車のインターフェースとは? 車両の情報をドライバーに伝えるさまざまな装置について解説【自動車用語辞典】

■車のインターフェースとは

車に乗り込むと、まずシートの座り心地、視界、インパネの表示を確認して、走行前にはペダルやステアリングの位置とドライビンポジションをセットします。車室内には、ドライバーとのインターフェイスを意識した装備が普及しています。

車室内インタ―フェイスに関わる技術全般について、概説していきます。

最新のシートとステアリング

車のシートに求められるのは、快適性と運転のしやすさの両立、ドライバーと乗員を守る安全性、質感のあるデザインです。

安全運転のためには、正しいドライビングポジションを取ることが重要です。適正な運転姿勢を取ることによって、ドライバーの視線と身体の揺れが抑えられて安全が保たれます。

適正なドライビングポジションにするため、電動化されたさまざまなアジャスター機構が装備されています。

ステアリングホイールは、車の進行方向を制御する操舵部品です。単なる操舵の役目だけでなく、スポーク部にオーディオ系や走行制御系などの各種スイッチが装備され、制御パネルの役目も果たしています。

シートとステアリング
シートとステアリング

アクセルペダルとブレーキペダル

車の加減速は、アクセルペダルとブレーキペダルで行います。アクセルペダルは、踏み込み量に連動したワイヤによってエンジンのスロットルを開閉させて出力を制御します。ブレーキペダルは、踏み込み量に応じてブレーキ油圧を増減させて制動力を制御します。

運転支援技術の普及とともに、アクセルやブレーキなどの制御がペダルとアクチェーター部を機械的に伝達する従来の方式から、電気で伝達するバイワイヤ方式へと置き換わっています。

バイワイヤ化は、制御や設計の自由度が高く、低燃費や低エミッション、安全な車両制御のために有効な手段です。アクセルのバイワイヤ化であるスロットル・バイワイヤは、現在ほとんどの車が採用しています。

スロットルバイワイヤ
スロットルバイワイヤ

HMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)

HMIは、人と機器をつなぐ装置や手段の総称です。

「人が指示を与える手段」としては、各種スイッチ、ステアリングホイール、ペダル、レバーなどがあります。「機械が指示を与える手段」としては、液晶パネルやモニター、メーター、スピーカーなどがあります。

人が機器を操作する、機器側から人に情報を提供するといった双方向で情報をやり取りする手段であり、自動運転やコネクティッド技術を進める上で、その役割は非常に重要です。

従来の視角、聴覚に頼ったHMIだけでなく、液晶ディスプレイ、HUD(ヘッドアップ・ディスプレイ)、音声認識やジェスチャー入力など、いずれも安全性や快適性をさらに向上させる代表的なHMIであり、急速な普及が期待されています。

HUD
HUD

これまで車室や内装と言えば、デザイン性や利便性が重視されていましたが、自動運転やコネクティッド化と連携するためのインターフェイス機能が組み込まれ、大きく変貌しています。

本章では、変貌するシートやステアリング、操作系、計器類など、インテリア全般の技術について、詳細に解説していきます。

■車のシートとは

車のシートには、快適性や安全性、さらにデザイン性も求められます。特にドライバーにとっては、運転しやすく疲れないことが重要で、それが車の安全性に直結します。

乗員の身体をサポートするという重要な役割を担っているシートについて、解説していきます。

シートに求められるもの

車のシートに求められる快適性や安全性、デザイン性を実現するためには、具体的には以下の項目について最適設計する必要があります。

・快適性と運転のしやすさ
適正な座面サイズや表面生地などによって、サポート性能(包まれ感)を向上する。また、振動を吸収し、適正なクッション性などによって疲労を軽減する。

・安全性
シートの剛性や強度、適正なサイズによって、乗員の安全を守る。

・デザイン性
車室内の大部分を占める部品として、意匠や質感を重視したデザインとする。

シートの基本構造

一般的なシートは、シートフレームにシートスプリングを取り付け、その上にパッドを置き、トリムカバーアセンブリを被せた構造です。スプリングの代わりに、パッド厚さを増したフルフォーム構造のシートもあります。

