目次
■車のタイヤとホイールとは
タイヤとホイールは、車の重量を支える、路面からの衝撃を緩衝する、駆動力と制動力を伝える、進路方向を転換・維持するという重要な役割を担っています。
すべての性能や安全、快適性を足元から支えるタイヤとホイールの役割について、解説していきます。
タイヤの役割
タイヤには、車の基本特性「走る・曲がる・止まる」を最終的に実行するという役目があります。具体的には、乗員や車自体の重量を支えながら路上からの衝撃を吸収し、エンジンの駆動力や制動力、操舵力を路面に確実に伝えるという役目です。
機能的には、高速で回転しながら高温や衝撃などを受けるため、高い強度と衝撃を吸収する柔軟性が必要とされ、ゴムだけでなく内部にはワイヤーや繊維などが組み込まれています。
また表面には、スリップを抑えて確実に駆動力や制動力を伝えるため、トレッドパターンという溝が刻まれています。
タイヤの構造と種類
タイヤ内部には強度や耐久性向上を図るため、ポリエステルやナイロンの繊維で形成されたカーカスとスチールベルトが埋め込まれています。またホイールと接合する部分には、ビードと呼ばれる高炭素鋼で強化された部分があります。
乗用車用タイヤの主流は、チューブレスのラジアル構造です。ラジアルタイヤは、カーカスがタイヤの中心から放射状に配置され、それをベルトで締め付ける構造です。カーカスを斜めに交差するように巻いたバイアスタイヤは、耐摩耗性に難があるため最近は採用例が少なくなりました。
そのほか、雪路用のスタッドレスタイヤやパンクしづらいランフラットタイヤなどがあります。
タイヤの表示から分かる情報
タイヤサイズの一般的なISO(国際標準機構)表示には、いろいろな情報が含まれています。例えば「195/60 R14 86S」は、以下を示します。
195(1.) / 60(2.)R(3.) 14(4.) 86(5.) S(6.)
1. タイヤ幅(mm)
2. 扁平率(%) = タイヤ高さ/タイヤ幅 × 100
3. Rはラジアル、-はバイアスタイヤ
4. ホイールのリム径(inch)
5. ロードインデックス:許容荷重コード、タイヤ1本が支えられる最大荷重(※86は530kg)
6. 速度記号:走行可能な最高速度(※Sは180km/h)
ホイールの役割と構造
ホイールの中心は、ハブを介してドライブシャフトに固定され、ホイールにはめ込まれたタイヤに駆動力が伝えられます。
タイヤとともに車体を支えながら駆動や制動、路面からの衝撃などに耐えられる強度と、一方で軽量化も求められます。また機能面だけでなく、その意匠は車のファッション性やドレスアップのキーパーツでもあります。
ホイールの構成は、タイヤを保持するリム、ドライブシャフトに取り付けられているハブとリムを連結するホイールディスクから成ります。構造には、一体成形の1ピース構造と分割構造の2ピース、3ピース構造があります。
ホイールの種類
ホイールの材質としては、スチールとアルミニウム(合金)、マグネシウム(合金)があります。
かつては、安価なスチールホイールが一般的でしたが、最近は軽量でファッショナブルなアルミホイールが一般的になりました。
マグネシウムホイールは、アルミホイールより軽量で走行性能や燃費性能に優れています。しかし高価なため、採用は一部のレース車などに限定されます。
タイヤとホイールは、特別な機構を持つわけではありませんが、車の基本である「走る・曲がる・止まる」の性能と安全を足元から支える重要な部品です。
本章では、さまざまな種類のタイヤとホイールの機能について、詳細に解説しています。
■タイヤの基本構造と機能とは
タイヤは、1. 車の重量を支える、2. 路面からの衝撃を緩衝する、3. 駆動力や制動力を伝える、4. 進路方向を転換・維持する、という重要な役割を担っています。
タイヤの基本的な構造や機能について、解説していきます。
タイヤの役割と機能
