フリードハイブリッドは、目の肥えたダウンサイザーにオススメです!【ホンダフリード&フリードスパイクハイブリッドのすべて/開発ストーリー編】


最近国内ではエコカーとミニバンが大人気・・・というよりも2極化の様相を呈していますよね。ただミニバンの場合、ミドル・コンパクトクラスのハイブリッド車は、300万円コースのトヨタプリウスαしかありません。「ホンダが200万円コースでフリードのハイブリッドを売り出せば、ヒット間違いなし!」と短絡的に考えていたのですね。でも開発ストーリーを読み進めたら、何やら開発責任者の安木さんから「ハイブリッドにすれば、いいってモンじゃない!」とお叱りを受けたような気がしました。

開発ストーリーの冒頭に「ダウンサイザー」なる聞き慣れない言葉があります。これは買い換え時に「今までより小さいクルマ選ぶ人」を意味しており、実はフリードの購入ユーザーに多いとのこと。要するに、目の肥えたユーザーが多いという訳です。
そこで安木さんは「フリードを日本一のファミリーカーにしたい!それも販売数ではなく満足度で日本一!」を目標に掲げました。そしてフリードハイブリットは、上級車格と比べても遜色のない「静粛性と乗り心地」と、他の追随を許さない「低燃費」の実現を目指して開発に入っていったのです。


ただ従来のセオリー通りに進めると、矛盾が出てきます。「静粛性と乗り心地」の実現には重量とコストがかさむし、「低燃費」には軽量化が欠かせないからです。
ここで開発陣は、ハイブリッドの特徴を最大限活かす方策に打って出ました。ハイブリットなら、モーターアシストによってエンジン回転を低く抑えることができるため、静粛性と低燃費の両立が可能です。またバッテリー搭載に伴う重量増と剛性向上、低重心化を、乗り心地や快適性の改善に向けてチューンしていきました。
ちなみにメカニカルノイズが減少して静粛性や快適性が向上すると、今度は風切り音や外界音などが気になりだすというから悩ましい~。そのためフロントに遮音ガラスを奮発するなど、細部にわたって対策を施したそうです。

更にここで意外だったのは、パワーに関する英断でした。フィットハイブリットでは、ガソリン仕様を上回る「燃費とパワー」を備えていました。しかしフリードハイブリットでは、なんとガソリン仕様よりもパワーが劣ることを許容し、その分トルクを太くして「燃費と静粛性」を優先する道を選んだのです。そしてそのために、わざわざエンジンまで新たに開発したのですから、正直驚きました。


フリードはハイブリット化によって、ダウンサイザーが求める「燃費+静粛性+乗り心地」のニーズを達成しました。更に見事なのは、ハイブリッドユニットを搭載しながらも、ガソリン仕様と同等の居住性と使い勝手を実現してきたことで、まさにフリードのトップグレードに相応しい仕上がりだといえるでしょう。

IMAシステムは誕生以来、12年が経過しました。フリードでは「ハイブリッドでどこまでできるか?」という可能性の追求ではなく、「燃費の改善と快適性の向上のためにハイブリッドを使いこなす!」という目的達成型の開発を志向したのですね。「弱味は強み、強みは弱味」と言いますが、まさにIMAシステムの強味と弱味を知り尽くし、持ち味を最大限に活かし切った開発だと感じ入った次第です。

(拓波幸としひろ)