・シートフレーム
シートフレームは、乗員とシート自重を支えるために強度と剛性が必要です。一般的には、鋼板や鋼管、鋼線で構成され、なかには軽量化のために高張力鋼板やアルミ合金などを採用した例があります。

・シートスプリング
シートスプリングは、乗員の体重を支えながら座面を撓ませて乗り心地を向上させます。ピアノ線や鋼線のジグザグスプリング、布や鋼線を組み合わせたサスペンションマットなどが使用されます。

・パッド
パッドは、シートフレームとトリムカバーの中間に配置され、通常は柔軟性のあるウレタンフォームが使われます。乗員の姿勢保持や体圧の分散、振動の抑制などがパッドの役目です。座面や側面部、背面部それぞれで発泡倍率を変えて、部位ごとにウレタンフォームの硬さを調整します。

・トリムカバーアセンブリ
パッドを保護し、表面は乗員の臀部と腰、背中を支えてクッションの役割をします。シート表面生地(表皮材)とワディングウレタン、ワディングカバーを一体化し、シート形状に合うようにカットして、各部材を縫製して繋ぎ合わせます。

シートの基本構造
シートの基本構造

質感が重要なシート表面生地

シートの表面生地は、見た目の高級感や肌触りが重要視されます。一般的には、布地(ファブリック)・本革・合成皮革の3種が使われます。

・布地は、本革や合成皮革に比べると高級感はありませんが、通気性や耐久性が高く低価格なので多用されています。

・本革は、牛皮などを鞣(なめ)して表層に樹脂塗装をしたものが一般的です。高価で高級車シートの代名詞ともいえますが、耐久性が低く手入れが大変です。

・合成皮革は、布に樹脂の被膜を貼り付けて本革の表面に似せたものです。しっとりとして肌触りや通気性が良く、しかも耐久性にも優れています。見た目や肌触りは本革と比べても同等以上の質感があり、代表的なスウェード調合成皮革のアルカンターラは、本革よりも高価格の仕様があります。

欧州車のように長距離走行をしない日本の小型車のシートは、疲れやすいなど機能面で劣っていると言われています。日本車のシートは、高級車は高品質で長距離でも疲れない仕様、小型車は短時間の運転を意識して快適性や乗降性を重視した設計思想で作られています。

共用化すればよいと思いますが、市場や車格などに見合ったシートを装備しないと、ユーザーに受け入れてもらえない部品です。

■ドライビングポジションとは

安全運転のためには、正しい運転姿勢をとることが大切です。適正な運転姿勢をとることによって、操舵や加減速時に車両の姿勢が乱れても、ドライバーの視線と身体の揺れが抑えられて安全が保たれます。

正しいドライビングポジションと、それを実現するシートアジャスター機構について、解説していきます。

正しいドライビングポジション

正しい運転姿勢を保つためには、3つのポイントがあります。

・加減速や操舵時のような車の姿勢が不安定な状況でも、腰回りがふらつくことなく身体を安定させる。

・長時間座り続けても痛くならないように、座面の一部だけに体重の負荷が集中しないように面圧を分散させる。

・上半身をサイドサポートの張りなどを使って安定させることは必要だが、腕は自由に動かせて操舵が容易にできる。

以上を実現するためにシートの役割は重要ですが、ドライバーの身体には個人差があります。それを解決するために、運転席のシートにはアジャスター機構が付けられています。

重要なシートアジャスターの役目

さまざまなアジャスター機構がありますが、通常はシートスライドによるシート前後位置の調整と、リクライニングによるシートバックの傾きの調整の2つの機構が装備されています。

・シートスライド
ペダルを踏み込んだ時に膝が多少曲がる状態で、おしりとシートに隙間ができないように前後方向を調整

・リクライニング
ステアリングを両手で握った時に肘が多少曲がる状態で、背中がシートバックにつくように傾きを調整

・シートリフター
さまざまな体格のドライバーに対応できるように、シート全体の高さを調整

・ランパーサポート
背骨の形状に合わせるために、シートバックの腰にあたる部分の張り出し量を調整

・サイサポート
太ももを支えて疲労を軽減するため、シートクッションの前部を上下に調整

・サイドサポート
コーナリング時でも姿勢が左右に傾かないように、シートバックの側面の張り出しの幅を調整

手動式でなく、電動式が増えています。また、シートポジション状態を記憶するメモリー機能付きのシートがあり、ドライバーが替わってもワンタッチでポジション設定ができます。

