プリウスα搭載の2種類のバッテリー、リチウムイオンはニッケル水素よりスゴいのか?

 

プリウスαバッテリーが5人乗りと7人乗りで異なるものが採用されているというのは既報のとおり。

5人乗りにはプリウス同様のニッケル水素電池が、7人乗りにはトヨタのハイブリッドカーとしては初めてのリチウムイオン電池が使われています。

 

このバッテリーの違いはスペック表には以下のように記されております。

 

リチウムイオン電池は、56個 容量5Ah(1時間率容量)

ニッケル水素電池は、28個 容量6.5Ah(3時間率容量)

 

乗車定員が異なるといっても基本敵は同じクルマですし、もちろんエンジンやモーターのスペックも共通。なので、電池についても似たようなスペックでなければおかしいのですが、このスペック表の表記からは、かなり異なるものに見えてきます。

 

まず個数の違い。数だけをみるとリチウムイオン電池のほうが2倍積んでいるように見えますが、これ実は電圧は同じということを示しています。

 

スペック表には書いてありませんが、ニッケル水素電池の電圧は7.2V(ボルト)で、リチウムイオン電池は3.6V。

それぞれ28個、56個を積んでいるということですから、掛け算をすれば

7.2V×28=201.6V

3.6×56=201.6V

という具合に、種類は違えどバッテリーパック全体としは同じ電圧ということなのです。

 

さて、もうひとつ容量 Ah(アンペアアワー)という項目があります。

電圧は同じ201.6Vなのに、こちらは違っているように見えますが、そもそも測定方法が異なります。

 

容量(Ah)というのは、満充電の状態(解放電圧)から、空になるまでの様子を示したもの。空といっても、これ以上は電気を取り出せないというところ(放電終端電圧)になるまでの時間と電流(A:アンペア)をかけたものになります。

 

一般的に考えれば、ニッケル水素電池では8.4Vからスタートして6.0Vになるまでを見ているでしょうし、リチウムイオン電池の場合は4.2Vからスタートして2.7Vを終端としていることでしょう。

 

このように計測基準が異なるので、単純比較はできないということです。

 

また( )内にある時間率容量というのは、その計測における放電時間のこと。

 

3時間というのは、容量の1/3の電流を放電させて3時間で出し切ったということであり

1時間というのは、容量の電流を放電して1時間で出し切ったということ。

 

電池の種類が異なるので単純比較はできませんが、同じ容量であれば、この時間が短いほうがタフなバッテリーということを示す項目が、この時間率容量。この要素が異なることからも、容量を単純比較はできないといえそうです。

 

 

さて、余談めきますが、電圧と容量をかけ合わせると総電力量となります。

よくEVでは目にするスペックで、日産リーフでは24kWh、三菱アイ・ミーブでは16kWhという数字で表記されているものですね。。

 

というわけで、プリウスαでも計算してみると、5人乗りのニッケル水素電池が約1.31kWh、7人乗りのリチウムイオン電池では約1.03kWhといった結果に。

もちろんハイブリッドカーの場合はコンセントから充電しませんし、バッテリーの使い方も違うのでEVと比べるのはおかしな話なのは当然。むしろ最小限のバッテリーサイズで省燃費効果につなげるのが最近のトレンド。バッテリーの総電力量が小さいことは評価ポイントだったりするのであります。

 

というわけで、プリウスαのバッテリーのスペックをざっと見てみましたが、電圧は同じだし、総電力量も似たような数値という当然の話なのでありました。

 

(山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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