次世代ダイハツ軽自動車の2気筒ターボは着実に進化中【東京モーターショー】

ダイハツのコンセプトカー「D-X」の心臓部は2気筒直噴ターボエンジン。

 

その2気筒ターボエンジンのスペックは以下のとおり。

排気量:660cc

最高出力:47kW(64PS)/6000rpm

最大トルク110N・m(11.2kg・m)/2000rpm

 

排気量はダミーでしょうが、最大トルクの発生回転が軽自動車としては低めなのが注目点。さらに詳細は発表されていないものの、環境性能にもかなり優れているらしい新世代エンジンです。

 

なんと、このエンジンを使った目標燃費が35.0km/L(JC08モード)というのです。

 

その注目すべき2気筒ターボエンジンは、ダイハツブースの別の場所に展示されています。

排気量が660ccに限定される軽自動車、従来は3気筒が主流でしたが、2気筒化することでシリンダー容積を約330ccへと拡大することで「ゆったりと伸びやかな膨張」をさせることがエネルギー効率には有利とのこと。一方で、振動的には2気筒は厳しいのが事実で、とくに「日本で主に使われる30km/h前後の速度域では、どんな2気筒でもエンジン振動は厳しいのでは」というのが開発者の弁。

 

もちろん、この2気筒エンジンには一次振動対策としてバランサーが備わっていますが、それだけでは特定回転域の振動を気にせずに乗れるようになるのは難しく、ボディやエンジンマウントなど複合的な要素での対策が必要とのこと。とはいえ、2気筒には前述したように独得の振動があり、そのビート感をうまく演出すれば「D-X」のようなクルマにマッチするかもしれません。

 

ちなみに、このエンジンは左右のピストンが同じように上昇下降する360度クランクを採用しているということで、その点でいうと高回転域は得意ではないと考えるのが一般的。ですが、最大トルクの発生回転が2000rpmと低く、またCVTとの組み合わせを前提としていることから、高回転を楽しむというものではなく、あくまで効率重視なのでしょう。

 

またターボというとスポーツ性を期待してしまうかもしれませんが、ダイハツの2気筒エンジンが過給器を備えているのはEGR(排気再循環)のため。極端にいえば新気ではなく排気を押しこむためのターボというわけ。

 

 

さて、この2気筒ターボエンジンは前回の東京モーターショーでも展示されていたわけですが、そこから大きく変わっていないということは、かなり実用化に近づいている証。もちろん、スパークプラグの放電に高周波を与えることで複数の細かい、まるで霧のようなスパークを実現するという「アクティブ着火」システムの新採用など着実に進化も遂げています。

 

 

エンジン内部の動きが確認できるカットモデルで、そのピストンやバランサーの動きを見ていると、近い将来の軽自動車のビート感あふれる走りが想像できるというものです。

 

 

(山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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