タイヤは、車の性能や安全、快適性を実現する重要な部品です。その役割は、車の荷重を支える「荷重支持機能」、スムーズに走り、確実に止まる「駆動・制動機能」、方向を転換維持する「進路保持機能」、快適な乗り心地「緩衝機能」の4つです。
機能としては、高速で回転しながら高温や衝撃などを受けるため、高い強度と衝撃を吸収する柔軟性が必要です。また表面には、スリップを抑えて確実に駆動力や制動力を伝えるため、トレッドパターンという溝が刻まれています。
タイヤ構造の違いによる分類
タイヤには、中にチューブの入ったチューブタイヤとチューブレスタイヤがあり、また内部の補強方法としてラジアル構造とバイアス構造があります。そのほか、氷雪路用のスタッドレスタイヤやパンクに強いランフラットタイヤがあります。
以下は、乗用車の主流であるチューブレスのラジアルタイヤについての解説です。
タイヤの外部構造
タイヤは、特別な機構もなくゴムの固まりのように見えますが、実際は複雑で緻密な構造をしています。外部の構造は、トレッド部、ショルダー部、サイドウォール部、ビード部に大別されます。
・トレッド部
路面と直接接触する部分で、路面からの衝撃や損傷など外乱から内部を保護します。表面には、いろいろなトレッドパターンが刻まれており、グリップ力を確保してスリップを防止する、路面の水を排水するなどの重要な機能を持っています。
・ショルダー部
タイヤの肩の部分で、カーカスを保護しながら路面との摩擦やタイヤ変形で発生するトレッド部の発熱や内部の熱を発散します。
・サイドウォール部
路上からの衝撃を受けて最もたわむ部分で、カーカスを保護しながらスムーズに伸縮を繰り返すことによって、バネのように衝撃を吸収します。
・ビード部
タイヤをホイールのリムにはめ込む部分で、カーカスの端でスチールワイヤの束を包み込み、補強しています。
タイヤの内部構造
ゴムだけでなく、内部にはポリエステルやナイロンの繊維で形成されたカーカスとスチールベルトが埋め込まれています。ホイールと接合する部分は、ビードと呼ばれる高炭素鋼で強化されています。
・カーカス
タイヤの骨格を形成するコード層で、タイヤが受ける荷重や衝撃、重点空気圧に耐える役割を持ちます。材料としては、ポリエステルやナイロン、レーヨンなどのコードにゴムを浸み込ませて成形して数枚重ねています。
・スチールベルト
ラジアル構造のトレッドとカーカスの円周方向に張られたスチールの補強紐で、カーカスを締付けトレッドの剛性を高めます。
どんな過酷な走行環境下でも、タイヤは常に高い強度と適度な柔軟性を確保し、それらを高次元でバランスさせなければいけません。特に最近は、燃費向上技術のひとつとしてタイヤの改良が取り上げられることが多く、タイヤの性能に期待する部分が非常に大きくなっています。
■タイヤの転がりメカニズムとは
タイヤは、路面との摩擦力によって回転して、車を動かします。したがって、タイヤの性能を発揮するためには、あらゆる条件下で路面との摩擦力を適正に保つことがポイントです。
タイヤに求められる基本性能と転がりメカニズムについて、解説していきます。
タイヤに求められる性能
タイヤは、車の性能や安全、快適性を実現する重要な部品です。具体的に要求される性能としては、直進安定性、操縦安定性、ドライ&ウェット走行安定性、低燃費、乗り心地、静粛性、長寿命などが挙げられます。
タイヤは、路面との摩擦力によって回転して、車を動かします。したがって、要求性能を実現するためには、タイヤと路面間の摩擦とグリップ力を上手くバランスさせることが重要です。
路面との摩擦力
濡れた路面や雪路・凍結路のように路面の摩擦力が小さくなると、タイヤのグリップ力が低下して、車の操作性が悪化します。一方で幅広(トレッド面積が大きい)タイヤを使うと、駆動力を効率良く路面に伝えることはできますが、グリップ力が強すぎ、後述の転がり抵抗が大きくなり燃費が悪化してしまいます。