シートアジャスター
シートアジャスター

レースカー専用のバケットシート

上半身も下半身も両側からしっかりホールドするシートに、バケットシートがあります。ホールド性を追求したレースカー用のバケットシートは有名ですが、レース専用なので使い勝手や快適性が悪く、一般車には使えません。

スポーツタイプの車では、ホールド性に優れ、日常的にも使えるようにしたバケットシートが採用される場合があります。リクライニング機構を持たないフルバケットシートと、ホールド性をある程度妥協して利便性を高めたリクライニング式のセミバケットタイプの2種があります。

走行中の前後Gや横G発生時にも、身体と視線のブレを抑えられるため、スポーツ走行には不可欠なシートです。

どんなに先進的な安全技術を装備している車でも、適正なドライビングポジションで運転しなければ、せっかくの安全技術の性能が発揮できません。また疲れやすくなり、最悪の場合は腰を痛める場合もあります。

シートアジャスター機能を使って、適正なドライビングポジションで運転することが、安全運転の大前提です。

■ステアリングホイールとは

ステアリングホイールは、日本ではハンドルと呼ばれている車の進行方向を制御する操舵部品です。単なる操舵の役目だけでなく、スポーク部にオーディオ系や走行制御系などの各種スイッチが装備され、制御パネルの役目も果たしています。

最新のステアリングホイールの特徴や機能について、解説していきます。

ステアリングホイールの基本構造

ステアリングホイールは、ドライバーが両手で回転させる円形のリム、ステアリングシャフトと連結している中央のハブ、リムとハブを連結するスポークで構成されます。

ステアリングホイールの回転が、シャフトを通してギヤボックスで減速されながら左右の動きに変換されて、タイヤの向きが変わります。

・レトロな雰囲気を醸し出す木製リムを採用している車もありますが、金属補強した樹脂製リムが主流です。グリップ部には、ウレタンや合成皮革、本革が巻かれています。

・スポーク部には、オーディオやオートクルーズ、安全支援技術などの各種スイッチが取り付けられ、ステアリングから手を離さずに操作できるようになっています。

・ハブには、ホーンとエアバッグモジュールが内蔵されています。

ステアリングホイールの構成
ステアリングホイールの構成

さまざまなステアリングホイール

ステアリングの大きさ(径)については、特に規定はありません。操作しやすく、ドライバーの邪魔にならない程度ということで、乗用車系ではほぼ同じくらいの大きさ(外径37~39cm程度)に設定されています。

ステアリングの径が大きいと、テコの原理で回転トルクは小さくなりますが、手動の操作距離は長くなります。一方、径が小さいと回転トルクは大きくなりますが、操作距離は小さくてすみます。

タイヤ径が大きく車重の重いトラックやバスは、操作トルクを下げるため大径のステアリングを使用し、レーシングカーやスポーツカーは、小さな操作角で車が俊敏に反応するように小径のステアリングを使っています。

スバル車など一部の市販車で、円形でなくD型(Dシェイプ)のステアリングを採用する車が登場しています。

D型のステアリングは、コクピットが狭いF1などのレーシングカーでは、乗降性が容易なため採用されています。ステアリングギヤ比が小さく操作角が小さいので、ステアリング操作で両手を持ち替える必要がないためです。

市販車でD型ステアリングを採用すると、ステアリング操作で両手を持ち替えるので操作に違和感が出ることが予想されます。特にメリットはあるように思えませんが、デザイン性と乗降性の良さでしょうか。

D型ステアリングホイール例
D型ステアリングホイール例

ステアリングホイールのポジション調整

ステアリングのポジションは、ドライビングポジションに関係するので重要です。運転しやすいように適正な位置になるように、通常はポジション調整機構が付いています。

ステアリングの上下方向の調整ができるのがチルト機構、前後方向の調整ができるのがテレスコピック機構です。両方の調整ができるチルト・テレスコピック機構もあります。

多くは手動式ですが、電動タイプの調整機構も登場しています。

ステアリングホイールの位置調整
ステアリングホイールの位置調整

パワステの普及によって操舵操作が楽になったおかげで、ステアリングに多くの操作スイッチが装着できるようになりました。利便性だけでなく、運転中に手を離さずにさまざまな操作ができるようになり、安全性の向上にも貢献しています。

