レギュラーで圧縮比14のガソリンエンジンを搭載した新マツダ・デミオは6月デビュー【ひととくるまのテクノロジー展】

クルマに、特にエンジンに興味がある人にとって、「圧縮比が14」というと、フツウなら何かの間違いか別の圧縮比のことかな、と思うくらいじゃないでしょうか。

これまで圧縮比が高いと言っても12くらいが一般的な最高くらいで、それも、かなり特殊なスポーツカー用のエンジンだったりするわけで、実用車には手間隙コストがかかって採用されることはまずなかったんですよ。

しかも、圧縮比を上げるということはノッキングが発生するので、それを抑えるためにハイオクガソリンを入れるのが一般的。つまり、1割近く高い燃料を使うようでは、2割以上は燃費を良くしてあげなきゃ燃料代は安くならないことになるわけです。

で、今回発表された次期デミオ用のスカイアクティブエンジンはレギュラーガソリンであり得ないほどの高い圧縮比である14を達成したんです。

どうしてそんなに高い圧縮比が達成できたか?を開発者の岩本朗さんにお聞きしたところ、燃焼の最適化によるものだそうです。つまり、燃焼室の形状や燃料噴射などを最適化させてできたこととのこと。なにか特殊なデバイスや材料が発明されてそれを付けたから、という訳ではないんです。

最適な燃焼室形状のためキャビティ(くぼみ)付きピストンが特徴的です。
パワートレイン開発本部主幹の岩本朗さん。

 

 

レオナルド・ダ・ヴィンチの残した内燃機関の図には、まだ“圧縮する”という概念がなく、常圧で燃料を燃やして空気が膨張する力を利用するだけだったそうですが(鈴木孝さんの“エンジンのロマン”に書いてあったと思います)、混合機を圧縮すると効率がいいというのは、19世紀になってからのようです。

それ以来、ガソリンエンジンの圧縮比を高める研究はなされたんでしょうけど、今回やっと14という数値になったんですね。スゴいです。

また、ガソリンエンジンの燃費を悪くしているポンピングロスを小さくするため、“ミラーサイクル”を採用しています。

ユーノス800の世界初量産車用ミラーサイクルエンジンを開発した畑村耕一さんは圧縮しない圧縮比<膨張比のエンジンはミラーサイクルと呼んでほしくないとおっしゃってますが、まあ、トヨタのようにアトキンソンサイクルと呼んじゃうよりもいいですよね。

この辺のことは畑村さんにお会いすることがあったら確認したいと思います。

新型デミオは「2011年前半に発表」とあるので、6月に登場するんでしょう。

燃費は30km/Lを達成したそうです。

楽しみですね。

(小林和久)

この記事の著者

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小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務めた。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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