理想的な摩擦力、グリップ力は、パワーが必要な加減速時は強く、定常走行はスリップしない程度に弱くなるタイヤが理想です。もちろん、現時点は運転条件に応じて摩擦力が制御できるような都合の良いタイヤはありません。
さまざまな路面の摩擦係数
路面の摩擦状況を表す代表的な指標は、摩擦係数μ(ミュー)値です。例えば、乾燥した舗装路は0.8~1.0、砂利道0.4~0.6、雪道や凍結路0.05~0.2です。乾燥した舗装路のμ値は高いですが、雨などで濡れてさらに車速が100km/h程度まで上がるとμ値は0.3~0.4まで急落するので、注意が必要です。
タイヤの転がり抵抗
転がり抵抗の要因としては、タイヤの変形や路面の凹凸、タイヤと路面の摩擦、車輪軸部のフリクション、タイヤの回転による空気抵抗などがあります。
平坦路走行ではタイヤの変形が、悪路では路面間の摩擦や路面の凹凸による損失が、転がり抵抗悪化の主因です。タイヤの空気圧が減ると変形しやすいので、燃費悪化の大きな要因になります。
エコタイヤでは、ゴム材料を強化してタイヤのたわみを軽減させたものが多く、これによって転がり抵抗を低減しています。
ハイドロプレーニング現象
水溜りのある路面を低速で走行する場合、路面の水はトレッドパターンによって上手く後方に排出されます。しかし、高速では水の排出が間に合わなくなり、タイヤと路面の間に水膜が発生します。
この現象をハイドロプレーン現象と呼び、タイヤの摩擦力が消失し、車が制御不能になります。
ハイドロプレーン現象を防ぐには、トレッドパターンの溝を大きく深くして、水の排出性を良くすることが効果的です。しかし、トレッド表面の剛性の低下やタイヤノイズの増大など、通常の性能が悪化するので現実的ではありません。慌てず車速を低下させるのが、最良の策です。
スタンディングウェーブ現象
走行中のタイヤは、路面の接触部は変形、路面から離れるとすぐに復元、これを繰り返します。ところが、高速走行では変形の復元が間に合わなくなり、トレッド表面が波打つスタンディングウェーブ現象が起こります。
これによりトレッド表面が剥がれ、最悪の場合はタイヤバーストを起こしてしまいます。タイヤの空気圧が低い状態で高速走行するのは、非常に危険です。
タイヤ性能の重要性を気にしているドライバーは、意外と少ないように思います。
タイヤの性能は向上しているので、普通に運転している限り安全ですが、傷んだタイヤや空気圧の低いタイヤで走行すると非常に危険なことを認識しておく必要があります。
■タイヤの種類とトレッドパターンとは
タイヤは、用途に応じていろいろなタイプのタイヤがあり、またトレッドパターン(溝形状)もさまざまです。現在の主流は、チューブレスのラジアルタイプですが、さまざまな種類のタイヤとトレッドパターンについて、解説していきます。
チューブタイヤとチューブレスタイヤ
かつては、自転車のタイヤのように、内部にチューブの入ったチューブタイヤが一般的でした。最近の乗用車は、ほとんどがチューブレスタイヤです。
チューブレスタイヤは、内部にインナーライナーというゴムシートが貼り付けられ、これがチューブの役割を果たしています。メリットは、釘などが刺さっても、急激な空気漏れを起こしにくく、突然ステアリングを取られることがないので事故防止につながります。また、内部の空気が直接ホイールのリムに接触するので、熱の放熱が良くなります。
ラジアルタイヤとバイアスタイヤ
現在、乗用車の主流はラジアルタイヤです。ラジアルタイヤは、カーカスを構成するコード層が、トレッドの中心線に対して直角に配列されており、タイヤを横から見るとコードが放射状になっていることからネーミングされています。トレッド部にはスチールベルトがあり、タイヤ外周を締め付けています。
バイアスタイヤは、カーカスが斜めに互いに交差するように重ねられて形成されています。柔軟性があって、乗り心地は良いですが、変形が大きく摩耗しやすい、ブレーキ性能が劣るといった欠点があります。
