■レース用パーツを組んだだけなのに実戦タイムを記録したGRヤリス
2月29日に富士スピードウェイで開催されたスーパー耐久公式テスト。2020年のスーパー耐久年間エントリーの全車とは言わないまでも多くのマシンが参加しての今年初めてのテスト走行で、ROOKIE RACINGのGRヤリスもテスト走行に参加していました。
GRヤリスの参戦予定となるST-2クラスは、ライバルがスバルWRX STIに三菱ランサーEvo Xとマツダ アクセラディーゼル。アクセラを除けばカタログスペックだけを見ても300馬力オーバーという強豪ぞろいのこのクラスで、最新スペックとはいえ272馬力のGRヤリスがどの程度の戦闘力を持つのかが注目されていました。
午前中1回、午後2回、夜間2回の計5回の走行枠の中でROOKIE RACINGのGRヤリスが出したベストタイムは、なんと1分54秒688! ランサーEvo.Xと同等のタイムを叩き出したのです。
レースに出るのだからそれぐらい肉迫していてもおかしくないだろうと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、驚愕すべきポイントはこのGRヤリス、ただレース用のパーツを組み込んだだけというところ。
シェイクダウンテストで走行できることを確認したまま、という状態でこの富士のテストに持ち込まれたのです。写真をご覧いただければわかると思いますが、東京オートサロン2020で発表されたままのボディで追加されたエアロ関連は何もついていないのです。
室内を見てもレースマシンというよりはテスト車両という雰囲気の配線むき出し状態。電装系のセットやデーターの取りやすさを優先しての配線となっており、このままの室内でレースに出るものではない、とのこと。
つまりレーシングカーとしては作り始めたばかりという状態なのです。
エンジンルームに至っては緩み止めなどのテーピングのみで全く手のついていない状態です。
サスペンションはレース仕様にはなっているようですが、車高自体はノーマルと大差ない様子。ブレーキキャリパーとローターは、現状ではどうやら市販車のものがそのままついているようです。
そんな市販とほぼ変わらないようなGRヤリスが熟成を重ねたランサーEvo.Xと同等、クラストップのスバルWRX STIからも0.7秒ほどのタイム差しかないということに驚きを感じます。
夜間のナイトセッションテストも行われたスーパー耐久富士公式テストですが、その中でGRヤリスのフロントブレーキが赤く焼けているのがよくわかります。
これは特に不具合があるわけではなく、市販車のノーマルブレーキでサーキットを全開走行するとたいていのブレーキローターはこれぐらい赤く焼けてきます。
実際にドライブした河野駿佑選手にお話をうかがうと「今日は4周ほどしか乗っていませんが、いや本当に速いですよ。シェイクダウンテストの次がこの富士での走行なのでほぼ何もしていない状態です。スバルや三菱に比べてストレートは10km/h以上遅いですが、軽くてコンパクトなので速度差以上にコーナーで詰めていけるクルマです」と好印象。
現状は最低地上高が高くてロールが大きいように感じますが?とうかがってみると「乗ってる自分からすればロールの大きさは気になりませんが、そのあたりはどんどん改良してくると思います」
車高も高いままのこのGRヤリス、開幕戦までどこまで熟成してくるのでしょうか。大きな伸びしろを感じるROOKIE RACINGのGRヤリス参戦で注目されるピレリスーパー耐久シリーズ2020。今からチェックしておきたいカテゴリーのレースです。
(写真・文:松永和浩)
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