自動運転になったら、ステアリングホイールがなくなると言われていますが、そうなったら最大の楽しみがなくなるので、もう車とは呼べないのではないでしょうか。

■アクセルペダルとブレーキペダルとは

アクセルペダルは、踏み込み量に連動したワイヤで機械的に、あるいは電気的にエンジンのスロットルを開閉させて出力を制御します。ブレーキペダルは、踏み込み量に応じてブレーキ油圧を増減させて制動力を制御します。

車の加減速を制御するアクセルペダルとブレーキペダルについて、解説していきます。

ペダルによる加減速の制御

車の基本は、「走る、曲がる、止まる」です。走るはアクセルペダル、止まるはブレーキペダルを使って、それぞれのペダルの踏み込み量で車の加減速を制御します。

アクセルペダルは、踏み込み量に連動したワイヤによってエンジンのスロットルを開閉させてエンジンの出力を制御します。ただし、ペダルの踏み込み量を電気信号に変化してモーターでスロットルを開閉する「スロットル・バイワイヤ」方式が主流です。

ブレーキペダルは、ペダルの踏み込み量に応じてブレーキ油圧を増減して制動力を制御します。

ペダルの構成と機構

ペダルは、右からアクセルペダル、ブレーキペダル、MTの場合はクラッチペダルと配置されます。ブレーキペダルは、非常時に踏みやすいように最も大きく高い(ドライバーに近い)位置に配置されます。国内外のどの車でもこの配列は同じですが、意外にも保安基準ではペダルの並びについては規定されていません。

ペダルの作動機構は、一般的には吊り下げ式ペダルが使われています。アクセルペダルについては、マツダ車や一部の車ではオルガン式ペダルを採用しています。

・吊り下げ式ペダル
ダッシュボードの足元の上部を支点として、リンク棒に装着されたペダルを足裏の上半分で操作します。

・オルガン式ペダル
文字通りオルガンのようにペダルをフロアに取り付けた方式です。ペダルの下端を支点としてフロアに蝶番で固定され、足裏全体で操作します。

オルガン式ペダルの方が、足裏全体でペダルを操作するため制御性に優れていますが、構造が複雑でコストが高いので吊り下げ式ペダルが主流になっています。

ペダルの構成
ペダルの構成

ペダル踏み間違い対策の左足ブレーキについて

相変わらずアクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違いによる事故が多発して、社会問題になっています。自動車メーカーは、ほとんどの車にAT誤発進抑制制御を装備していますが、効果には限界があります。

ペダルの踏み間違い対策のひとつは、アクセル操作は右足で、ブレーキ操作は左足で行う方法です。法的にはどちらの足でブレーキペダルを踏んでも構いません。

確かに右足と左足を使い分ける方が、右足でペダルを踏み替えるという手間が省けるので踏み間違いが減るように思います。

採用には賛否両論がありますが、個人的には左足ブレーキの方が理にかなっているように思います。

ただ切り替えるためには、右足で踏むことを前提としているブレーキペダルの設計変更や、教習所での指導変更など、多くの基本的な変更が必要です。左足ブレーキと右足ブレーキが共存する切替え過渡期に、混乱が起きるのは必至です。

ドライバーは、ペダル踏力の調整で車のスピードを意のままに制御するという器用なことをやっています。

今後は、ペダルとスロットルおよびブレーキ機構を、機械的でなく電気的に連結する「バイワイヤ」方式が主流となるので、コントローラが巧みに制御して安全運転を支援してくれます。

■バイワイヤとは

運転支援技術の普及とともに、アクセルやブレーキの制御は、ペダルとアクチュエーター部を機械的に伝達する従来の方法から、電気で伝達するバイワイヤ方式へと置き換わりつつあります。