車の高速化に伴い、乗用車用としてバイアスタイヤが使われることはほとんどなく、ラジアルタイヤが主流となっています。
スタッドレスタイヤ
冬季に履き替える氷雪路用のタイヤです。低温でも柔軟性を確保できるゴムを使い、路面と接するトレッドブロックの表面にクルミの皮などを混ぜて粗く仕上げて、表面が摩耗するのを防いでいるものなど、各社が技術競争をしています。また、氷上の水膜を除去するため、表面には細かい切れ目を入れています。
ランフラットタイヤ
パンクしても、つぶれずにそのまま走行できるタイヤです。サイドウォールを厚くして、空気が抜けても潰れない強度にしています。ビードが外れないような構造と、内面に潤滑剤を塗布して摩擦による発熱を防いでいます。
パンクしても車速80km/hで80km程度は走行できます。ドライバーが気付かない可能性があるため、パンクを検知する「タイヤ空気圧モニタリングシステム」を搭載する必要があります。
路面との摩擦力
タイヤのトレッドには、トレッドパターンという溝が刻まれています。その役割は、グリップ力を強くして駆動力と制動力を確保する、転がり抵抗を減らす、横滑りを防ぐなど、走行性能を安定させることです。そのほかにも、放熱性の向上や騒音低減もあります。
主要なトレッドパターンは以下の4種類ですが、実際にはそれらを組み合せてパターンを形成しています。
・リブ型
操縦安定性や転がり抵抗、タイヤノイズに優れています。
・ラグ型
駆動力と制動力、非舗装路の牽引性能に優れています。
・リブラグ型
リブ型とタグ型を組み合わせたもので、両者の特徴を持ち合わせています。
・ブロック型
積雪路、ぬかるみなど悪路用として使われます。
新車を購入した時に標準装備のタイヤを履き替える人は少ないと思いますが、数年後に新品タイヤに交換するときには、標準タイヤでなく、車の使い方に合致したタイヤに履き替えれば、より楽しい走行を楽しむことができるのではないでしょうか。
■タイヤノイズとは
車外騒音規制が強化される中、車外騒音の要因のひとつであるタイヤノイズは、電動化が進む中で目立ちやすくなっており、タイヤノイズの低減は課題のひとつとなっています。
ノイズ軽減技術として、吸音材を利用した「インナータイヤアブソーバー」と、レゾネーターを利用した「ノイズリデューシングホイール」について、解説していきます。
3つのタイヤノイズ
タイヤノイズには、大別して3種類あります。
・路面の凹凸をタイヤが拾い、振動となって車体を震わせることで発生するロードノイズ
・タイヤのトレッドパターンにより、溝の中の空気が圧縮・放射されて発生するパターンノイズ
・タイヤの中の空気が振動することによって発生する空洞共鳴音
ロードノイズやパターンノイズは、車体側の改良やタイヤの構造や素材、パターン配列の改良で対応するのが一般的です。しかし、空洞共鳴音はそれだけでは抑えるのは困難です。
空洞共鳴音は、路面の段差や突起を乗り越える際に、タイヤの変形によってタイヤ内の空気が振動し、共鳴が起こる現象です。太鼓の膜を叩けば、中の空気が振動してより大きな音になる現象に例えると、分かりやすいと思います。
以下に、空洞共鳴音を下げる2つの技術を紹介します。
インナータイヤアブソーバー
空洞共鳴音を低減させるために、タイヤメーカーが開発したのが「インナータイヤアブソーバー(振動吸収装置)」です。
タイヤ内部に吸音材のポリウレタンスポンジを貼り付け、空気の振動を吸収低減します。発泡剤を混ぜたスポンジ状のポリウレタンは、音の反射を低減する吸音効果に優れており、アンダーフロアの騒音対策の吸音材としても使われています。
ダンロップがインナータイヤアブソーバーを初めて採用し、現在のところ日本で採用しているのはダンロップのみです。
一方、欧州タイヤメーカーのピレリやコンチネンタル、ミシュランは、それぞれ名称は違いますが、同様の技術を高級車用として採用しています。日本メーカーよりも欧州メーカーの方が、積極的に採用しています。
