アニメ「らき☆すた」に出てきたスバル・ヴィヴィオRX-Rって実はこんなに凄いヤツ!

アニメと車というと痛車が真っ先に思い浮かびますが、今回はアニメのシーンに登場する車の話です。

 2007年4〜9月に放映されたテレビアニメ、「らき☆すた」は、その舞台モデルとなった埼玉県鷲宮町(現・久喜市)への聖地巡礼者が激増して鷲宮神社の初詣客が年々うなぎ登りとなったのは、皆さんもご存じだと思いますが、その第6話「夏の定番」で、主人公である泉こなた達が海水浴に行く際に、こなたの従姉妹、成実ゆいが運転したのがスバル・ヴィヴィオRX-Rです(アニメでは青でした)。

ゆいが某漫画(笑)の影響を受けて買ったというヴィヴィオですが、黄色いRX-7に抜かれた途端、性格が豹変してそのまま「頭文字D」のパロディに移行。ストレートでRX-7を抜き去った後、最後は側溝走りでRX-7に勝利してしまうというなんともアニメらしいストーリー展開をするのですが、実はヴィヴィオRX-Rという車は結構凄いヤツなのです。

 ヴィヴィオは1992〜1998年まで生産されたスバルの軽自動車ですが、当時の広報資料によると初代レガシィ、アルシオーネSVXで提案したドライバーズカーを軽自動車に反映させたドライバーズ・ミニセダンという発想で誕生しました。

つまりレガシィのポリシーをスモールサイズに凝縮したのがヴィヴィオというわけですね。

パッケージングはドライバー中心で考えられられました。これはマーケティングの結果、軽自動車ではひとりドライブの機会が多いという結果が出たかららしいです。
先代のボンネットバン、スバル・レックスコンビと比較すると、フロントシートの位置を40mm後退、座面を21mm下げ、ドライバーズシートは12mm中心に寄せられています。またステアリング位置も21mm後退し、14.5mm下げ、さらにトーボードを10mm後退させ、ペダル位置を13mm外側に移動させるなどドライビングポジションを大きく変更しました。

パーソナル空間の演出という点では、確かにアルシオーネSVXと通じるものがありそうです。

 なおヴィヴィオ=VIVIOという名称は「新しいコンセプトにふさわしいはつらつとしたイメージを込めて名付けた」とされていますが、実は排気量660ccをローマ数字化したVI VI Oだったのは有名な話。

RX-Rはヴィヴィオのハイパワーグレードとして位置づけられ、FFとフルタイム4WDが設定されていました。フルタイム4WDはプロペラシャフト後端にビスカスユニットを組み込んでいました。トランスミッションは5MTのみの設定。

エンジンは直列4気筒のCLOVER-4をベースに新開発されたDOHC16バルブ、インタークーラースーパーチャージャーエンジン、EN07Xを搭載しました。

EN07Xはバルブリフターをオフセット配置してバルブリフト量を増大。またスーパーチャージャーユニットの増速比を1.76として高回転化に対応。最高出力64ps/7200rpm、最大トルク9.0kg-m/4000rpmを発揮。市販車のスピードリミッターをカットした状態でのテストでは、最高速度180km/h以上を記録しています。

 サスペンションは4輪ストラット方式を採用しましたが、これもレガシィの基本ポリシーを踏襲したものです。
フロントはL型ロアアーム・ストラットを採用。ロアアームの前側のブッシュの硬度を高く、後ろ側のブッシュの硬度を低く設定することで、操縦安定性を向上させる横剛性を確保しつつ、前後剛性を低くすることができ、振動、騒音の低減と乗り心地の向上も図ることができます。

RX-Rは操縦安定性を重視してバネ定数2.5kgf/mmのスプリングと、減衰力が伸び側130kgf・0.3m/s、縮み側60kgf・0.3m/sのショックアブソーバーを装備。さらにΦ22mmのスタビライザーを装着していました。またフロントブレーキは13インチサイズのベンチレーテッドディスクブレーキを採用。ステアリングも14.5のクイックステアとなっていました。

リヤはデュアルリンク・ストラット方式を採用。この方式は操縦安定性に影響を与えるトー変化を小さくしながら、やはりフロント同様に前後剛性を低くすることができ、振動、騒音の低減と乗り心地の向上も図ることができます。

バネ定数2.4kgf/mmのスプリングと、減衰力が伸び側120kgf・0.3m/s、縮み側60kgf・0.3m/sのショックアブソーバーを装備。さらにΦ14mmのスタビライザーを装着していました。
タイヤの設定を2WDと4WDで変えていたのもヴィヴィオRX-Rの特徴です。2WD車はドライ路面でのハンドリングを重視して、ブリヂストン・ポテンザRE88(155/60R13)を装着し、4WD車はオールラウンドな特性を持つミシュランMXT(155/65R13)を装着していました。いずれもアルミホイール標準装備。

このヴィヴィオRX-Rが登場した1992年といえば、あのインプレッサが誕生した年でもあります。つまり1992年はスバルにとってアルシオーネSVX、レガシィ、インプレッサ、そしてヴィヴィオとフルドライバーズカーラインナップが完成した年ともいえるでしょう。

そういった意味でも、まるでミニインプレッサWRXのようなヴィヴィオRX-Rですが、実際1993年に世界ラリー選手権(WRC)サファリラリーにグループAヴィヴィオが出場したことがあります。当時スバルワークスでインプレッサをドライブしていた故コリン・マクレー選手が、ヴィヴィオを最高速度200km/hで走らせてセリカよりも前を走り総合5番手となったこともあるほど。マクレー選手へのオーダーはとにかく全開でヴィヴィオのスピードを見せつけることで、結果的にはリタイアしていますが、パトリック・ジル選手は過酷なサファリラリーで完走を果たし、グループA5クラス(グループAで一番排気量が小さなクラス)のクラス優勝を果たしています。

アニメではノーマル(?)のヴィヴィオがRX-7を抜き去りますが、チューニング次第ではこんなシーンも夢ではない。そんなミニモンスターがヴィヴィオRX-Rだったのです。

そんなヴィヴィオも生誕20年。残念ながらスバルは軽自動車の製造から撤退してしまいましたが、スバルの熱いスピリットは今後も続いて欲しいものです。
(ぬまっち)

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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