車の加減速、制動力などを制御するバイワイヤについて、解説していきます。

従来のアクセルおよびブレーキ制御

ドライバーは、車の加減速をアクセルペダルの踏み込み量、制動力を、ブレーキペダルの踏み込み量で調整して、車を自在に制御します。

アクセルペダルは、ワイヤでエンジンのスロットルと連結されています。ペダルの踏み込み量に応じてワイヤを介してスロットルが開閉して、エンジンの出力が制御されます。

一方、ブレーキペダルの踏み込み量は、マスターシリンダーでブレーキ油圧に変換されます。ペダルの踏み込み量に応じた油圧の増減によって、ブレーキキャリパーを作動させて制動力を制御します。

バイワイヤ方式

アクセルやブレーキ操作などの入力情報を機械的、物理的に伝達していたものを、電気で伝達する方法がバイワイヤ方式です。

バイワイヤ方式は、操作量を検出するセンサー、センサー信号から適正な作動量を演算しアクチュエーターに指令するECU、電気信号で作動するモーター等のアクチュエーターで構成されます。

バイワイヤ化のメリットは、以下の通りです。

・操作性の向上、安全性やドライバビリティの向上
・制御の自由度が高く、低燃費と低エミッションの両立
・軽量化と省スペース化

バイワイヤの技術

バイワイヤ化は、運転支援技術や自動運転技術に不可欠ですが、一般車にも急速に普及しています。スロットル・バイワイヤとブレーキ・バイワイヤだけでなく、ステア・バイワイヤやシフト・バイワイヤの採用が進んでいます。

・スロットル・バイワイヤ
アクセルペダルの踏み込み量を、センサーで電気信号として検出します。踏み込み量に応じた作動量をECUが演算して、モーターに指令することによって、スロットル開度を調整してエンジン出力を制御します。エンジンのスロットル開度を高精度に制御することによって、燃費と排出ガスを低減できます。さらに、オートクルーズやトラクションコントロールなどの車両制御を実現するためには、スロットルの自動制御が必要なため、現在はほとんどの車がスロットル・バイワイヤを採用しています。

・ブレーキ・バイワイヤ
ブレーキペダルの踏み込み量を、センサーで電気信号として検出します。踏み込み量に応じた作動量をECUが演算して、マスターシリンダーの代わりにモーターが油圧を発生させます。発生した油圧によってブレーキキャリパーが作動して、適正な制動力を制御します。油圧でなく、直接モーターでブレーキキャリパーを制御する電動ブレーキも登場しています。

・その他のバイワイヤ
ステア・バイワイヤは、ステアリングの操作角をセンサーで電気信号として検出して、ECUで操舵量を演算してアクチュエーターによって操舵します。

シフト・バイワイヤは、トランスミッションのシフトポジションを電気信号として検出して、アクチュエーターによって自動的にシフトチェンジします。

バイワイヤ
バイワイヤ

バイワイヤ化は、制御や設計の自由度が高く、低燃費や低エミッション、安全な車両制御のために有効な手段なので、一般車への普及が急速に進んでいます。

運転支援や自動運転の実現のためにバイワイヤ化は不可欠であり、将来、自動運転技術が実現すると車のすべての操作系がバイワイヤ化されるかもしれません。

■HMIとは

HMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)は、人と機器をつなぐ装置や手段の総称です。人が機器を操作する、機器側から人に情報を提供するといった双方向で情報をやり取りする手段であり、自動運転やコネクティッド技術を進める上で、その役割は非常に重要です。

ドライバーとコミュニケーションを図る最新のHMI技術について、解説していきます。

HMIの重要性

「人が指示を与える手段」としては、各種スイッチ、ステアリングホイール、ペダル、レバーなどがあります。「機械が指示を与える手段」としては、液晶パネルやモニター、メーター、スピーカーなどがあります。

これまでは、ドライバーがスイッチやボタンの操作で機器に指示を出し、機器からはモニターや液晶パネル、または音声によって情報を得るのが一般的でした。

運転支援や自動運転技術が進む中、人と車が情報や意思を伝達し合うHMIの重要性が増しています。安全性と快適性、利便性の追求によって交換される情報量が増えるため、情報をタイミングよくドライバーに伝えなければいけません。

例えば、ドライバーの眠気や不注意などをどのように検知するか。また、検知した情報を踏まえながら、危険回避の観点から視角、聴覚、触覚を通してどのような伝えるかに、HMIが大きく関与します。