ノイズリデューシングホイール
吸音材を使うのではなく、ヘルムホルツ型レゾネーターで空洞共鳴音を減少させるのが、ホンダの「ノイズリデューシングホイール」です。トヨタも同様の技術を採用しており、「ノイズリダクションホイール」と呼んでいます。
ノイズリデューシングホイールでは、タイヤとホイールの間に中空構造の樹脂製のプレート(レゾネーター)を挟み込んでいます。樹脂プレートには、ホイールリムに沿って連通穴があけられています。
レゾネーター容積と貫通穴を最適化してヘルムホルツの原理によって、プレート内部とタイヤの空気を共振させて、共鳴音を打ち消し低減しています。
エンジンを搭載しないEVやエンジンが停止することが多いHEVやPHEVでは、今までエンジン音や排気音でマスクされていたタイヤノイズが目立つようになります。
今後、段階的に燃費規制とともに車外騒音も強化される計画なので、タイヤに対して低燃費ととともに低騒音の要求がさらに高まります。
■タイヤの空気圧監視システムとは
米国や欧州で装着が義務化されているTPMS(Tire Pressure Monitoring System = タイヤ空気圧監視システム)は、タイヤの空気圧低下を検出してドライバーに警告するシステムです。安全だけでなく、燃費向上にも効果的なことから、注目されています。
TPMS法制化の経緯
TPMSは、2007年からアメリカで装着が義務付けられたタイヤ空気圧監視システムです。4本のタイヤの空気圧を常時モニターして、圧力が規定値以下になるとドライバーに警告を発します。
米国で装着が義務化された経緯は、2000年頃にファイヤーストーン社のタイヤがバーストして多数の大事故が発生したことに起因しています。タイヤの構造に問題があったためファイヤーストーン社はリコールをしましたが、空気圧を管理していないドライバーにも責任があるということから、TPMS装着が必要との結論に至ったわけです。
タイヤバーストに至らないまでも、空気圧が低下するとタイヤの変形による劣化の促進や操縦安定性の低下、燃費悪化を招きます。
一般車両のタイヤの空気圧を無作為に調べると、規定値よりも5~10%程度低い車両が30%近くあったと、国交省が発表しています。またタイヤの空気圧が20%下がると、市街地走行で2%、郊外路走行で4%程度、燃費が悪化すると言われています。
TPMSの仕組み
4本のタイヤのエアバルブ内に送信機と一体化した圧力センサーを取り付け、空気圧と温度を直接測定し、その情報を無線で車両側の受信機に送ります。空気圧が所定の閾値を下回った場合に、インパネなどの警告灯の表示によって、異常空気圧であることをドライバーに知らせます。
上記のように、空気圧を測定する「直接式TPMS」が主流ですが、以下のような簡易な「間接式TPMS」を採用している例もあります。
間接式TPMSは空気圧を測定するのではなく、代わりにABS(アンチロックブレーキシステム)で使っている車輪速センサーを利用します。もし、どこかのタイヤの空気圧が低下すると、タイヤの外径が小さくなり、他の3輪との回転差が生じます。この回転差を検出して、異常を警告するシステムです。
現在ほとんどの車には、ABSが装備されているので、制御ソフトの変更だけで簡易に対応でき、低コストなことが間接式の最大のメリットです。BMW、メルセデス・ベンツなどの欧州車の一部は、間接式TPMSを採用していますが、直接式に比べると信頼性が劣るためアメリカの法規には適合できません。
米国や欧州では装着義務化
米国や欧州では、TPMSの装着は義務化されていますので、日本で走る輸入車にはTPMSが装備されています。
日本ではまだ法制化の検討段階ですが、パンクが判別しにくいランフラットタイヤには、装着が義務付けられています。純正でランフラットタイヤを装着しているトヨタ・レクサスや日産・GT-Rには直接式TPMSが装着されています。
