21世紀の未来へ向けて、日本から2台の量販ハイブリッド車が誕生しました!【90年代国産車のすべて/ハイブリッド編】


21世紀の未来といえば、89年公開の映画「バックトゥザフューチャーPART2」では
、主人公が1985年を舞台にデロリアンを改造したタイムマシンで未来へ行く物語でした。ちなみにその未来はいつかというと、実は今から3年後の「2015年」なんです。
現実社会では、映画のようにクルマが空を飛ぶことはなさそうですが、映画公開当時にはなかった電気自動車が街を走り、いくつものハイブリッド車が自動車販売ランクの上位を占めるようになってきました。

そしてその世界初量産ハイブリッド車が、97年に登場したトヨタプリウスでした。「21世紀に間に合いました」という鉄腕アトムのCMが、強く印象に残っています。
画期的だったのが、ミッションを廃止して、全く新しい動力伝達機構に置き換えた点でした。エンジンと2つのモーターの役割を、最大限に引き出すことに成功したのですね。

また、エンジンとモーターの動力伝達や回生蓄電の様子を示すモニターが、直感的にわかりやすかったですね。無音のモーター走行も新鮮でしたし、プルンとかかったり止まったりするエンジン動作も、バッテリーが減ると亀マークが出てくるのも、何やら可愛らしく感じたのを覚えています。
普通に5人が乗れたことも素晴らしかった。また価格もビックリするくらい安かった。当時の奥田社長が「21世紀へGOだ!215万円でいこう!」と赤字覚悟で決めたと聞き及んでいます。


続いて、ホンダインサイトが登場したのが99年でした。

エンジン屋のホンダは、あくまでエンジンがメインで、モーターは付加的な位置づけで開発しました。既存のパワーユニットをそのまま使えるようにすれば、構造も簡単で安く作れると考えたのですね。
またプリウスに遅れを取るなと「燃費世界一」を目標に掲げてきました。NSX譲りのアルミボディを採用して軽量化を計り、2シーターと割り切って空力を低く抑えて燃費向上を図りました。
また燃費や環境性能だけでなく、走りも楽しむのがホンダ流。そこでミッションはMTとATを用意、しかも走りが得意なMTの方が燃費が良いというのも、いかにもホンダらしいところでした。

両車とも、初期の試作車はろくに動かなかったそうで、開発は難題の連続だったそうです。トヨタは「21世紀に相応しい車を創る」、ホンダは「燃費世界一の量販車を創る」、その高く険しい志が、構造が全く異なる2台のハイブリッド車を世に送り出したと感じています。

(拓波幸としひろ)