以下に、最新のHMI技術について紹介します。

視角HMI

従来は、運転に必要なスピードメーターなど、さまざまな情報を集約したコンビネーションメーターが一般的でした。マルチインフォメーションディスプレイが電動車を中心に普及しています。燃費やエネルギーフロー、航続可能距離などの情報の表示を、一般的にはステアリングホイールに設けられたスイッチによって切り替えます。

視角HMIとして注目されているのは、「HUD(ヘッドアップディスプレイ)」です。

HUDは、車速やシフト位置、進行案内などの情報を前方2~3mほど先の虚像としてフロントウインドウ下面に映し出す表示技術です。運転中の視線や焦点調整の移動が少ないことから、認識負荷を軽減して安全性が向上すると注目されています。

HUD(ヘッドアップディスプレイ)
HUD(ヘッドアップディスプレイ)

聴覚HMI

自然言語処理能力を備えた、対話型の音声認識を採用した車が増えています。メディアやナビ、スマートフォン、空調といった多くの機能を音声で操作できます。また、天気や商業施設、イベント情報、駐車場案内など、コネクテッドサービスを音声で利用できます。

音声認識は、まだ十分なレベルに到達しているとは言えません。さらに精度が上がれば、ドライバーと車の間でより楽にコミュニケーションが取れるようになります。

音声認識の基本的な仕組み
音声認識の基本的な仕組み

触覚HMI

広く用いられているタッチパネルは、タッチ箇所を目視する必要があり、運転時に前方への注意が疎かになるという課題があります。カメラや赤外線式近接センサーで手の動きを認識し、タッチの必要がないジェスチャーによる操作も実用化されています。

また、運転支援技術の警報として使われている、触覚に訴える手法があります。

シートやステアリングホイールにアクチュエーターを内蔵して振動させることで、運転者に危険を伝えます。

自動運転で必要なドライバー監視

自動運転を実現するためには、「システムが人の状態を知ること」が重要です。

提案されている運転者監視システムは、近赤外線カメラを用いる手法です。例えば、目の開き具合や頭部の動きなどを読み取り、居眠りしていると判断すると警告を出すシステムがその代表例です。

自動運転とコネクティッド技術の普及のためには、高度なHMIが必要不可欠です。

液晶ディスプレイ、HUD、音声認識やジェスチャー入力など、いずれも安全性や快適性を向上させる代表的なHMIであり、急速な普及が期待されています。

■HUDとは

HUD(ヘッドアップディスプレイ)は、車速やシフト位置、進行案内などの情報を前方2~3mほど先の虚像としてフロントウインドウ下面に映し出す表示技術です。運転中の視線や焦点調整の移動が少ないことから、認識負荷を軽減して安全性が向上すると注目されています。

高級車だけでなく、軽自動車でも普及が進むHUDについて、解説していきます。

HUDの表示原理

HUD(ヘッドアップディスプレイ)は、車の車速やシフト位置、進行案内、警告表示、運転支援機能の作動状況などの情報を、運転者の前方2~3mほど先に浮かんでいるように、虚像としてフロントウインドウ下面に映し出す表示方法です。

ドライバーは、視線を大きく移動させることなく情報を確認し、前方に注意しながら運転に集中できます。情報認識のための負荷が軽減し、安全運転にも貢献することから急速に普及しています。

HUDの光学系装置は、インパネの裏側のスペースに搭載されています。液晶で表示された車速などの情報は、反射ミラーで折り返されて、凹面鏡などの拡大ミラーで拡大されます。拡大された表示がフロントウインドウに反射して、ドライバーは目で見ることができます。

HUD(ヘッドアップディスプレイ)の構成
HUD(ヘッドアップディスプレイ)の構成

HUDのメリット

HUDのメリットは、2つあります。

一つ目は視線を大きく動かさなくて良いこと、二つ目は焦点距離の移動量が小さいことです。

・視線の移動量が少ない
HUDは、ドライバーの視線方向に近いウインドウ下面に情報が表示されるので、情報確認のための視線の移動距離および移動時間が短くなります。顔を動かさなくてもわずかな視線の移動だけで素早く情報が得られ、視線移動の負荷を軽減できます。

