2020年は猛ダッシュの年。トヨタのEV車両が見えてきた!

■ライバルとは違う意外なラインナップ

●身近な移動を支えるツールとしてのEV

2019年時点で量販EVをラインナップせず、テスラや日産に先行を許しているトヨタ。しかし来年2020年には、そうしたライバルを追い落とすべく、猛ダッシュが始まりそうです。6月初旬に行われた「EVの普及を目指して」というプレゼンテーションから、具体的な登場車種などを追ってみましょう。

●追撃のノロシは中国のC-HRから

実はトヨタは、デビュー作となるはずのEVをすでに公開しています。それはC-HRのEVバージョン。ただし残念ながらこのクルマは日本向けではなく、お隣中国向けです。正確にはC-HRに加えて、その兄弟車であるイゾラにもEV仕様が登場します。

タイミングとしては4月に開催される北京モーターショーのタイミングが濃厚。バッテリーの種類や容量など詳細はまだ公表されていませんが、プラットフォームはEV専用のe-TNGAではなく、現行TNGAの拡張版が用いられると思われます。

●日本では超小型EVでスタート

肝心の日本はどうなるのかというと、意外や意外、2人乗りの超小型EVがこけら落としとなります。かつてトヨタにはiQというマイクロカーがありましたが、今度のEVはそのiQよりも一回り小さい、全長2,500mm、全幅1,300mmというサイズ。近所への買い物や通勤など、あえて短距離の移動に用途を絞り、その分価格を抑えたモデルとなるはずです。

登場のタイミングですが、7月からの東京オリンピックよりも前、早ければ5月にも登場するのではないかと期待されます。

●セグウェイのような立ち乗りタイプも

2020年に登場するのは1台だけではありません。なんとセグウェイのような立ち乗りモデルも登場します(トヨタはこれを「歩行領域EV」と呼んでいます)。セグウェイは操縦にコツがいる2輪タイプでしたが、トヨタが出すのは3輪タイプなので、お年寄りでも安心です。

トヨタによれば、このEVには、歩行者に自動で追従する通称「ポチ機能」が検討されているとのこと。高齢者の散歩に無人で付き添って、急な坂道だけこのEVに頼るといったレクリエーション的な使い方もできそうです。

最高速が時速2、4、6、10kmと切り替え式になっている点も注目です。現在歩道を走れる電動シニアカーなどは、最高速度が時速6kmに制限されていますから、時速10kmを可能にするにはなんらかの法改正が必要と思われます。水面下で道交法の改正などが議論されているのかもしれません。

●座り乗りタイプも遅れて発売

歩行領域EVには続きがあって、翌2021年には、座り乗りタイプと車いす連結タイプが登場予定です。車いす連結タイプは、手押しの車いすに取り付けて電動化するもので、ショッピングモールや観光地でのレンタルが想定されているとのこと。車いすを利用される方にとっては、便利なサービスとなりそうです。

●社会インフラとしてのEV

いかがでしょうか。EVと聞くと、日産リーフやテスラが思い浮かびますが、トヨタのEVの船出は、それとはやや違う形となりそうです。

すでにトヨタは、MaaS(サービスとしてのモビリティ)を推進するブランドとして、ソフトバンクといっしょにMONET(モネ)を立ち上げました。いっぽう定額支払いで手軽にトヨタ車に乗れるKINTOというサブスクリプションサービスも運用中です。

こうした姿勢から今回のEV戦略を見てみると、トヨタはEVを旧来の顧客層に売り込む商品ではなく、移動を望むすべての人のために、シェアリングやサブスクの対象にしたいと考えているのかもしれません。

ちなみに2020年には、トヨタは期待される全個体電池の実用化にもメドをつけるはずですし、MONETが提唱する新しいプラットフォーム「eパレット」も試験運用が始まるはずです。新しいモビリティの誕生をわくわくしながら待つことにしましょう。

(文:角田伸幸)

この記事の著者

角田伸幸 近影

角田伸幸

1963年、群馬県のプロレタリアートの家庭に生まれる(笑)。富士重工の新米工員だった父親がスバル360の開発に立ち会っためぐり合わせか、その息子も昭和期によくいた「走っている車の名前が全部言える子供」として育つ。
上京して社会人になるも車以上に情熱を注げる対象が見つけられず、自動車メディアを転々。「ベストカー」「XaCAR」で副編集長を務めたのち、ポリフォニー・デジタルにてPlayStation用ソフトウェア「グランツーリスモ」シリーズのテキストライティングに携わる。すでに老境に至るも新しモノ好きで、CASEやパワートレインの行方に興味津々。日本ディープラーニング協会ジェネラリスト検定取得。大好物は豚ホルモン(ガツとカシラ)。
続きを見る
閉じる