12月3日、日産から電気自動車リーフが発表された。今年の4月には三菱からi-MiEVも一般発売が開始されており、「電気自動車大国、日本!」と誇らしげになる気持ちもあるが、海の向こうに目をやれば、アメリカも負けてはいなかった。リーフの発表から遡ること2ヶ月前の10月、アメリカの新興電気自動車ベンチャー「テスラ」が初の日本ディーラーを東京・青山に出展していたのだ。
このテスラが第一弾としてリリースしているのは、ロータス・エリーゼのコンポーネンツを利用したスポーツカー。0-100km/hは3.7秒という怒涛の加速力と、300km走行が可能という巡航能力を併せ持つ。そのぶん、1300万円と無理めなプライスを掲げてはいるのだが、日本ディーラーの方に聞いたところ「売れすぎて困っている」のだとか!
ところが、日本上陸を果たしたテスラの影響で、タバコの売り上げが減少傾向にあるという。そんな話を聞いたのは、テスラ青山店のとなりのタバコ屋さん。都会的な青山の街の隅に佇む、三丁目の夕日的な昔ながらの……という風情なのだが、そのオジサンがテスラを取材中の我々にいきなり話しかけてきたのだ。
「おいおい、兄ちゃん、そのクルマ動かしてくれよ~。そこにクルマを停められると、困るんだよ~」
確かに、我々は機材車をタバコ屋さんの前に駐車していた。路肩が広いので、停めやすかったのである。
「どうせアレだろ、このクルマ屋の取材に来たんだろ!?」
図星である。どうやら、このタバコ屋さんの前の路肩は、テスラ青山店がオープンして以来、ひっきりなしにやってくる取材陣やお客さんの駐車スペースと化しているようだ。我々は非礼を詫び、すぐにクルマを移動することを約束する。
「おう、そうしてくれ。その隣のビルの前なら、朝まで停めてたって構わねぇからよ」
けっこう、自己中心的なオジサンである。
「まったく、このクルマ屋ができてから、俺の店の売り上げが落ちてしょうがねぇよ。少なく見積もっても、20%はダウンしてるよ。商売上がったりだよ!」
そう言い残して、オジサンは自分のお店に帰っていった。「電気自動車のおかげで、タバコの売り上げ20%減」のタネ明かしは、こういうことである。
しかし、よく考えると、このテスラ青山店がオープンしたのは10月。ちょうどタバコの大幅値上げが重なった時期であり、売り上げ減少はそっちのほうが原因なのでは?という気がしなくもないのだが、オジサンの勢いに圧倒された我々はそんな疑問をグッと呑み込んだのであった。