・焦点の移動量が少ない
運転中のドライバーは、通常20m以上遠方のどこかに焦点を合わせて運転しています。HUDは、前方2~3m先に情報の表示を浮かび上がらせるので、通常のインパネ内にある表示に対して焦点距離の調整時間が短くてすみます。

課題は、光学系の搭載スペースの確保と低コスト化です。

HUDの光学系装置は、インパネ内部に搭載されます。内部には、エアコンダクトやパワステモーターなど多くの部品があり、搭載スペースは十分ではありません。今後、さらに表示エリアを拡大する、表示場所を増やすためには、本体の小型化とともに車両側のスペースの確保が必要です。

AR(拡張現実感)を適用したHUDの進化

運転支援や自動運転の普及を追い風に、2017年にARを適用したHUDがトヨタ・レクサスLSによって実用化されました。

ARは、経路案内の矢印や人の飛び出しを警告するイラストなどを、車両前方の風景に重ねて表示します。HUDで生成した映像と対象物の位置を重ね合わせて映し出します。

安全性や利便性を向上させる効果が大きいため、ARを組み合わせたHUDが今後急速に広がると予想されます。ARが進化してくると、メーターやカーナビのような、インパネ内にある多くの表示装置が、AR機能付きHUDに取って替わられる可能性があります。

すでに高級車から軽自動車まで採用が進むHUDですが、さらに安全性や利便性を高めたARと組み合わせたHUDが今後普及することが予想されます。HUDにとっては、多くの情報から何を選択し、どういうタイミングで、どこに表示するかが重要です。

またディスプレイの仕方は、車のインテリアイメージに大きく影響するので、機能性だけでなくデザイン性についても十分な検討が必要です。

■メーターと表示方法とは

インパネ(インスツルメントパネル)には、車速を示すスピードメーターやエンジン回転数を示すタコメーター、特定期間の燃費を示す燃費計、燃料の残量を示す燃料量計、走行距離を示すオドメーターなどが搭載されています。

各種メーターとその表示値の算出法について、解説していきます。

いろいろなメーター

インパネには、運転に必要な多くのメーターや警告灯が搭載されています。

通常は、車速のスピードメーター、エンジン回転速度のタコメーター、燃費計、燃料タンクの残量を示す燃料量計、EVやPHEVではバッテリー容量、走行距離を示すオドメーターとトリップメーター、エンジン水温計などです。

スピードメーターやタコメーターは、一時期バーの長さや数値で示すデジタル方式もありましたが、現在は直感的に認識しやすい針で示すアナログ式が主流です。液晶画面でもデジタルでなく、多くは針を表示したアナログ方式になっています。

マルチインフォメーションディスプレイを採用している車が増えています。インパネ内に液晶表示などで、燃費や安全関連、メンテナンス、EVなど電動車ではエネルギーフローなどの情報を切り替えて表示します。運転状況に応じて、自動で切り替わるタイプもあります。

スピードメーター

スピードメーターで表示される車速は、タイヤの回転速度から算出します。タイヤの回転速度が分かれば、車速は次の式で求まります。

車速km/h = 3.1416 x (タイヤ外径m) x (タイヤの回転速度rpm)/60 x 1/1000

タイヤの回転速度は、ABS(アンチロックブレーキシステム)用の磁気センサー(車輪速センサー)で計測します。車輪とともに回転するギヤと磁気センサーを車軸に取り付け、ギヤの回転によって磁気センサーに発生するパルスをカウントすることで回転速度を求めます。

スピードメーターの構成
スピードメーターの構成

タコメーター

タコメーターは、エンジンの回転数を表示します。エンジン回転は、運転に必ずしも必要な情報ではないので、表示されない車の方が多いかもしれません。

エンジン回転数は、エンジンのクランクに取り付けたクランク角センサーで検出します。計測原理は、車輪速センサーと同じです。クランクセンサーの出力は、ECUに入力されて燃料噴射や点火時期など、制御のベースとなる重要な信号です。

燃費

燃費は、ECUの噴射信号を用いて算出します。平均燃費[km/L]は、エンジンECUの燃料噴射信号(燃料を噴射している時間)から求めた噴射量と、車速センサーから求めた走行距離を使って算出されます。

