になってしまうのでこれが限界のようです。
選ばれたカメラマンだけが手にできるプレミアムギアも見せていただきました。
熱田カメラマンのF-1カメラマンベスト。
小林CマンのスーパーGTカメラマンベストとピットレーンでの撮影の際に着用を義務づけられている防火スーツ。
トークショーの最後はお宝グッズ争奪じゃんけん大会。
展示された写真のプリント、カレンダーなどこの機会にしか手にすることができない数々のプレミアムグッズを狙って参戦!結果は惨敗でした……
話の中で出た「カメラマン」坂本直樹編集長の言葉が大変印象に残りました。
「まだ若かりしころ、”F-1の写真はPKRでアンダーだ!”が常識だったのですが、デジタルになり機材の性能が上がり、それまで撮れなかったものが撮れるようになったのに、自分が編集部に入ったころと写真が全く変わっていないことが気になります。鉄道写真は進化しています。だからクルマの写真も進化して欲しい」。
この言葉にはJRPAの皆さんもぐっときたのではないでしょうか。ちなみに、アンダーなのはその方がクルマが格好良く見えるからなんだそうです。どんな天候下の写真でも暗めなのはこのためなんですね。
皆さんも、デジタル時代ならではの写真にチャレンジしてみては?
今ならアマチュアでも作品を世に発表するチャンスが多いかもしれません。レースシーズンの開幕はすぐそこです。レースクイーンもいいですが、たまにはクルマを格好良く撮りにサーキットへ行きましょう。
坂本編集長を驚かせ、思わず連絡を取りたくなるような作品を発表しましょう。
もしかしたらその中から第2第3の三橋カメラマンが生まれるかもしれません!
(三橋カメラマン=流し撮りGPで98年のチャンピオン取ったあとプロになりJRPAの会員になった方です。)
(Autanacar)