TPMSは、当初はタイヤの空気圧低下を検出して安全走行を保証するために開発されました。
最近は、タイヤの空気圧を適正に保つことで燃費が向上し、CO2削減にも貢献することから、燃費向上技術のひとつとして注目されています。
■車のホイールとは
ホイールには、タイヤとともに車体を支えながら駆動や制動、路面からの衝撃などに耐えられる強度と、一方で軽量化とファッション性が求められます。
ファッション性が優先して機能があまり目立たないホイールですが、その機能の重要性について解説していきます。
ホイールの役割と構造
ドライブシャフトの駆動力は、ハブを介してタイヤがはめ込まれているホイールに伝えられます。
ホイールには、車体を支えながら駆動や制動、路上からの衝撃などに耐えられる強度とともに、一方で軽量化も求められます。また機能面だけでなく、その意匠は車のファッション性やドレスアップのキーパーツでもあります。
ホイールは、タイヤを保持するリム、ドライブシャフトに取り付けられているハブとリムを連結するホイールディスクから成ります。
ホイールの構造としては、リムとディスクを一体成形した1ピース、リムとディスクを溶接した2ピース、表側/裏側リムとディスクをボルトで一体化した3ピースがあります。
・1ピース
軽量ながら剛性が高く、製造がシンプルなためコストを抑えることができます。メーカーの純正品は、安価な1ピースが主流です。また剛性が高いので、スポーツホイールに採用されています。
・2ピース
最近のアルミホイールの主流で、デザインやオフセットの自由度が高く、さまざまなバリエーションが楽しめます。
・3ピース
デザインの自由度がもっとも高く、ドレスアップホイールとして人気が高いホイールです。
ホイールの材質
ホイールの材質としては、スチールとアルミニウム(合金)ホイール、マグネシウム(合金)があります。かつては安価なスチールホイールが一般的でしたが、最近は軽量でファッショナブルなアルミホイールが標準的になっています。
アルミの比重はスチールの1/3と軽く、熱伝導率が高く放熱性に優れています。しかも、加工性に優れデザインの自由度が高いため、スチールよりも高価ですが主流となりました。
またマグネシウムホイールは、アルミホイールよりさらに軽量で走行性能や燃費性能に有利です。レース車では主流ですが、高価なため採用は限定されます。
鋳造製法と鍛造製法
アルミホイールの製造法には、鋳造製法と鍛造製法の2種類があります。
鋳造製法は、ホイールの金型に溶かした材料を流し込み、それを固めて成形する製法です。同じ型から作るので生産性が良く、軽量化、コスト面で優れています。
鍛造製法は、型に合わせて材料を叩いて作る製法です。手間がかかる分コストがかかりますが、金属組織が緻密になるため、高度や剛性が高められます。
ホイールバランス
タイヤとホイールは、円周方向の重量配分は必ずしも均一ではなく、例えば空気バルブや駆動系の影響などによって重量配分にムラが発生します。この状態で走行すると特定の走行(回転)条件で共振現象が発生します。共振が起こると、ボディとステアリングに不快な振動を発生させます。
そのため、タイヤ組み付け時にはホイールバランサーによって、タイヤとホイールのバランスをみて、軽い部分のリムにバランスウェイトを貼り付けてバランスを取ります。バランス調整は、ホイール交換時には必須の作業です。
車のドレスアップといえば、まずはホイールの交換であり、機能というよりはファッション性が優先されるのは、昔も今も変わらないようです。
しかし、ホイールはドライブシャフトとタイヤを連結する回転部品なので、寸法精度や重量バランスなどを軽視すると、危険なことを認識しておく必要があります。
(Mr.ソラン)
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