比べてわかったセダンのインパネ! スイッチが多けりゃ高級ってわけではない!!【CAR STYLING VIEWS 11】 

先週のスポーツカーに引き続きセダンのインパネを特集してみましょう。というのも今週レクサスの次期GSが発表されたからなんです。ではそのレクサスから見ていきましょうか。

レクサスGS350(次期モデル) インパネでもっとも注目されるのが、レクサスとして新採用された中央の時計です。高級車の証というわけでもないですが、高級車ではわりと時計をインパネデザインに取り込むクルマが少なくありません。インパネのデザインとまったく独立した時計設置が多い中、レクサスはレジスター(エア吹き出し口)とのコンビでデザインされています。おそらくはこのスタイルをレクサス一連のアイデンティティとして行くのではないでしょうか。全体を見渡せば、大きなセンターモニターの見やすい位置への設置は、クルマとして必至の方向性で、モニター前提のデザインとせざるを得ないところがあります。それが、他のモデルと似通ってしまう一因にもなっているのでしょうか。

全体的に高いダッシュボードのよって適度に解放感を抑えながらもゆとり感をデザインしてセダンとしての安堵を表現。それでいてドライバーにとっては情報を凝縮させたメーターパネルをしっかりと包むメーターフード、機能をまとめ込んだステアリングとその周囲のスイッチ、そしてタイトな位置関係にあるシフトレバーなど、ドライバーだけが触れる部分の演出によってタイトなスポーティさを表現しているように見えます。パッセンジャーとドライバーの温度差を感じさせない、新たな試みともいえます。

BMW5シリーズ 操作性を高めるためにセンタークラスターを手前に出しながら滑らかにダッシュボードを造形。大型モニターを高く配置し見やすさやフロントウインドウへの映り込みを防ぐためには大きなカバーが必要で、必然的に上面がモニターより突出したダッシュボードとなっています。モニター表示されるさまざまな機能を、センターコンソールのダイヤルで操作することを最初に提案したのがBMW。よってインパネはきわめてシンプルに見えます。

 

アウディA5スポーツバック 操作系をすべてドライバーサイドに囲ってまとめることで、ドライバーにとってのタイトな空間を演出しています。機能をひとくくりにしたことで、ドライバー以外のパッセンジャーにはダッシュボードをはじめとする、インテリアの材質感や造形そのもので落ち着きを表現しています。

 

メルセデス・ベンツEクラス 必要最小限のコンパクトなダッシュボードにメーターパネルが付けられた、メルセデス・ベンツの伝統的なダッシュボード・デザインをそのまま継承し、新機能であるモニターを取り込む考え方。エクステリアに併せたやや角ばって力強いアクのある造形をあえて採用しているように見えます。メーター内には大きな時計を配置。これもメルセデスの伝統。

 

ホンダ・アコード センタークラスターの扱いやすさ、モニターの見やすさとフロントウインドウへの反射の配慮と、抱える課題のいくつかはどのメーカーも同じ。ダッシュボードの奥行ある造形は、メーターパネルにも表現される、アコードのインテリアのテーマにも感じられます。センタークラスターを細くするのは、レジェンドど同様で他にはない特徴かもしれません。

 

日産フーガ センタークラスターの上向きのパネルは、手の甲をそらさずに自然に操作できる形を追求。4代目シーマ(2001年)や3代目プリメーラで試みられたもので、モニターの近くに操作パネルを設置することで操作性を高める狙いも持っていました。また木目パネルは周囲を濃くすることで、立体感を表現しています。

特に高級セダンのインパネは、地図などを表示するモニターの採用によってそのデザインを大きく変えることになりました。併せてモニター表示だからこそできるようになった、階層分けによる操作やモニターに併せて操作がしやすいマルチ・コマンダーの採用など多くのメリットも生んでいます。

しかし、ドライバーを含むパッセンジャーにとってどんな空間であるべきなのか、については、以前ほどメーカーの独自性は感じられないようです。高級セダンはまだまだ機能の多さにおされて、独自性が生まれていないというのは現状なのでしょうか?

(Matsunaga, Hironobu)