謎のEVヴィッツを作ったのは未来(?)のトヨタマン

10月30日の日曜日、全国で様々なイベントが開催される中、千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイでは「全日本 袖ヶ浦 EV50kmレース」が開催されておりました。

 

シリーズチャンピオンも決するという重要なEV50kmレースの最終戦。その決戦の場に、まるでノーマルのヴィッツが紛れ込んでいました。

 

いえいえ、紛れ込んでたというのは冗談で、ノーマルのように見えるこのヴィッツRSはガレージ久里浜BS☆VITZとネーミングされたコンバートEV。コンバージョン仕様といってもエントリーリストによればリチウムイオンバッテリーを搭載しているとありますから、かなり本気モードの一台。

そう思うと、このノーマル然としたルックスは、改造EVではなく、市販を意識したものではないかと思えてきます。

リチウムイオンバッテリーを積んでいるだけで市販仕様と考えてしまうのも飛躍しすぎかもしれません。ですが、エントリー名になっている「ガレージ久里浜」というショップは検索しても見つかりませんから、おそらく架空のガレージ名なのでしょう。

となれば、横須賀市 久里浜という場所、トヨタ車にゆかりの深い、自動車会社が浮かんできます。

 

 

 

それは、関東自動車。

エントラントやチーム代表者の名前で検索すれば関東自動車の関係者として他のイベントに参加しているのが確認できますから、同姓同名の可能性はあるとはいえ、このEVヴィッツと関東自動車の関係が浅からぬものであると考えるわけです。

そういった関係からか、かなり秘密な一台のようで、詳細は隠されたマシンではありますが、ピットで確認した範囲でいえば、駆動系はベース車のMTを活かしたコンバージョンで、フロント駆動。そして肝心のバッテリーはラゲッジスペースに収まっているだけで、リアシートもそのまま使えるほど室内スペースを犠牲にしていません。

 

さて、予選もキャンセルし、決勝レースも淡々と走ったEVヴィッツ。これだけの情報だと見るべきものはないように思えます。しかし、このクルマのポテンシャルはかなりのものではないかと予想されるのです。

ラップタイムが異なるので単純に比較はできませんが、同じレースに出ていた日産リーフは50kmのレース走行でバッテリーを使い切ってしまうといいます。つまり50kmのレースを走れるということは、街乗りでいえば100km程度の走行が可能なポテンシャルを持っていると想像できるのです。

つまり、ヴィッツのラゲッジスペースに収まっているのは、かなりエネルギー密度の優秀なバッテリーを搭載しているのでは、と想像できるわけです。

 

ところで、関東自動車といえば既報の通り、来年にはセントラル自動車、トヨタ自動車東北と合併し、トヨタ自動車東日本としてコンパクトカーの開発・製造拠点として歩み始めると言われています。また話題のコンパクトハイブリッドカーの生産を担当するとも言われています。

そうした大きな流れを踏まえて、このEVヴィッツを見れば、そのポテンシャルを考えれば、様々な期待が膨らんできませんか?

(山本晋也)

 

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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