外せるシートは日本人にどう映る?【VWゴルフトゥーラン】

ゴルフトゥーランは、全長4.4mという、短めの寸法のなかで7人乗りを実現したモデルです。

ゴルフと名乗るからには、ある程度のコンパクトさを特徴とするクルマづくりがなされます。そんなスペースでもきっちりと7人が乗車できるように、アップライトに座らせることが必要なので全高は1670mmと高めの設定になっています。主にルーフの高さを大きなグラスエリアとすることで実現していて、外から見ても室内の広さがわかりやすいスタイルとしています。

ヘッドランプなどは明らかにVWファミリーの造形ですが、ゴルフより厚みのあるもので専用設計となっています。この横一文字のグリルは、ジョルジョット・ジウジアーロによる初代ゴルフのデザインにさかのぼり、モチーフを継承したものでもあります。

VWのデザインは、一時期アウディと同様に大きな口を持つカタチになろうとしていました。ボディはさらに抑揚をつけた方向になるところだったようです。それはシロッコのコンセプトモデルのアイロック・コンセプト(IROC Concept、パリモーターショー2006 )で予告されていたのですが、デザイン部長にワルター・デシルバさんが就任した時のこの方針をやめ量産のシロッコは小さなグリルで登場しました。

大きな口がアウディと差別化しにくいことは一番の理由でしょうが、それ以上に初代ゴルフのようなVWのもつ道具としての価値に立ち返ったデザインに戻したのです。そしてその後に登場した新型ゴルフや新型ポロなども、一連の新しいVWフェイスを確立するようになったのです。シャランやトゥーランもまた同じトレンドのなかで生まれてきました。

エンジンはシャランと同様の1.4Lスーパーチャージャー&ターボですが、出力はシャランよりやや低めの103kW(140ps)/220Nm。面白いのは同じエンジンでも、シャランとは過給のチューニングによって車格を変えている点です。これまで排気量を含め細かくエンジン作り分けてきたものを、セッティングの違いで差別化できることを示しています。

3列目シートはフルフラットになり、3席ある2列目シートをそれぞれ完全に取り外すことも可能。圧倒的な広さを持つスクウェアな空間を作れますが、さらに2列目シートは左右の2座席だけをゆったり設置するなどアレンジは自在です。多人数乗車が目的でなくても、ゆったり乗りたい人にもいいようです。

メルセデス・ベンツやBMW、アウディは強烈なグリルを据えることで、グレードによって異なるニュアンスを表現できるようになっています。対するVWはシンプルなグリルとヘッドライトのコンビこそがVWらしさであるために、ともすると他のブランド以上に「どれも同じ顔」と思われてしまう傾向もあります。

これからグレードごとにどんな個性を持たせるのか? その辺が興味津々のポイントでもあります。

(MATSUNAGA, Hironobu)