瞬時燃費[km/L]は、短期間(2~3秒)の噴射量と走行距離から算出し、計測結果を順次更新ながらメーターに表示します。

燃料量

通常タンクの燃料量は、通常はバーの長さで表します。燃料タンクに浮かべたフロートの動き(上下移動量)を電気的に検出して、燃料タンクの残量を表わします。

精度が高くないのであくまで目安ですが、走行中に燃欠になると危険なので、重要な表示項目です。

安全サイドで、燃料残量の警告灯が点灯しても5L程度の燃料が残っているのが一般的です。

オドメーターとトリップメーター

オドメーターの表示は、その車が生産されてから今までに走行した総走行距離、トリップメーターは一定期間の走行距離を表示します。

走行距離は、車輪速センサーから求めた車速とタイヤ外径から算出します。

インパネに多くの情報が表示されるようになり、システム側から低燃費運転や安全運転をコーチングしてくれる機能も装備されるようになりました。

誰にも同じ量の情報量が与えられますが、どれだけ有効に活用するかがポイントです。

■スピードメーターの表示誤差とは

ドライバーが運転中に常に意識しているのは、スピードメーターの車速ではないでしょうか。もし、スピードメーターの表示値と実際の車速に乖離があると、法定速度が守れないリスクが発生するだけでなく、非常に危険です。

スピードメーターの表示に関する規格と誤差要因について、解説していきます。

スピードメーターの表示値

スピードメーターで表示される車速は、タイヤの回転速度から算出します。タイヤの回転速度が分かれば、車速は次の式で求まります。

車速km/h = 3.1416 x (タイヤ外径m) x (タイヤの回転速度rpm)/60 x 1/1000

タイヤの回転速度は、ABS(アンチロックブレーキシステム)用の磁気センサー(車輪速センサー)で計測します。車輪とともに回転するギヤと磁気センサーを車軸に取り付け、ギヤの回転によって磁気センサーに発生するパルスをカウントすることで回転速度を求めます。

スピードメーターの構成
スピードメーターの構成

なぜ誤差が発生するのか

センサー自体は車速で1km/h以内の精度があるので、誤差の要因となるのは主としてタイヤ外周です。

例えば、スピードメーターで40km/hで走行していても、空気圧不足やタイヤの摩耗で外周が1%減ると、実際の車速は39.6km/hに低下します。これは、スピードメーターが1%ほど実際の車速より高めに表示することを意味します。空気圧不足や摩耗によってタイヤ径が10%も変化することはないと思いますので、これによる誤差は大きなものではありません。

しかし、減速比の異なるデフや、タイヤサイズの異なるタイヤに交換すると、スピードメーターの表示値と実際の車速との乖離は大きくなるので注意が必要です。

スピードメーターの表示に関する規定

スピードメーターの表示値と実際の車速に対する誤差範囲については、道路運送車両の保安基準の中で以下で規定されています。

10(V1-6)/11 ≦ V2 ≦ (100/94)V1

V1:スピードメーターの表示速度
V2:実際の車速

この定義によると、スピードメーター60km/hの許容誤差範囲は、49.1km/h~63.8km/hです。

この規定のポイントは、実際の車速より低めの表示の誤差については厳しく、逆に高めの表示の誤差については甘い規定になっていることです。

言い換えると、スピードメーターは実際の車速よりやや高めに表示することを推奨しています。この理由は、何らかの要因で誤差が発生して低めに表示すると、次のような問題が発生するからです。

・ドライバーの認識以上に実際の車速が出ていると、判断ミスによる交通事故につながる。

・スピード違反で警察に捕まった場合、メーターの表示値にしたがって法定速度を守って運転していたと主張するドライバーと、メーカー間でトラブルの原因になる可能性がある。

実際に多くの車を調査すると、スピードメーターは実際の車速より高めに表示することはあっても、低めに表示することはないようです。

走行中の車速調整は安全運転の基本なので、スピードメーターの表示値の精度は重要です。

ユーザーがサイズの異なるタイヤを装着しない、タイヤの空気圧や摩耗の管理を確実に行うことが保証できれば、実際の車速とスピードメーター表示値の誤差はほぼ解消されますが、そういう訳にもいかないのが現実です。

(Mr.ソラン)

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