2019年のD1GP、注目は復活した悪童と新鋭女子選手!?【D1GP ALL STAR SHOOT-OUT】

●9年ぶり(本人談)に復帰した中村選手は今期のダークホース?

「面倒くさいヤツがもどってきた」。そう思っているD1GPトップ選手は多いでしょう。3月下旬にお台場で開催されたD1GP ALL STAR SHOOT-OUTに参加した中村直樹選手のことです。今季は2JZエンジンを積んだS15シルビアでD1GPに参戦予定です。

古くからのD1ファンや、コアなドリフトファンならご存じかもしれません。この中村直樹選手、近年のD1GPには参戦していませんでしたが、実際のところ日本でもトップレベルのドリフトの腕を持っているドライバーです。

D1ストリートリーガルでは、2009年、2010年、2014年と3度のシリーズ優勝を果たしているほか、2018年にD1GPのチャンピオンを獲った横井選手にも、2017年にD1GPチャンピオンを獲った藤野選手にも勝ち越しているのです。しかも、ただ成績を残しているというだけではなく、その走りは圧倒的で、特に追走での相手との接近度では他を寄せつけない強さを誇っていました。つまり、それほどの逸材だったということです。

しかし、中村直樹選手のD1GP参戦は約9年ぶり(本人談)。じつはこの選手、以前は素行にやや問題があり、免許取消処分を受けていたことなどもあって、D1GPのような大会にはしばらく出られなかったのです。昨年、免許を取り直し、D1ライツシリーズで規定のポイントを獲得してD1GPライセンスを取れるようになり、今年はひさしぶりにD1GPに参戦できるようになったのです。

中村選手は、素行はあまりよくなかったもののドリフトへの姿勢はとにかく熱心で、免許がなかったあいだも、国内外を問わず、免許がなくても走れるクローズドコースで走っては腕を磨いてきました。また、D1GPにも見学に来て、最新のドリフトテクニックをチェックしていました。大会から離れていた期間も腕が錆びついていたなどということはなく、むしろ腕は上がっていると見ていいでしょう。

その中村選手が、2019年のD1GPには帰ってくるのです。もちろん、D1GPのトップ選手はこの9年間に中村選手以上に厳しい勝負の世界で戦ってきたわけで、昔の戦績がそのままあてはまるわけではないでしょう。しかし、そう簡単に勝てる相手ではないことも事実です。

実際D1GP ALL STAR SHOOT-OUTでは、単走、追走ともに4回ずつ行われましたが、中村選手は単走競技で2回優勝。追走でも1回は決勝まで勝ち上がりました。すでにD1GPの上位で通用することを証明しているのです。

現在のD1GPトップ選手である、横井選手、川畑選手、末永選手、藤野選手、齋藤選手らにとっては、強敵がまたひとり増えたというわけです。チャンピオン候補の筆頭とまではいかない気がしますが、2019年のD1GPシリーズではこの中村直樹選手が台風の目となるかもしれません。

さて、このD1GP ALL STAR SHOOT-OUTでは、もうひとり、思わぬ活躍をした選手がいます。下田紗弥加選手です。

D1GPの下部カテゴリーであるD1ライツシリーズでは、昨年、高木美紀選手が最後までチャンピオン争いをしました。それもあって高木選手は日本の現役女子ドリフターとしてはトップの実力があると思われていました。いっぽう下田選手は昨年のD1ライツシリーズでも開幕戦でポイントをとっただけであとはノーポイント。じつはまだD1GPライライセンスも取得できていません。したがって、このD1GP ALL STAR SHOOT-OUTでも、それほど実力で注目される選手ではありませんでした。

ところが、この下田選手、参加した2回の単走競技では、並みいる強豪ドライバーのなかで、2回とも上位8名に入り追走進出を決めました。しかもドリフトをしながら速さを競うショットガン競技では、1日目に優勝までしてしまったのです! つまり、このコースに関していえば、完全にD1GPドライバーのレベルで戦えていたということです。

この下田選手、ドリフト歴はわずか3年。お台場のD1を観て「自分もここで走りたい!」と思い、すぐにマニュアル免許を取得して(それまではAT限定免許だったそうです)、クルマも買ってドリフトを始め、車楽人アソシエーションというドリフトスクールで教わって、ここに至ったそうです。

よく走っているのは南千葉サーキットという小さいクローズドコース。今回のお台場でいい走りができたのは、駐車場を使った低速コースだったので、比較的走りやすかったということはあるでしょう。しかし、その走りはスピード、安定感ともにあり、リズムもよく、今回の成績がまぐれではないことは一目瞭然でした。

じつは下田選手、昨年D1ライツシリーズに参戦しながら、D1GPライセンスが獲得できるほどのポイントを取得できず、悔しくて悔しくて、シーズンオフのあいだに14、15回も練習に行ったそうです。D1GP ALL STAR SHOOT-OUTでの活躍は、その成果が出たのでしょう。それにしても驚異的な上達のスピードです。

下田選手が開幕戦からD1GPに出てくることはありませんが、いまの実力があれば、そう遠くない時期にD1GPに出てくるでしょう。ひょっとすると、女子選手として歴代最強のドリフトドライバーになるかもしれません。

さて、3月23、24日にお台場で行われたD1GP ALL STAR SHOOT-OUT。4回の追走の大会のうち、なんと3回で末永直登選手が優勝しました(残り1回は横井選手)。じつは末永(直)選手、D1ストリートリーガル時代に、唯一ほぼ完璧に中村直樹選手を封じ込めていた選手だったのです。ひょっとすると、中村選手の参戦は末永選手の初のシリーズタイトル獲得に向けても追い風になるかも?

2019年のD1GPは、6月29、30日、茨城県の筑波サーキットで開幕です。

(まめ蔵・写真提供:サンプロス)

【関連リンク】

D1グランプリの詳しい情報は、D1公式サイト(www.d1gp.co.jp)まで。

この記事の著者

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まめ蔵

東京都下の農村(現在は住宅地に変わった)で生まれ育ったフリーライター。昭和40年代中盤生まれで『機動戦士ガンダム』、『キャプテン翼』ブームのまっただ中にいた世代にあたる。趣味はランニング、水泳、サッカー観戦、バイク。
好きな酒はビール(夏場)、日本酒(秋~春)、ワイン(洋食時)など。苦手な食べ物はほとんどなく、ゲテモノ以外はなんでもいける。所有する乗り物は普通乗用車、大型自動二輪車、原付二種バイク、シティサイクル、一輪車。得意ジャンルは、D1(ドリフト)、チューニングパーツ、極端な機械、サッカー、海外の動画、北多摩の文化など。
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